東京に住むペレ信子と、ベルサイユで暮らすドメストル美紀。同じ年に生まれ、それぞれフランス人と結婚し、子どもも同年代で、物を書くことを軸にしていて、アールドヴィーブルが好きで……。そんな2人の往復書簡です。 考えることが似ていたり、時には違っていたり。一緒におしゃべりしているような気持ちで読んでいただけたら嬉しいです。
ペレ信子と申します。 フランスで通訳・翻訳の仕事をした後、フランス人と結婚し日本に帰国したのはもう30年前。 3人の子供は、フランスと日本に散らばっていますがクリスマスと夏休みにみんなで会えるのが楽しみ。 12年前から家での暮らしを楽しむために、フランス流のアイデアやテーブルコーディネート、料理をご紹介する教室「Table de N」をやっています。 7年前にフランスの暮らしについて書いた「フランス流しまつで温かい暮らし」(講談社)を出版しました。 2年前にフランスの大学で「
2024年9月11日、 東京 お手紙ありがとうございます。 前回「親愛なる」という枕詞をつけて誰かに名前を呼んでいただいたのは、いつのことだったか思い出せないくらい手紙を書かなくなりました。「親愛なる」はフランス語の「Cher / Chère」(英語のDear)を日本語で表現したものだと思いますが、良い言葉ですね。 ベルサイユは雨模様なのですね。始まった新学年、秋の気配。夏休みが終わり、ひとりの時間にホッとして外の雨を眺めながら紅茶を飲む(美紀さんはコーヒーよりも紅茶のイ
末っ子がリセを卒業して1年経ちました。慌ただしく見送った1年前。子供のいなくなった家で、ふたたび夫と二人の生活のリズムに慣れるのに数ヶ月かかりました。 寂しい、寂しいと周りに言っていたら、気にかけて食事に誘ってくれる友達が多くいました。そして寂しい気持ちのストーリーを何回も繰り返して話しているうちに、寂しい気持ち自体は薄れていって、子供が家にいない生活にはすっかり慣れていきました。 と思っていたら7月にパリで学ぶ子供2人が夏休みに家に戻ってきました。学問や研修などの仕事や、
三寒四温の春の気配。温かい日と寒い日が交互にやってくるのはパリも同じだそう。フランス東部に住む夫の両親、パリの大学で勉強している娘とは毎週連絡を取っています。 燃料費高騰の中で、長年親しんだ暖炉を撤去して、鋳物のストーブを導入することになった夫の実家。暖炉は素敵なのですが、開口部が広いだけにエネルギーのロスもあり、家を効率的に温めるならストーブの方が良いそうなのです。 現在の様子を見せてくれましたが、リビングが工事現場のようになっていて、これはストレスがたまるだろうなあと
最近は、YoutubeやインスタグラムなどありとあやゆるSNSで様々な場所から、たくさんの人が自分の暮らしを発信するようになりました。 以前はフランス旅行に行く時は、公的な機関のホームページはもちろん、現地に住む人のブログなどを読み込んで情報を得たものです。今は情報量も比べものにならないくらい。細分化されて、パリだけではなく、この地域のココの村やアノ店、と言うように検索すればかなりの確率で情報が入手できるようになりました。 特にYoutubeで発信している人の数が急増して
愛があれば、ことばは通じなくても。 そんなのウソだと思いませんか。 恋に落ちるときは、ことばじゃないかもしれない。 笑顔だったり、たたずまいだったり、感じる何かがあったり。 その一瞬は周りがかすんで見えるほど、その人しか見えないもの。 それが特に、相手が外国人の場合は、ことば以上にお互いのフィーリングや直感を信じて飛び込んでいくでしょう。 でも人間にはことばがあります。そしてことばによって言い合いが始まる。 どんなに好きでも、必ずケンカをする日がやってくる。 やって来ない
フランス、特にパリのような大都市に行って、良いなぁと思ったことによく挙げられるものの一つに「ビルや地下鉄のドアを前の人が押さえて待っていてくれること」があります。 フランスで人にドアを押さえてもらい、自分もドアを押さえて次の人にバトンタッチする習慣を身につけた人や、それを旅行で経験した人が、日本に帰ってきて目の前でバタンと閉められるドアに呆然とした、やっぱりフランスは素敵!と思った、と言うのを聞いたり読んだりします。 中には、美男にドアを押さえて待っていてもらい、「私のこ