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天使なんて柄じゃない
表の街並みは普段よりも騒がしい。ありとあらゆる場所に飾付けられた数多の滑稽な顔をしたオレンジの南瓜。配られる甘ったるい極彩色の菓子類。響くトリック・オア・トリート、ハッピーハロウィーンといった掛け声。そして、怪物に仮装した老若男女が眼前を通り過ぎていく。
そう、今日はハロウィン。秋が終わり、冬の訪れと共にやって来る死者達を迎え、オマケに寄ってくる害なる悪霊を脅かす為に仮装をする。そんな祭り。今では
何も変わらない。これが日常
川沿いの朽ち果てた小屋の中に影が二つ。
一つは乱雑に散らばったボロボロの椅子だったものに足を組んで座り、天井の穴を仰ぎ見る。もう一つは大判の本を抱え、床にペタリと座り込んでいる。
「んー暇。つーかよぉ、こんな風通しの素敵な場所じゃなくてさぁ、も少し先のさ、要塞乗っ取って魔王ごっこしちゃぁ駄目だったのかなぁ。なぁ?」
悪態を付きながら座り込む影の背を足で小突く。突然の衝撃に耐えられなかったのか小突か
控え目な花言葉通りに
飾り気のない家具が最低限置かれた整然とした部屋。新居同然の部屋に唯一生活感があるとしたら何度も読み返されあちこち擦れた古書が隙間なく収納された本棚と丁寧で読みやすい愛らしい字で書かれた薬の調合方法がびっしりとメモされたよれよれの分厚いノートとインクが半分しかないインク瓶と使い込まれた羽ペンが置かれたビューロ位だ。
主がいた形跡を眺めながら部屋を歩く癖のある黒髪で右目を覆った黄色の瞳の黒スーツの黒手
サイコで最高に悪い子
朽ちたビル群が墓碑の様に立つ埃っぽい廃墟の街の一角。殆ど建物として機能していないコンクリートの欠けた、部屋だったであろう無機質な場所に二つ影が見える。
一つは大柄な男の影。もう一つは小さな影。鍛えぬかれた腹部に股がる小さな影は男の口に何かを突っ込んでいるようだ。
「そんな顔してもダメだよ。僕はお兄さんを殺さなきゃいけないの。僕と初めて会った時は大口開けて大きな声で笑ってくれたじゃない。ね?笑って?
ログ:ホムンクルスと瞳
「ロッチェ様、一つお聞きして良いですか? 」
黒と赤と青の液体がうねり
絶えずマーブル柄を作り出している
毒々しい色合いのフラスコ内から
少女と思われる声が聞こえる。
ロッチェと呼ばれた存在は
膝に置いて読んでいた大判の分厚い本を閉じ
包帯の巻かれた醜い手で
そのフラスコを持ち上げ、ゆっくりと揺らすと
徐々に中身が透き通った青色の液体に変化し
中央に浮かぶ
身体中に水色の幾何学模様が刻まれた
体長
雪の名を冠する少女へ
薄明が射す白銀の雪原に
何者かが居たと主張してくる靴跡が続いている。
その靴跡の主は積もりに積もった新雪よりも
真っ白でさらさらとした美しい髪を靡かせ
景観の白をより強調する
漆黒のゴスロリに身を包んだ
水色の瞳の端正な顔立ちの少女だった。
少女は凍風に怯む事なく、毅然とした姿勢で歩いている。
広大で風が雪を舞わせる音と少女の背で存在感を示す剣がカタカタと揺れる音しかしない
雪原の中央に辿り着くと
ログ:純粋さで愛して
深い深い森の簡素な館のリビングの右隅で
お気に入りの年期の入った木の丸椅子に座りながら
辞書ほどの厚さのある本を太腿の上で開き
ページをパラパラと捲って
確認していると
左から人の気配を感じる。いつの間にいたのだろうか。
その気配は明るい声で話し掛けてくる。
「ねぇ。それ何ネ。読んでて面白いネ?ろぐ?だったっけ。私未だによく分かってないネ。」
顔を動かしその声の主を確認する。
黒髪のシニヨンに水色