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檸檬読書日記 ゴーストドラムを、ボードレールの猫は本屋で、短編は詩。 6月3日-6月9日

6月3日(月)

腹が減り 何食べようと 考えど 頭に料理 回って終わり

何食べようかなあと、考えているだけでなんだか満足して、もう良いかなあとか思ってしまう、今日この頃。
極度の面倒くさがり。



スーザン・プライス『ゴーストドラム』を読み始める。児童書。

1年の半分が雪で覆われる北の国は、残酷な皇帝たちが支配していた。皇帝は恐れるあまり息子さえも塔の中に幽閉し、息子・サファは生まれてからずっと外に出たことがなかった。
母はサファが生まれた時にくなり、唯一彼と接することができたのは、乳母である女性だけ。乳母が語ってくれる外の世界に、サファはしだいに憧れ…。
方や、生まれてから魔女の老婆に引き取られ、魔女となったチンギスという女がいた。
チンギスはある日、孤独に叫ぶサファの声を聞き、助け出すことに。
塔から連れ出し、彼を自分の弟子とするが、彼を殺すための魔の手が追いかけてきて…。
残酷で殺伐、雪の中に囚われたような寒さを覚える、ダークファンタジー。

老婆の魔女は弟子に言う。魔法には3つの魔法があると。その1つが「言葉の魔法」。それは


「たとえば、皇帝や女帝が国民に戦うように命令したとしよう。それも、戦ってはならないようなおろかな戦いをね。くだらない理由のために何千もの人が死に、残された家族は悲しみにくれる。たくさんのお金が大砲や剣を作るのについやされ(略)人々を養う麦になる種麦を買ったりするお金がなくなってしまう。何千もの人々が(略)ひもじい思いをする。戦争のためにね。
皇帝は恐れる。国民が、この戦争がいかにおろかで、いかにむだなものか気づいたら、怒って刃向かってくるかもしれない。
そこで皇帝は言葉の魔法を使う。(略)
『この戦いは決しておろかなものではなかった。それどころか、この戦いのおかげで、わが国民は世界で最も勇敢ですぐれていることが証明された。彼らはわしのために死に、あまたの敵を打ち倒した。おまえたちが飢えていることは百も承知だ。だが、それこそおまえたちが気高い心の持ち主であることの証なのだ。おまえたちは母国のためであれば、自らを犠牲にしてもよいとさえ考えてくれている。(略)』
皇帝はこういい、それを何度もくりかえし、(略)会う人ごとにそれをくりかえすよう命令する。こうして言葉の魔法は働き始める。人々は怒りを忘れ、息子や兄弟が殺されるのを喜び、自分たちが寒くひもじい思いをするのを誇らしく感じるようになる。これは最も単純な言葉の魔法だが、とても強力だ。(略)」

魔法はあるけど、かなり現実的だ。




6月4日(火)

日曜日に出来なかった畑仕事をする。
今回も人参を間引いて、少し遅いけどまた人参の種をパラパラと撒いてみる。
パンダ豆とインゲンも苗がいい感じになったから植える。初めて作るやつだからドキドキ。上手くなるといいなあ。
後は最後のらっきょを抜いて、ルッコラ、ニラ、カモミール、紫キャベツ、小松菜、ネギを収穫。



休憩に、お試しでもらった『BREW TEA Co』の「アップル&ブラックベリー」を飲む。


色が綺麗。
ベリー感が強い。アップル感は分からないけれど、まさにベリーを飲んでいる感じ。若干甘みも感じられるような。
パックの中にはベリーがごろっと入っていて、使った後そのまま食べられそうなくらい。少し捨てるのが勿体なくなる。

これはベリー好きの人にあげたら喜ばれそう。



スーザン・プライス『ゴーストドラム』を読み終わる。


「ここに倒れている兵士たちをみろ。われわれの兄弟だ--同じ国に生まれ、同じような貧しい家で育ち--親はみなちがうが、みな同じ奴隷の息子だ!それなのにわれわれは、金持ちの廷臣や、皇女や(略)皇帝の気にいられようとして、兄弟を殺してきた!兄弟たちよ、いったいわれわれは何をしているのだ?われわれを動物のようにこき使う、親戚ではない金持ちのために、殺しあっているだけではないか?」


