創作主のロッチェ

創作主として何か書いていきます

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最近の記事

天使なんて柄じゃない

表の街並みは普段よりも騒がしい。ありとあらゆる場所に飾付けられた数多の滑稽な顔をしたオレンジの南瓜。配られる甘ったるい極彩色の菓子類。響くトリック・オア・トリート、ハッピーハロウィーンといった掛け声。そして、怪物に仮装した老若男女が眼前を通り過ぎていく。 そう、今日はハロウィン。秋が終わり、冬の訪れと共にやって来る死者達を迎え、オマケに寄ってくる害なる悪霊を脅かす為に仮装をする。そんな祭り。今では宗教的な意味など薄れたドンチャン騒ぎの仮装大会にしか過ぎないが嫌いではない。かく

    • 高貴なるお方の日常

      大理石の床の冷たさと騒々しい卑下た笑い声で目を覚ます。ここはどこ?私は一体…。 立ち上がろうとするが両足首と両手首が鉄枷で拘束され、身動きが出来ない事を知る。 何…これ。 ズキリと痛む頭を押さえながら辺りを確認する。 石造りの吹き抜けの真っ赤な絨毯がひかれた大食堂。 縦長の豪勢なテーブルに置かれているのは食べ物ではなくほぼ裸の人間達。 異様な光景に思わず声が漏れそうになるが強く唇を噛んで堪える。 訳が分からない…。私は満月が綺麗な夜道を散歩していて…。頭が脈打ち、痛む。 触っ

      • 幻影との日常

        高価なカウチに全体重を掛け、どっしりと寝転がる化粧の濃い女。首にファーを巻き、仕立ての良いシルクのワインレッドのドレスを着ている。ピカピカの硝子のローテーブルには由緒ある銘柄のワインと高級チーズ。その目の前には異様な魔方陣と瓶詰めの虫。カタカタと瓶が揺れたかと思うと黒い霧が魔方陣から吹き出し、間接照明だけで照らされた薄暗い部屋を闇に染める。女は異常な光景に怯える所か待ちかねていたかの様に手を叩く。霧が徐々に小さな人影に変わっていき、それは愛らしい声を発する。 「幻影の悪魔、契

        • 何も変わらない。これが日常

          川沿いの朽ち果てた小屋の中に影が二つ。 一つは乱雑に散らばったボロボロの椅子だったものに足を組んで座り、天井の穴を仰ぎ見る。もう一つは大判の本を抱え、床にペタリと座り込んでいる。 「んー暇。つーかよぉ、こんな風通しの素敵な場所じゃなくてさぁ、も少し先のさ、要塞乗っ取って魔王ごっこしちゃぁ駄目だったのかなぁ。なぁ?」 悪態を付きながら座り込む影の背を足で小突く。突然の衝撃に耐えられなかったのか小突かれた影は大きくのけぞり、瓦礫を巻き込みながら派手な音を立てて床に突っ伏す。 「ク

        天使なんて柄じゃない

          控え目な花言葉通りに

          飾り気のない家具が最低限置かれた整然とした部屋。新居同然の部屋に唯一生活感があるとしたら何度も読み返されあちこち擦れた古書が隙間なく収納された本棚と丁寧で読みやすい愛らしい字で書かれた薬の調合方法がびっしりとメモされたよれよれの分厚いノートとインクが半分しかないインク瓶と使い込まれた羽ペンが置かれたビューロ位だ。 主がいた形跡を眺めながら部屋を歩く癖のある黒髪で右目を覆った黄色の瞳の黒スーツの黒手袋の細身の男。 皺なく几帳面にベッドメイキングされたベッドにそっと触れ、温もりの

          控え目な花言葉通りに

          サイコで最高に悪い子

          朽ちたビル群が墓碑の様に立つ埃っぽい廃墟の街の一角。殆ど建物として機能していないコンクリートの欠けた、部屋だったであろう無機質な場所に二つ影が見える。 一つは大柄な男の影。もう一つは小さな影。鍛えぬかれた腹部に股がる小さな影は男の口に何かを突っ込んでいるようだ。 「そんな顔してもダメだよ。僕はお兄さんを殺さなきゃいけないの。僕と初めて会った時は大口開けて大きな声で笑ってくれたじゃない。ね?笑って?怖くないよ。脳天を一発で撃ち抜けば痛くないの。だから、安心してよ。見せたでしょ?

