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ドアを押さえるのか押さえないのか。フランスと日本。

フランス、特にパリのような大都市に行って、良いなぁと思ったことによく挙げられるものの一つに「ビルや地下鉄のドアを前の人が押さえて待っていてくれること」があります。

フランスで人にドアを押さえてもらい、自分もドアを押さえて次の人にバトンタッチする習慣を身につけた人や、それを旅行で経験した人が、日本に帰ってきて目の前でバタンと閉められるドアに呆然とした、やっぱりフランスは素敵!と思った、と言うのを聞いたり読んだりします。

中には、美男にドアを押さえて待っていてもらい、「私のこと気にしているのかしら」と思ってしまった女子もいる。フランスに残っているガラントリー(galanterie:女性に対する優しさ)のひとかけらと言えばそう。

フランス語教授法の授業を受けている時も、日本とフランスの文化の違いについて考える授業があって、その中でもドアを押さえてくれる習慣ついてはよく話題に出ました。そんなわけで、私も日本でドアを押さえて待ってくれる人がいるかどうか、よく観察してます。


先日、コンビニで買い物を済ませて出ようとした時、自動ドアではなくて手で押したり引いたりするドアだったのですが、私の前に出て行った女性がドアを押さえて私を待っていてくれたのです。

うわ、優しい。心があったかくなりました。

急いで私もそのドアを受け取り、優しい気持ちでうしろの人のためにドアを押さえて振り返りました。そこには片手にスマホ、もう片方の手に熱々のコーヒーを持った男性が。フランスならば、その男性は手ではなくて背中でドアを受け取って、次の人にバトンタッチするシチュエーション。私はなんの疑いもなく、その男性もそうするだろうと思い込んでいました。

が、彼は、私が高級ブランドの入り口に立っているドアマンだと思ったらしく、そのまま私の横をすり抜けて、出て行ってしまったのです。

「え〜!?」

彼の後には誰もいなかったので、私は一人寂しくドアから手を離しました。なんかモヤモヤする。やっぱり日本は…。と思いながら過ごした一日。


そしてのその夜。

同じコンビニの反対側の道を家に向かって歩いていました。

昼間のことを思い出して目を上げると、ちょうど外からコンビニに入ろうと小走りしている男性が。コンビニ店内には、外の小走り男性がドアに到達するときにちょうどドアに手をかけるであろうタイミングで外に向かう男性が見えました。二人とも同じくらいの年代。

「これはどうなるのだろう?」

と私は、歩みを緩めて成り行きを見守ることにしました。

秒差で外の男性がドアに手をかけました。外側にドアを引いたその男性は、店内から出てくる男性のドアマンになってあげるのだろうと思いきや、外の男性と中から出てくる男性が同じタイミングで、体を細くして(細くするためにおへそを凹ませるような動作で)ドアの開口部を同時にすり抜けたのです。それもお互い軽く会釈しながら。

私はハッとしました。

日本って…。どちらかが優先権を取ったり譲ったりするんじゃなくて、平等に同時にドアを通り抜けるの。まあドアを引いた分、外の人の方が頑張ったけど。

これは日本の「あうんの呼吸を他人ともできちゃう」能力の賜物ですよね。誇らしいぞ、日本人。

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