最初から最後まで、良い意味で裏切られっぱなしの作品だった。今まで得た物語の王道展開知識などまるで通用せず、嘲笑うようにまさかの展開の連続。

理解できない思考、理解できない展開に、ファンタジー世界なのに、現実味を感じた。理解できないというよりも、理解したくないような、狂気感。まるで戦争のような。
人の醜く欲深い面が凝縮していた。

物語はあっさりというか、冷酷に淡々と進んでいく。情報がやや少なめで、その熱の低さに最初は物足りなさを感じるけれど、だんだんとその冷たさが、物語の中に惹き込む要因となっていく。けれど、冷たさだけでは終わらない。それが巡り巡って繋がり、最後は氷を溶かす熱になる。

本当に凄い作品に出会ってしまったというのが正直な感想。ファンタジー系では、久しぶりに感じる高揚感。ワクワクというよりもドキドキで手が止まらなくなった。
少し重めな内容ゆえに、万人受けするようなものではないだろうけれど、個人的には凄くハマった作品だった。
最後の皮肉も痺れる。

この作品、三部作になっているようで、他2作も気になる。なんとなくファンタジーものが読みたくて図書館で借りて読んでしまったけれど、これは絶対に買おうと決意。3冊全部。これは手元に置いておきたい。





6月5日(水)

古書店で本を買う。


寺山修司『さみしいときは~』に、アポリネールのことが載っていて、気になった。とはいえあまり期待しないで行ったところ、売っていて飛び上がっている。やった。
去年当たりに新しい訳で出て、そちらの方が読みやすいと書いてあったけれど、この文庫版が欲しかった。

なんといっても表紙が好み。なんともいえない表情をした渋い顔が堪らなく良い。ジャズのジャケットみたい。
そしてこれ、まさかのピカソの絵らしい。

後は、高野悦子『二十歳の原点』も、長いこと探していた本だから、見つかって嬉しい。
確か池上彰が何かの雑誌で紹介していて、気になっていたんだよなあ。
ただ気になるのが、最新のものは改訂版となっているけど、自分のは違うようで。古いものらしいけど、何か違うのかなあ。出来れば改訂版が欲しかったけど…でも内容的にはきっと同じだよな。うん、きっとそう。
でも改訂版見つけたらまた買おうかな。

写真にはないけど、漫画、伊藤悠『シュトヘル』の見つかってなかった1冊、12巻が見つかって、ようやく全巻揃った。ようやく読めるよ。長かった…。
そういえば面白いことに、長いこと見つからずに探していたこの漫画、あんなに見つからなかったのに今回見たら全巻揃って売っていて、思わず笑ってしまった。苦労して全巻揃えたのに、揃った途端全巻売ってるんかーい。てね。
まあそういうもんだよなあ。

本棚整理、ようやく一段落して(終わった訳ではないけど、とりあえず)、手放す本を100冊ばかり見繕ったから調子に乗って買ってしまったけど、冊数の殆どが漫画だから、文庫棚はそんなに空いていないという…。やってしまったね。
プラス最近小説を20冊くらいもらったから、逆に溢れるという。
早く読んで減らさねば。



エドガー・アラン・ポー『黒猫 ポー傑作選』を読む。
「メエルシュトレエムに呑まれて」を読み終わる。

短編集には、大体1作か2作くらい自分には分からないものがあるけれど、この作品はそれだった。頭の弱い自分には残念ながら理解できなかった。
その上結構長い。そしてカタカナが多いから何がなにやら。
海や船のことを言い、おそらく自然の驚異をどうのこうの言っているとは思うのだけれど…。

