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見るためには瞳を閉じる。

退屈をつまみに昼寝をする。こんな贅沢が許されるのは平和だからだろう。
こうやって眠気がするときが丁度いいのだが、今日、新しい趣味を見つけた。
目を軽く瞑る。軽くだ。普段かけてる眼鏡もおでこに乗せてしまおう。閉じた視界は暗い感じはしない。ただ閉じた瞳の前にうっすらと光と熱を感じる程度に、静かに心を保つ。
そうしていくと、呼吸と一緒に光の道筋というか過去に瞳が写したのかもしれない残像のようなものが浮かび上がる。僕の場合は、女性の顔だ。
それがなにかは、分からない。
好きなものなのか、あるいはただの欲求不満なのかもしれない。
別にその顔に見覚えはないし、恐らくは重要なのはそこではない気がする。
その浮かんだ顔をゆっくり、でも思い通りに変化させる。油粘土をこねる小学生の気分で自由に好き勝手に形をいじる。遠慮なく好きな表情をさせる。絶対に誰にも見られることのない世界で、唯一この世界で秘密が存在したままで現存する空間。
もしかしたらこの行為を瞑想と呼ぶのだとしたら、表面状は欲を捨てた坊さんたちがひた隠しにしてきたのも納得だ。欲望を捨てたのではなく、秘密の場所に隔離して自分だけで楽しむ方法を確立していたのだから。実にけしからんことだ。だけどそれも今日まで、今日からは僕も楽しむとしよう。

開けっ放しの窓から横風が入って顔を冷やす。
平和を楽しむ僕に、退屈が戻ってきた。

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