          サイコで最高に悪い子

          月と鴉と白い雪

          窓から一部見える月が仄明るくする明かりの消えた一室。ぐちゃ、ぐちゃ。不快な咀嚼音が聞こえ、部屋には鉄の香りが充満する。 夢中になって何かを貪るそれは ノック音が聞こえると動きを止める。 「入るぞ。ウェサ。」 長い銀髪を靡かせ、背負った紅の剣を揺らし、黒のゴスロリのロングスカートをはためかせ部屋に入る整った顔立ちの少女。 姿を現した月気が眼前の凄惨な光景を照らして見せる。 数多の目玉が付いた黒いスライムが小柄な 栗毛色の髪の少女の下半身にのし掛かり 臓物を千切って己の体内に取り

          体を蝕まれようとも

          ―助けてください!うちの子をうちの子を! ―金ならやる!!私の妻の病を治してくれ!! ―魔女様!!魔女様!!お助けを!! 城下町を見渡せる高き塔の中。 仕立ての良いダークブラウンの木の家具が 円形の部屋に合わせて整然と並ぶ。 落ち着きのある部屋の中央に置かれた 真っ白なシルクの天蓋付きベットに腰掛ける小柄な黒ローブは 栗毛色のセミロングの髪を丁寧に編み込み 少々乱れていた体裁を整える。 音もなくベットの隙間から 黒く柔らかな弾力のある体を くねらせ這い出てきた眼球が数多に付

          体を蝕まれようとも

          笑顔と真顔

          禍々しい橙色の空に 鮮血の様な赤をした砂の大地 辺りに生い茂る巨大な棘だらけの樹木 人間の住む世界とは程遠いその地を 背筋を伸ばし、恐怖を顔に出すまいと 顔を真っ直ぐに向け、堂々と歩く 左目を癖のある黒髪で覆った黄色の瞳をした細身のスーツの男。 木の上からその男を見下す 真っ黒でボロボロのフードを纏った 年齢も性別も分からないナニか達が声を上げる。 ―醜い癖に上っ面を取り繕ってる。 ―どれだけ取り繕っても醜さは隠せないよ。 ―醜悪な悪魔!醜悪な悪魔! ―人間に現を抜かす欠陥品

          ログ:ホムンクルスと瞳

          「ロッチェ様、一つお聞きして良いですか? 」 黒と赤と青の液体がうねり 絶えずマーブル柄を作り出している 毒々しい色合いのフラスコ内から 少女と思われる声が聞こえる。 ロッチェと呼ばれた存在は 膝に置いて読んでいた大判の分厚い本を閉じ 包帯の巻かれた醜い手で そのフラスコを持ち上げ、ゆっくりと揺らすと 徐々に中身が透き通った青色の液体に変化し 中央に浮かぶ 身体中に水色の幾何学模様が刻まれた 体長十センチ程の人間の形をした胎児の様に 膝を抱えて丸まっていた声の主が全身を伸ばす

          ログ:ホムンクルスと瞳

          雪の名を冠する少女へ

          薄明が射す白銀の雪原に 何者かが居たと主張してくる靴跡が続いている。 その靴跡の主は積もりに積もった新雪よりも 真っ白でさらさらとした美しい髪を靡かせ 景観の白をより強調する 漆黒のゴスロリに身を包んだ 水色の瞳の端正な顔立ちの少女だった。 少女は凍風に怯む事なく、毅然とした姿勢で歩いている。 広大で風が雪を舞わせる音と少女の背で存在感を示す剣がカタカタと揺れる音しかしない 雪原の中央に辿り着くと 少女は背負っていた不相応な紅の剣を音もなく引き抜き 地面に突き立てる。 剣の禍