ただ、分からない中でも、ドキッとするところはある。後半部分だけ若干飲み込めてきて、暗闇の中闇雲に歩いていたら突然肩を掴まれたような、そんな驚きがあった。
理解できなくとも恐怖だけはしっかり与えてくるのだから、ポーは凄い。





6月6日(木)

ヴァンダ・プシブィルスカ『少女ダダの日記 ポーランド一少女の戦争体験』を読み終わる。


母親の語るところによれば、最後に地下の退避所から逃げるとき、「さあ、早く起きて逃げるんだ」と父親がうながしたのに答えて、こう言ったという。「おとうさん、もう逃げなくたっていいじゃない」。


これが少女の最後の言葉。

最後まで平穏で明るい未来を夢見た少女。
そんな少女や少年、それだけではない普通に暮らしていた人々の願いは、何故いつの時代も聞き入れられないのだろう。
こうやって、当時を知れる情報や実際の願いや強い想い叫びが残っているというのに、それでも何故またやれてしまうのだろう。少女ダタだけではない。こういう本は、溢れるほどたくさんあるというのに…。
見たくないのか見ないのか。見ても何も感じなくなってしまっているのか。それとも、実感できないからと他人事として捉えてしまうのか…。
それでも、こういう声は残り続けてほしい。たくさんの人に読まれて、少女の願いが現実になってほしい。





6月7日(金)

生藤由美『ボードレールの猫』(全2巻)を読む。漫画。

「女と猫は呼ばない時にやってくる」

書店員(あまりやる気のない)だった女性は、事故で亡くなり、記憶はそのままで猫に生まれ変わる。
当時は興味がなかったものの、匂いに惹かれてある本屋に入ってみたところ、顔は猫のまま、人の姿になっていた。
前世ではやる気がなかった書店員としての仕事、本との関わりを、取り戻すように色々と奮闘する話。

本屋、特に個人経営の本屋の人には凄く刺さる作品ではなかなあと思った。
本屋を続けていく難しさや辛さも書かれていて、本屋は何処もこういう想いを抱えているのだろうなと思うと、切なくなった。好きで初めたことだけれど、好きだけではどうしようもないこともたくさんあるのだろうなと。
だからこそ買って支えていけたらいいよなあと改めて思った。微力でも。

この本、本屋さんならと思うのだけれど、あまり見かけないのが少し不思議。もう少し押してもいいと思うのだけれどなあ。
結構な特設定だからなのか。
確かに主人公の性格が昔の少女漫画ヒロイン感があって、少し気になりはするけれど…。
んーでも本好きは好きそうだけどなあ。

この本を読んで、ボードレールが読みたくなった。有名な『悪の華』、名前はよく聞くけど読んだことないんだよなあ。(そういえば、関係あるか分からないけど、同じタイトルの漫画とかもあったよなあ。それは少しだけ読んだような。それは難しくてやめたような)
探してみようかな。 

後、この本では出てこなかったけれど『パリの憂鬱』も気になる。新潮社のやつが、表紙が素敵な上に三好達治が訳をやっている。これは絶対手に入れたい。



最近小説とか、文字だけが少しキツくなってきた。
読めるけど読めない。頭に入ってこない。最近難しい系に手を出しすぎているせいかもしれぬ。小さい脳みそがパンパンじゃ。

たまにあるけど本には触れたい。そういう時は漫画に限りますな。漫画はあまり読めてなくて溜まりすぎているから、丁度いいかも。





6月8日(土)

やらねばと、火曜日に採ったらっきょの処理。
これで今年は最後。大きいやつは種用に取っておいて、小さいものを酢らっきょに。
小さいから大変。洗って切って、特に薄皮を剥かなくてはいけないのが…。
頑張りましたよ。
せっかく取れたのに、また手がらっきょ臭になってしまったなあ。しばらくはらっきょぷんぷんだ。
結局4キロくらい採れた。随分出来たなあ。



