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矢口れんと
2021年8月23日 16:15
「次元キャンバス」 わた菓子を連ねたような林だ 毎朝 差し込まれるわずかな時間 視界の水平120°に手を広げ 意識と向き合う 静かな林だ わたしはその奥行きを未だ知らず ましてや 時の奥行きまで知るすべもなく それは遠いキャンバスに描かれた 小さな樹海の油絵に過ぎないのか ふと 林の手前で 青田に隠れて青鷺のこうべが揺れた 林を見つめる後ろ姿は 心細そ
2019年9月25日 09:00
秋に洗われた風が身体を突き抜けていった去った湿度をまた追いかけるのだろうか行きつ戻りつの荒野に立ち尽くし耳を澄まして君の故郷を思い浮かべるあてもないけれど足を踏み出したその方向には一秒先の風が待っている君に抱かれに行く
2019年7月30日 06:43
誰も彼もが喋りすぎて、夜が来るのが遅くなった。夜が来るまで喧しくなった。それは今日という日に今日を置いて行けなくなったことだ。疲れなくては眠れないなんて…… 〔詩に寄せて〕*
2019年6月22日 19:55
恋をするたび思い知る恋を知らなかったということに恋というものがもし身の内に 湧き出す泉でも心の内に 膨れる煙でもなく誰かと誰かの間にとつぜん生まれる色も形も違う 宝石 だとしたら目の捉えない手で掴めない 輝き があるところに留まらずあらゆるところに満ちてゆくのを止めることができずただ口を閉ざすだけ
2019年4月4日 21:10
心ゆらゆら瞳も揺れる鏡を見ればまた取り繕う誰かが言った「私はいない」 信じられること信じることどんな本にも書いていない誰の口からも出ない言の葉 ーーそれは誰かの涙の底に宿る詩誰かの瞳に火を灯した詩言葉であることを忘れた詩
2018年12月25日 16:32
蜜も涙も溢れて漏れて 小さき器を恨めしく見ていた 月には目もくれなかった長夜 明ける頃には 海の一部でいたかったのに #詩 #短詩 #四行詩 #ポエム #エッセイ
2018年11月13日 11:30
朝が黄色い涙落とした夕べは青く鳴いていた移ろう色こそ恋と呼ぶなら望むのは 永遠でなく あと1分 #詩 #短詩 #四行詩 #エッセイ #小説 #ポエム #恋
2018年11月12日 19:51
遠く隔たっているようで、すぐ辿り着ける国の、離れているようで、傍にある塔の話。 聞こえるか、摩擦で上げる雄々しい叫びが。見えるか、対比が示す猛々しい建造が。そうだ。上へ、上へ、上へと積み上げてきた塔だ。烈しさゆえに、物々しくも濃霧に隠された、輪郭と鋭角の象徴だ。 こんな伝説がある。塔の最も高いところに剣を突き立てた瞬間のこと。稲妻が龍の如く天へと昇り、分厚い暗雲をつんざく、と。霧が晴
2018年10月11日 17:31
遠く隔たっているようで、すぐ辿り着ける国の、離れているようで、傍にある泉の話。 立ち込める霧は視界の全ては遮らない。霧は、泉のまわりにある原生林や山々や、その輪郭と色合いをうまく柔和させている。目の前の光景をむしろ美しく、ただ美しく見せ、旅人らを妖しげに誘っていた。 霧と凪は仲良くしていた。ここでは晴れやかな陽気よりも、閑寂とした空気の方が似合うみたいだ。快活な太陽が照らせば、すぐさま光が
2018年10月10日 08:30
衣かへして抱きしめたのは薄い紅のまま残った心 退く紅は秋の空色今宵、別の色恋へと向かう #詩 #短詩 #四行詩 #ポエム #エッセイ
2018年9月24日 07:58
距離は旅になり時間は紙になる会いたい人がひとりいるなら伝えたいことがひとつあるなら淡々と過ぎる日常の挿話にそんな紀行文があるといい思い出のひとひらでも持ち帰れたらきっとまた旅をしたくなるいま揺られながら夢を見ている同じ月を見上げていた人と同じ角度で見上げる場所をそんな夢と現の乖離も足を運ばぬ理由にならない旅に意味など端からない #詩 #短詩 #ソネット #ポエム
2018年9月14日 20:34
さあ飛べや飛べ真実に満ちた夜の宴で踊れ踊れよ 月の周りをその情熱が欠けぬよう焔絶やさぬ祈りの歌をさんざん踊り明かした後にはすぐ鎮まれよ 翼をたたみ還れ還れ還れ 日常へ大地に座り見上げてみれば暗き余白にも潜む真実 #詩 #短詩 #エッセイ #小説 #ポエム
2018年8月13日 17:00
ことば湧き出し こころ波立つ鳥の声 木々 やまなみの雲静けさ捨てて 宇宙を抱き (生きゆく)咎めるな 何も 操るな* * *「座禅は苦行ではない」今年の4月から7月までのあいだに、座禅を10数回体験した。禅の指導をしてくれた僧の宗派は曹洞宗だった。座禅は苦行ではない。悟りを得ることも、精神統一することも、ストレス解消することも、その目的とはしていない。そ
2018年6月21日 10:09
堕ちて潜って沈んだ先で 「腐るだけ」などと誰が言う 闇深まれば 深まるほどに 踊りはじめる 光の砂塵 お師匠さんの言葉からインスピレーションを受けて書いた。しかしどこに記載があったかをまったく見失ってしまった。こういうことってよくありませんか? きっと僕がこの詩をまた見失ったときに、ひょっこり顔を出して僕をたしなめるのだろう。 #詩 #エッセイ #