          雪の名を冠する少女へ

          麝香豌豆と悪魔

          「お休みなさいませ、お客様。」 黄緑のセミロングの髪に アメジストの様な瞳の丸眼鏡の 顔の半分が灰色の肌の縫い目が痛々しい 褐色肌の宿屋の主人はランタンを持ち 全ての客人に就寝の挨拶を済ますと 自分の部屋へと入り、天窓を開け 木できた屋根の上に上がり 星を眺める様に作ったデッキスペースに ランタンと帳簿を置き 小さく鼻唄を歌いながら、星を眺めつつ 今日の売り上げを確認している。 「ハミュイング。いや、ハミュ。おっと主。この頃冷えるね。風邪を引かれては困るからさ。毛布を持ってき

          麝香豌豆と悪魔

          奇術を使うのは誰?

          とある街の緑生い茂る憩いの公園前で ベージュの長い髪をポニーテールにした ブーゲンビリア色の瞳をした 白いスーツの優男がスイートピーをポンッという 軽快な音を立てて掌から取り出す。 それを見ていた観客にスイートピーを 優しげな笑みを浮かべて渡して回る。 彼は見目麗しい見た目をしており 若い女性達が黄色い声をあげている。 「キザだねぇ。秀麗の奴は。」 秀麗と呼んだ男の姿をジト目で眺める 左目を癖っ毛のある黒髪で覆った黄色の瞳をした 黒いスーツの黒手袋の男は ピンクのエプロンを身

          奇術を使うのは誰?

          ログ:純粋さで愛して

          深い深い森の簡素な館のリビングの右隅で お気に入りの年期の入った木の丸椅子に座りながら 辞書ほどの厚さのある本を太腿の上で開き ページをパラパラと捲って 確認していると 左から人の気配を感じる。いつの間にいたのだろうか。 その気配は明るい声で話し掛けてくる。 「ねぇ。それ何ネ。読んでて面白いネ?ろぐ?だったっけ。私未だによく分かってないネ。」 顔を動かしその声の主を確認する。 黒髪のシニヨンに水色のアオザイを身に纏った 紺色の生の輝きに満ちた瞳をしたチャイナ少女。 チャイさん

          ログ:純粋さで愛して

          賢知と強剛

          爽やかな小鳥の鳴く早朝を迎えたバー。 外と違いそこは荒れに荒れ 割れた酒瓶やグラス、照明が散らばり そこそこ仕立ての良さそうなソファーは ズタズタに切り刻まれ 壁には弾痕と刀痕が残り 戦闘があった事を示唆している。 乱雑に集められたソファーに大剣が突き刺さり その側で深紫色の癖っ気のある長髪に 右目を薔薇の眼帯で覆った褐色肌の 紫のゴスロリの美女が だらしなく鼾をかいて酒瓶を抱き眠っていた。 すると扉が開かれ ココア色の髪にセミショートの左目を無骨な眼帯で覆った筋肉質で大柄な

          都市の残滓にて

          暗雲が空を覆い 凍てついた風が砂を巻き上げ 乾燥した空気を埃っぽくする。 瓦礫だらけの都市の残滓を生気のない 琥珀色の瞳で眺めながら歩く。 「寒くないか?」 左腕に纏わり付いた彼 黒いスライムが数多の目で私を見つめ 心配そうに優しい声を掛けてくる。 醜悪な悪魔、彼はそう呼ばれているが 私は己こそが醜いと認識している故に その名で呼ぶ事はない。 自身の細く小さい手で彼を撫でながら 不器用に口角を上げ笑って見せる。 寒さは感じていない。 その筆舌しがたい表情を見て 彼は深く溜息を

          都市の残滓にて