入江亜季『旅』を読む。漫画。

短編集。
この人の絵は、本当に美しい。
明るさと美しさでキラキラと輝いている。

しっとりする話もあったり笑える話もあったり、癒しや微笑ましかったり、短編集ならではの色んなものを味わえる楽しさがあった。
どの話も好きだけれど、タイトルになっている『旅』や、壺を買ってその中に金魚でも入れようと水を入れたら、先に女の子が中に住んでしまったという『水中国の娘』の世界観もとても好みだった。

でも笑える系の『旅の王子』も捨て難いなあ。
王様になりたくなくて逃げる皇子を追いかける話なのだけれど、コメディー感がかなり強い。追いかけていたはずの王子がいつの間にか追いかける側に紛れ込んで、その上バレずに上り詰めてまでしたりして、昔の海外アニメみたいなグルグル感が面白い。
でも最初の『春駒』も良いんだよあ。最初からグッと掴まれた。んー結局どれも良いんだよなあ。


短編は好きです。短い話で大きなものを描く楽しみがあります。詩に似ています。


あとがきも良い。

「詩に似ています。」 

この感覚好きだなあ。短篇は詩、分かるような気がする。
長い長い話も、浸る時間がそれだけ長くなるから好きだけれど、短篇は濃縮された濃さがあるから好き。1つでお腹いっぱいの満足感が高い。

また短編集出してほしいなあ。





6月9日(日)

きゅうりが大きくなったから、植える。普通のきゅうりと、ミニきゅうり。
後はオクラも植え植え。



『村山槐多全集』を読み始める。

小林秀雄『読書のこころ』を読んで、全集に挑戦したくなった。
本当は内田百閒とか読めたら良かったのだけれど、如何せん長い。初心者には厳しいと断念。そもそも手元にもない。
だから手元にある村山槐多をまず読むことに。全1巻だから、最初には丁度いいかなと。

次は全2巻のやつにして次は3巻でと、巻数を増やして慣らしていく作戦。
そして最終目標が、内田百閒。

最初は、詩から始まる。


血に染みて君思ふ
五月の昼過ぎ
赤き心ぞ震ふ
あはれなるわが身に

はてしらぬ廃園に
豪奢なる五月に
君が姿立てる時
われはなくひたすらに

わが血は尽きたり
われは死なむと思ふ
華麗なる残忍なる君をすてゝ
血に染みて死なん。

「血に染まみて」


村山槐多、最初から血塗れですよ。
けれど不思議と、血生臭い感じはないんだよなあ。血とか赤とか、頻繁に出るのに、死の匂いもしない。寧ろ人臭いというか、生きているなあというか、高村光太郎が言ったように、燃えている。
血をポタポタ垂らしながらも、死んでしまうとか言いつつも、生きて生きて生きて、血を燃料に燃やしている。

正直そんなに理解できる訳ではないけれど、揺さぶられる何かがある。知れば知るほど、理解したいと思うし、もっと知りたいと思ってしまう。
なんと罪深き人なんだ。
読んでしまうのが少し勿体無い気もするけど、これから少しずつ読んでいこう。



石井千湖『文豪たちの友情』を読む。
「国木田独歩と田山花袋」編を読み終わる。

濃い感じの人って、儚く薄い人が好きだよなあ。
国木田独歩は、田山花袋と会った当時、色白でひょろひょろした青年だったらしい。へー。

国木田独歩は、別れた妻に未練たらたらな上、写真も持ち続け、毎晩妻が帰ってきたかもしれないと足音が聞こえていたのだとか。けれどそんな訳はなく、堪らなくなって短刀を突き刺してやりたいと思っていたのだとか。そして実際に短刀を持ち歩いていた。
色々と意外だ。

後は、良く喧嘩をしていたらしいが、2人のケンカというか言い合いが子供同士のようでおかしかった。内容は全く子供ではなけど。

田山花袋といえば、最近出た『田山花袋事物事典』が気になるんだよなあ。
彼の本読んだことないけれど。面白そう。




ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
皆様に平穏な日々が続きますよう、願っております。
ではでは。

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