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ショートストーリー

86
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2023年5月の記事一覧

明日が来るまで遊んで待つ

明日が来るまで遊んで待つ

夜風が何とかしてくれると思って部屋の窓を開けた。

あれこれ考えるのが嫌になって、この窓から外に出るんだ。
逃げるんじゃないんだよ。
すこし遊びに出るだけだから、そんなに心配しないで。
たまにやってることだから大丈夫。また帰ってこれるはずだよ。
イヤフォンを耳に入れる。Bluetoothは便利だ。
お気に入りでも誰かのプレイリストでもいいから、今日の声を探す。
ベースがブンブン震えてピアノがはじけ

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善からぬ噂話

善からぬ噂話

月にカエルが祈っている。
グギュるグギュると上げる鳴き声は、月に届くのだろうか。
その日を信じて夜通し歌うのは、何の歌だろう。
体が壊れるほどに震わせて、願う望みはなんだろう。
もしも綺麗な願いならば、月の光に身をさらせるだろう。
なのにどうして闇に隠れて祈るのか。
雨が降ってきた。
雨音が彼らの声を隠す。
だから、カエルは雨を呼ぶ。
秘密の願いを巧妙に隠すためには一番都合がいいから。

月にカエ

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寝起きも寝る前も、大差はない。

寝起きも寝る前も、大差はない。

あたたかい陽射しが右の頬に当たり、欠伸をする。少し痛さを感じるくらいに口を大きく開け、「くぁー」とわざと音を出してする。猫が欠伸をするときは、そんなふうに野生味たっぷりの表情をするものだから、自分もネコになると決めた日からそうすることにした。

6時55分。

車内のデジタル時計に目をやってからシートに寄り掛かり、それから首の辺りの伸びをした。気が付いたらこんな時間になっている。
すこし眠っていた

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ポケットにしまった記憶

ポケットにしまった記憶

海岸沿いに見晴らしの良い休憩所がある。
車が20台くらい止められる駐車スペースとトイレ。それと、そこからちょっと歩いていける屋根のついた休憩ベンチ。その一帯を区切るように囲む柵が、青く広がる海の迫力を一層盛り上げている。
天気は、やや曇り。

運転中にかかってきた電話に折り返すために、そこに駐車した。
若者が4台並べて駐車して、車外にでて楽しそうに談笑している。会話の内容までは聞こえないが、最近上

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習性

習性

大抵は壁に隠れて過ごすらしい。
でもその中の多くは、ある程度時間がたつと隠れていたところから出てきて動くみたいだ。動く先は、いつも同じことが多いんだって。
その場所は、同じのがいっぱい集まってくるように作ったんだって。
そして、またあたりが暗くなってくると壁に隠れ始めるんだってさ。
それから、静かになってあまり動かなくなるらしいよ。

この世には、不思議な生き物がたくさんいるんだね。

見るためには瞳を閉じる。

見るためには瞳を閉じる。

退屈をつまみに昼寝をする。こんな贅沢が許されるのは平和だからだろう。
こうやって眠気がするときが丁度いいのだが、今日、新しい趣味を見つけた。
目を軽く瞑る。軽くだ。普段かけてる眼鏡もおでこに乗せてしまおう。閉じた視界は暗い感じはしない。ただ閉じた瞳の前にうっすらと光と熱を感じる程度に、静かに心を保つ。
そうしていくと、呼吸と一緒に光の道筋というか過去に瞳が写したのかもしれない残像のようなものが浮か

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