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小説

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超短編小説。短編小説。漢字一字シリーズなど。
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#小説

休日

休日

 休日まで、他人の視線 同性、異性の を意識して服やメイクを選んでいる自分だと気が付き、いやだなと思った。
 着たい服を着る。メイクもやりたいように好きにやる。インスピレーションを大事にしたい。変わっていることがいいとは思っていない。自分の心のままに自由に楽しくしたいだけ。

 鏡に映った自分は、圭の好みを意識している服、メイク、髪型。似合っていない。何ていうか、誰だかわからない。私じゃないみたい

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命日

命日

 今までとても幸せだったし運が良かったから、これから先、何か不幸や不運なことが起こるのじゃないかという気がしていました。だから、自分が地獄に落ちたようなつらい目にあった時、やっぱり来たか…と思ったのです。辛くて泣きながらも、冷静な自分もいたのです。

 今は涙も枯れ果て、自分は死んでいるような感じで、痛みや空腹とか何も感じません。眠りから自然に目が覚めてぼんやりと思います、まだ生きているんだな、と

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何でもない日。みんなの12月某日④さようなら2023

何でもない日。みんなの12月某日④さようなら2023

 僕はクミの勤務先の最寄り駅で待っている。十二月の寒い寒い夜。クミは僕の姿を見つけるなり顔が曇った。マスクをしていても、わかる。

「こんな遅くまでお仕事大変だね。お疲れさま」

「いいかげんにして。警察から注意、警告を受けたでしょ」

 クミは低い声で言い、僕を睨みつける。

「引っ越したの?あのマンションから」

 クミは答えない。

「もう一度だけ話がしたい。最後だから。お願いします。」僕は

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何でもない日。みんなの12月某日③

何でもない日。みんなの12月某日③

二年前の十二月、夫は、妻(私)と自分の母親と犬を残して突然消えた。私達は三人と犬で穏やかに幸せに暮らしていた、はず。そう思っていたのは私だけだったのだろうか…。

 私と義母は仲がいいし、犬は私達三人の癒し。ミックス犬のミロは夫と私が仕事でいない間、義母と仲良くお留守番。義母はミロがいるから淋しくないそうだ。ミロの散歩は平日は私、休日は夫と二人で。一緒にいる時間が一番少ないのに、ミロは夫に一番懐

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何でもない日。みんなの12月某日②

何でもない日。みんなの12月某日②

 あの人は、「奥さんからお小遣いを3万円しかもらえないんだよ〜」と幸せそうに言う。よくよく聞けば、申告すればいくらでももらえるそうだ。

 「ディズニーランドに家族で行って子供を長時間抱っこして歩いて筋肉痛になっちゃって」、とか笑顔で話す。そんな話は、需要がないから。

 誰かが元気がなかったり、失敗して落ち込んでいたら、話を聞いてあげたり、励ましたり。人の気持ちに敏感なのだろう。皆に気づかいをす

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ぽんこつな僕は②

ぽんこつな僕は②

 僕はいっぺんにたくさんのことが出来ない。気がかりなことや大事なことがあるとそれで頭がいっぱいになってしまいそれ以外のことを忘れたり、出来なくなってしまう。

 僕は言われたことそのままを受け取る。言葉の裏に隠された意図や遠まわしの嫌味に気が付かない。

 これらは年齢を重ねるにつれ、わかってきたことだった。
 自分の出来ること、出来ないこと、苦手なこと、楽しくないが辛くもなく続けられることは何か

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ぽんこつな僕は①

ぽんこつな僕は①

 僕は時間の逆算が出来ない。出来るのだが、結果は出来ないことになる。電車に乗る時間はもちろん事前に調べている。調べた時間より早く乗り早く着きすぎた為どこかで時間をつぶしていてぼ〜っとしていて結局ギリギリになる。
 前日に準備が出来ない。前夜に準備をしていても家を出た後、忘れ物に気づいて取りに戻ったり、探し物をしたりと、結局ギリギリになる。

 仕事はミスをしないようにとてもとても緊張して気を張って

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告白

告白

 「神さまはわたくしのことをお赦し下さるのでしょうか」

 「あなたは罪をおかしたのですか?」

 わたくしが通っている教会の神父さまは神父らしくいつも穏やかで落ち着いていて安心感を与えてくださいます。かなりご高齢の神父さまのお顔はたくさんの皺があり、顔のパーツが垂れ下がっていて、特にまぶたが瞳を少し隠しているのでこちらのことがちゃんと見えているのか不安ですが。
いつも同じ表情なので人形のようにも

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破 

破 

 鏡に映った自分の顔に驚いた。鏡を久しぶりに見た。蛍光灯に照らされた顔は老婆にみえる。肌はくすみ、ごわごわして、きたならしい。これは、本当に私なんだろうか。記憶にある私とは別人、、あれから何ヶ月たったのか何年たったのか、まさか何十年たったのか。今はなんねんのなんがつなのだろうか。私は22歳だったのに。
 ぼんやりした頭で、夜の公園のトイレからでて、歩く。目についたベンチに座る。汚れた足をみる。素足

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前世の記憶

前世の記憶

何度か、同じ夢を見る。    とても温かい部屋でついうとうとまどろんでしまいそうになる。 リビングルーム?私は部屋全体を見渡せる。テーブルも椅子も壁にかかる絵画も観葉植物も。よりくっきりとわかるようになってきた。木の止まり木に脚を置いている感覚。置くというかつかまっている。木の感触まで、はっきりと感じる。 そしてなんとも優しい声で私に話しかけてくる人。女の人の声。心がほんわかしてくるの。温かさも感

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