マガジンのカバー画像

RIPPLE〔詩〕

133
運営しているクリエイター

#エッセイ

【詩】次元キャンバス

【詩】次元キャンバス

 「次元キャンバス」

 わた菓子を連ねたような林だ

 毎朝 差し込まれるわずかな時間

 視界の水平120°に手を広げ

 意識と向き合う 静かな林だ

 わたしはその奥行きを未だ知らず

 ましてや 時の奥行きまで知るすべもなく

 それは遠いキャンバスに描かれた

 小さな樹海の油絵に過ぎないのか

 ふと 林の手前で

 青田に隠れて青鷺のこうべが揺れた

 林を見つめる後ろ姿は 心細そ

もっとみる

秋に洗われた風が
身体を突き抜けていった
去った湿度をまた追いかけるのだろうか

行きつ戻りつの荒野に立ち尽くし
耳を澄まして
君の故郷を思い浮かべる

あてもないけれど
足を踏み出したその方向には
一秒先の風が待っている

君に抱かれに行く

地下の方舟〔詩〕

地下の方舟〔詩〕

誰も彼もが喋りすぎて、夜が来るのが遅くなった。夜が来るまで喧しくなった。それは今日という日に今日を置いて行けなくなったことだ。疲れなくては眠れないなんて…… 〔詩に寄せて〕



知らぬ恋

知らぬ恋

恋をするたび思い知る
恋を知らなかったということに
恋というものがもし
身の内に 湧き出す泉でも
心の内に 膨れる煙でもなく
誰かと誰かの間に
とつぜん生まれる
色も形も違う 宝石 だとしたら
目の捉えない
手で掴めない
 輝き が
あるところに留まらず
あらゆるところに満ちてゆくのを
止めることができず
ただ口を閉ざすだけ

短詩

短詩

心ゆらゆら瞳も揺れる
鏡を見ればまた取り繕う
誰かが言った「私はいない」

信じられること信じること
どんな本にも書いていない
誰の口からも出ない言の葉

ーーそれは
誰かの涙の底に宿る詩
誰かの瞳に火を灯した詩
言葉であることを忘れた詩

四行詩 14.

四行詩 14.

  蜜も涙も溢れて漏れて

  小さき器を恨めしく見ていた

  月には目もくれなかった長夜

  明ける頃には 海の一部でいたかったのに
#詩 #短詩 #四行詩 #ポエム #エッセイ

四行詩 13.

四行詩 13.

朝が黄色い涙落とした

夕べは青く鳴いていた

移ろう色こそ恋と呼ぶなら

望むのは 永遠でなく あと1分
#詩 #短詩 #四行詩 #エッセイ #小説 #ポエム #恋

とある塔の頂で

とある塔の頂で

 遠く隔たっているようで、すぐ辿り着ける国の、離れているようで、傍にある塔の話。

 聞こえるか、摩擦で上げる雄々しい叫びが。見えるか、対比が示す猛々しい建造が。そうだ。上へ、上へ、上へと積み上げてきた塔だ。烈しさゆえに、物々しくも濃霧に隠された、輪郭と鋭角の象徴だ。

 こんな伝説がある。塔の最も高いところに剣を突き立てた瞬間のこと。稲妻が龍の如く天へと昇り、分厚い暗雲をつんざく、と。霧が晴

もっとみる
とある泉のほとりで

とある泉のほとりで

 遠く隔たっているようで、すぐ辿り着ける国の、離れているようで、傍にある泉の話。

 立ち込める霧は視界の全ては遮らない。霧は、泉のまわりにある原生林や山々や、その輪郭と色合いをうまく柔和させている。目の前の光景をむしろ美しく、ただ美しく見せ、旅人らを妖しげに誘っていた。
 霧と凪は仲良くしていた。ここでは晴れやかな陽気よりも、閑寂とした空気の方が似合うみたいだ。快活な太陽が照らせば、すぐさま光が

もっとみる
四行詩 12.

四行詩 12.

衣かへして抱きしめたのは

薄い紅のまま残った心

退く紅は秋の空色

今宵、別の色恋へと向かう
#詩 #短詩 #四行詩 #ポエム #エッセイ

ソネット 1.

ソネット 1.

距離は旅になり
時間は紙になる
会いたい人がひとりいるなら
伝えたいことがひとつあるなら

淡々と過ぎる日常の挿話に
そんな紀行文があるといい
思い出のひとひらでも持ち帰れたら
きっとまた旅をしたくなる

いま揺られながら夢を見ている
同じ月を見上げていた人と
同じ角度で見上げる場所を

そんな夢と現の乖離も
足を運ばぬ理由にならない
旅に意味など端からない
#詩 #短詩 #ソネット #ポエム

もっとみる
太陰暦

太陰暦

さあ飛べや飛べ

真実に満ちた夜の宴で

踊れ踊れよ 月の周りを

その情熱が欠けぬよう

焔絶やさぬ祈りの歌を

さんざん踊り明かした後には

すぐ鎮まれよ 翼をたたみ

還れ還れ還れ 日常へ

大地に座り見上げてみれば

暗き余白にも潜む真実
#詩 #短詩 #エッセイ #小説 #ポエム

四行詩 11. (+小エッセイ)

四行詩 11. (+小エッセイ)

ことば湧き出し こころ波立つ鳥の声 木々 やまなみの雲静けさ捨てて 宇宙を抱き         (生きゆく)咎めるな 何も 操るな

*    *    *

「座禅は苦行ではない」

今年の4月から7月までのあいだに、座禅を10数回体験した。禅の指導をしてくれた僧の宗派は曹洞宗だった。
座禅は苦行ではない。悟りを得ることも、精神統一することも、ストレス解消することも、その目的とはしていない。

もっとみる
四行詩 10.

四行詩 10.

    堕ちて潜って沈んだ先で

    「腐るだけ」などと誰が言う

    闇深まれば 深まるほどに

    踊りはじめる 光の砂塵

 お師匠さんの言葉からインスピレーションを受けて書いた。しかしどこに記載があったかをまったく見失ってしまった。こういうことってよくありませんか?
 きっと僕がこの詩をまた見失ったときに、ひょっこり顔を出して僕をたしなめるのだろう。
#詩 #エッセイ #

もっとみる