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深読み

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少し考えた時の記録です。回顧、反省なども。 他には、クリヤヨーガやヴェーダに関する書籍の読書記録も。
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2020年4月の記事一覧

深読み:始まりがあるものには終わりがある

深読み:始まりがあるものには終わりがある

映画としては、もはや古典かもしれませんが、『マトリックス』3部作の完結編をふと思い出しました。第3部は、難解で、後味の悪い終わり方をするので、評価がわかれる内容でしょうか。クライマックスのシーンで、宿敵エージェント・スミスを倒した(自滅させた)必殺技(言葉)が、これだからです。

「始まりがあるものには終わりがある」……いま、私は何と言った?

スミス自らの口から、こぼれ落ちるように出ました。

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深読み:生まれ変わる

深読み:生まれ変わる

ケルト神話に「トゥアタ・デー・ダナンの神話」があります。エーダインという美しい女性が、神ミディルの妃となるのですが、一番目の妻ファムナハがその様子に嫉妬し、魔法でエーダインを水たまりに変えてしまいます。水たまりになったエーダインは、毛虫に変わり、やがて紫の蝶に姿を変えました。蝶のエーダインは、王宮から追い払われ、嵐によって吹き流されます。1エーダルという王女が飲もうとしていた盃の中に入り、飲み込ま

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深読み:大地の重荷

深読み:大地の重荷

インドの叙事詩神話(マハーバーラタなど)では、戦争の原因として、「増え過ぎた生き物たちによる大地の重荷」が挙げられます。
大地の女神が創造神ブラフマーに助けを求め、他の神々に化身して地上に溢れかえったアスラたちと戦い、大地の重荷を軽減するように命じました。これは、ギリシア神話でも類似しています。大地の女神がゼウスに嘆願したため、人間たち戦争を引き起こさせました。

深読み:個人の魂と宇宙

深読み:個人の魂と宇宙

ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」において、ワーグナーは真実の愛は、死によってはじめて完成するという深遠なテーマが扱われています。イゾルデは最後に、「大宇宙へと溶け込む」と歌います。
インド哲学でも、個人の魂(アートマン)が宇宙の最高原理ブラフマンと合流することが説かれています。仏教では、「梵我一如」と訳されています。

ISOLDE
おだやかに、静かに
あの方が微笑む、
目をにこやかに

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深読み:音と耳

深読み:音と耳

アルジュナの第二の通過儀礼(イニシエーション)では、音と姿が深く関係しています。二度目の放浪の旅の途中、ユディシュティラは、インドラ神のもとで武器を獲得するように命じました。ヒマラヤの森の中に入った際に、アルジュナは、まず法螺貝と太鼓の音が天空に鳴り響きにより、神の存在を悟ります。その森で苦行を続けるアルジュナは、キラータの姿をしたシヴァを見ました。

ある研究者によれば、神々の出現と音との関

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深読み:空井戸と地下道

深読み:空井戸と地下道

村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」で、主人公24歳の青年トオルが、水の涸れた井戸を降りていくシーンがあります。トオルは深い井戸の底の暗闇の中で、突然失踪した妻のクミコとの出会いから結婚までのいきさつ、クミコが堕胎したときの奇妙な体験などを振り返ります。井戸の底では、記憶がこれまでにない力で様々なイメージを呼び起こしていきます。会社での些細なトラブルまで、まるでそれが今起こっていることであるかのよう

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