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独書思想史

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僕の読んだ本のメモと一部にイシューを見つけ出し答えを求めようとすることを試みるマガジンです.
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#日本

2024年のマエストロに思うこと

2024年のマエストロに思うこと

「年老いた者が賢いとは限らず、
年長者が正しいことを悟るとは限らない。」
『旧約聖書ヨブ記』

旧約聖書の一部として編纂されたある男の人生日記.

神がある男の信仰心を試すために試練を課す物語なのだが、その課題は男を苦難の道に導き、人の死や自分の不幸を味わう事になる.そんな男の苦難の物語の一説である.

僕はこの文章を見て勝手に今の日本と重ね合わせてしまった.

接客が気に食わないと文句をいう老人

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『ポピュリズムとは何か』から見える日本の危機感

『ポピュリズムとは何か』から見える日本の危機感

水島治郎著『ポピュリズとは何か』から見える現代のポピュリズム的動向について少し考えてみたい.近年、ポピュリズムの概念が普遍的な理解として広まっている.しかしポピュリズムの認識はいずれも「悪」や「扇動」「独裁」といったデメリットの部分の認識が強いと感じる.

最近急激に支持層を増やしていった「れいわ新選組」や「NHK党」は正にポピュリズム政党に当てはまる.さらに遡っていくと元大阪市長の橋下徹氏が創設

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『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は若者の努力不足なのか

『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は若者の努力不足なのか

コンサルティング会社代表の城繁幸氏による著書の中で企業の人事課との対話がある.
その時の対話相手は「彼らはわがままで、我々の世代よりも忍耐力が劣っている」と述べられている文がある.私はこの文章に納得ができる反面、些か疑問に思えた.

この本が書かれたのは2006年でこの時代の若者は現在では40歳、50歳くらいになっている.

この2006年当時の若者から今の若者を俯瞰して見てみると精神疾患(ADH

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丸山眞男の日本思想『思想のあり方について』は現代の今と変わったのか

丸山眞男の日本思想『思想のあり方について』は現代の今と変わったのか

1961年に岩波文庫から刊行された丸山眞男氏の『日本思想』は日本政治思想史の中でも特に注目される考え方で『思想のあり方について』はⅢ項より述べられている.

ここで注目なのが日本の学問を「タコ壺」と呼びヨーロッパの学問を「ささら」と評している点である.一見なんら関係のなさそうな名詞だが構造に着目してみると日本の学問の問題点が明るみになってくる.

まずタコ壺というのはタコが敵から身を隠すために狭い

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