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わたしたちのこころの中 — 2人の往復書簡

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東京に住むペレ信子と、ベルサイユで暮らすドメストル美紀。同じ年に生まれ、それぞれフランス人と結婚し、子どもも同年代で、物を書くことを軸にしていて、アールドヴィーブルが好きで……。…
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親愛なる信子さんへ④

親愛なる信子さんへ④

10月18日、ベルサイユ

 曇り空の朝を迎える中、お便りしています。昨晩の雨はひとまずは止んだようでほっとしています。
 先週は、パリの空港からお手紙をありがとうございました。短い期間に東京とフランスを行き来されたとのこと、大変でしたね。時差など大丈夫ですか?

 お手紙には、義母様とのお別れを通して、フランスにも家族がいることを実感された、とあり、羨ましい思いで読んでおりました。わたしは、義理

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親愛なる美紀さんへ ③

親愛なる美紀さんへ ③

10月11日 パリ

パリの空港でこのお手紙を書いています。フランスに住む夫の母が9月末に亡くなり、葬式や様々な手続きのためにフランスに来ていました。そんなこともあり、お返事の前に少し昔話をしたいと思います。いつもより少し長めのお手紙です。

私が最初の仕事に就いたとき、しばらくブザンソンの夫の実家に住んでいました。まだ結婚していなかったこともあり、居候生活は少し肩身が狭く、初めての仕事でストレス

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親愛なる信子さんへ ③

親愛なる信子さんへ ③

10月4日、ベルサイユ

 往復書簡を初めてから一か月経ち、気づくと暦は十月。黄金色のティヨールの葉が、風が吹くたびにに舞い降りてきて、狭い庭が落ち葉だらけとなっています。そちらはいかがですか? 涼しくなってきたなら良いのですが。あの青が濃い、日本の秋空が恋しいです。

 風といえば、時も風のように過ぎ去っていくものですね。今、返信を書くべく、自分の来た道を振り返っているのですが、新卒の頃のことな

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親愛なる美紀さんへ② Ma chère Miki

親愛なる美紀さんへ② Ma chère Miki

9月27日、東京

お元気でいらっしゃいますか?十五夜の日は昼間33℃まで気温が上がりましたが、やっと涼しい風が感じられるようになった東京です。

美紀さんのお仕事についての考え方の変遷、そして子育ての喜びと引き換えに失ったもののこと、とても興味深く読みました。そして私も同じような考え方をしてきたところがあると気づきました。

私の場合は、フランスの大学に留学した後、最初の就職はフランスでした。当

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親愛なる信子さんへ②

親愛なる信子さんへ②

 9月20日、ベルサイユ

 2週間ぶりのお手紙を、黄金色に色づき始めた街路樹を眺めつつ認(したた)めております。東京はいかがですか? 残暑もやわらぎ始めているとよいのですが。
 
 信子さんからのお手紙に、「親愛なる」という言葉が「良い言葉ですね」とありましたが、ほんとそう思います。親しみがあるとともにほどよい距離感があって、敬意があって、やさしさがあって。
 その後、ジムには申し込まれましたか

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親愛なる美紀さんへ Ma chère Miki

親愛なる美紀さんへ Ma chère Miki

2024年9月11日、 東京
お手紙ありがとうございます。

前回「親愛なる」という枕詞をつけて誰かに名前を呼んでいただいたのは、いつのことだったか思い出せないくらい手紙を書かなくなりました。「親愛なる」はフランス語の「Cher / Chère」(英語のDear)を日本語で表現したものだと思いますが、良い言葉ですね。

ベルサイユは雨模様なのですね。始まった新学年、秋の気配。夏休みが終わり、ひとり

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親愛なる信子さんへ

親愛なる信子さんへ

 2024年9月9日、ベルサイユ

 温かい雨がしとしとと降るベルサイユよりお便りしております。
フランスでは、快晴が多い9月なのに、今朝は雨足もつよく、当分止みそうにありません。こんなところでも気候の変動を肌で感じます。そちら東京では、もっと如実に気候が変わっていると耳にしていますが、いかがですか?
 
 9月に入って2週間余り、日本も新学期が始まり朝の通学時など、賑やかでしょうね。ご存じのよう

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