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読書記録_本

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読書(漫画以外)の記録。 名前が覚えられないため、外国の本があまり読めない。まほろ市出身。 Instagramにも載せています。 https://www.instagram.co…
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#小説

『オズの魔法使い』ライアン・フランク・ボウム

『オズの魔法使い』ライアン・フランク・ボウム

YouTubeである歌を聞いたら、涙が出てきて嗚咽しだした。人生が八方塞がりの時に、聞いていた曲だった。どうした?完全に忘れていたのに、今は事態はよくなっているのに、自分の内側にあの時の気持ちが残っているらしい。

なぜこの曲を聞いたかというと、ミュージカル『Wicked』が映画化されるニュースを見たからだ。『Wicked』はサブスクなんてない頃、イギリス留学時にミュージカル好きの友達からファイル

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『ガラム・マサラ!』ラーフル・ライナ

『ガラム・マサラ!』ラーフル・ライナ

女と美容師の会話。

私、今つまらない本を読んでいて。読み進めるか、止めるか迷っていて。

面白いね、人生みたい。

1/3読んだところで気づいたんです。この本、愚痴ばっかりだってことに。半分まで読んでもそうで。主人公はチャイ屋の息子で父親に殴られながら、学校に行かずスパイスをすりつぶして暮らす。ひょんなことから教育を受ける機会に恵まれて、その後替え玉受験のビジネスを始める。今回のクライアントもバ

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『リスペクト』ブレイディみかこ

『リスペクト』ブレイディみかこ

生活に不満があるとして。それが行政や政治に大きな原因があるとして。私なら、そして日本に住む多くの人たちは、どうするだろう?おそらく仲間うちで愚痴を言い合ったり、SNSに不満をぶちまけるだけだろう。せめて、選挙で「ちゃんと」投票するくらいなんじゃないか。でも、この本に出てくるシングルマザーたちは、行動を起こした。

2014年にロンドンで実際に起きた占拠事件を元にした小説。2012年のロンドンオリン

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『正欲』朝井リョウ

『正欲』朝井リョウ

朝井リョウのエッセイとラジオが大好きだ。へなちょこで、くだらなくて、下世話な彼。そういえば彼の小説をちゃんと読んだことがない。友達が「今『正欲』を読んでいる」っていっていたっけ。

これは、私にとってすごい小説だった。とてもお勧めなので、これから読む人の邪魔にならないよう、極力あらすじには触れない。朝井リョウ、お腹弱くてアメリカでもトイレを詰まらせていたのに、あんた、すごいよ!!!心から賛美する。

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『とわの庭』小川糸

『とわの庭』小川糸

その日、私はとても疲れていて、甘やかで優しい何かに包まれたくて、書店にいた。『とわの庭』小川糸。小川さんなら夢のように軽く、ふわっと優しく包んでくれるだろうと、本をレジに持っていった。

話はそう簡単ではなかった。主人公は盲目の少女 十和子。母親と二人っきりで暮らしている。家の外には出たことがない。私からしたら人生のリセットボタンを押したくなるような環境で彼女は成長する。

そんな彼女が、再生して

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『両手にトカレフ』  ブレイディみかこ

『両手にトカレフ』 ブレイディみかこ

「この人の気持ち、わかる」と思ったら急激に惹かれていく。それが違う国の、100年前の人のことでも。

主人公はイギリスに住む14歳のミアで、母と弟と暮らしている。母の男は何度も変わる。もらったスマートフォンがあるものの、通信費を払えないので使えない。身長が伸びたけれど制服を買い替えられないのでスカートの丈は短くなる。生活保護費は母親のドラッグに消え、ミヤは弟との暮らしを必死で守っている。

そんな

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『FUTON』中島京子

『FUTON』中島京子

FUTON 寝るときにくるまると幸せになるあれだよね、おふとん。大好き。ふとんについての小説、ほっこりした話かな?と手に取った。

話はアメリカの大学から始まる。頭の悪いアジアンビューティである日系大学生とアメリカ人教授のラブアフェアから話が始まる。そして時に田山花袋の『蒲団』が混ざり、東京に住む100才近くのおじいちゃんのストーリーも絡まる。当初の自分の想定を外れ、アメリカから日本、現代から明治

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『推し、燃ゆ』宇佐見りん

『推し、燃ゆ』宇佐見りん

『推し、燃ゆ』巨星墜つ、城燃ゆ、といったどっしりとした語感のタイトル。「推し」はアイドルとか、応援している人のこと?「燃ゆ」はネットで炎上すること?内容が浮ついているようでギャップに不思議な気持ちになる。

タイトル通り、推しているアイドルが炎上する話。主人公は燃えたアイドルではなく、彼を推している女子高生あかり。推し歴は長く、インタビューでどのように彼が答えるか想定できるくらいだ。ラジオの書き起

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『奇跡』 林真理子

『奇跡』 林真理子

梨園の妻 博子と、世界的写真家でありアーティストと田原による不倫の恋。博子さんとママ友だった林真理子が筆をとる実名の話。世間に大きな不倫ゴシップ、梨園の騒動が出た後、予約待ちだったこの本が図書館からやってきた。さてさて。

文字も大きくそれほど分厚くない本で2,3時間で読めた。正直な感想は「すっごいさらっと書いてない?」というものだ。林さんの本を多く読んだわけではないけれど、あれだけ有名で野心にも

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『ピエタ』大島真寿美

『ピエタ』大島真寿美

ふと、今とは違う人生を思うことがある。私はこれで良かったのかな。結婚していたら、していなかったら、仕事を、子供を、あのとき。誰でもそう考えることがあるだろう。この本もしみじみと実に良くて、これから読む人の邪魔をしたくないから私はここで抽象的なことしか書かない。ある程度時間を重ねてきた女性なら、心に残るだろう一冊。小泉今日子さんが舞台化するそうで彼女のインタビューで知った小説。

ヴェネツィアのピエ

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『テスカトリポカ』佐藤究

『テスカトリポカ』佐藤究

血なまぐさいあらすじを知っていたら読まなかっただろう本作。「直木賞受賞、アステカ文明」と聞いて図書館で予約したら、ちょうど100人待ちだった。結論から言うと、とても面白かった。

ギャングに兄を見せしめとして殺され、メキシコの町を出た女。同じくメキシコの麻薬密売人として組織のトップとなり、追われることになった男、ある野望をもった日本人医師。彼らが入り組んで麻薬、暴力、ビジネスをしていく話。それにア

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『あちらにいる鬼』井上荒野

『あちらにいる鬼』井上荒野

瀬戸内寂聴の不倫相手の娘が書く、父と母と愛人。

瀬戸内寂聴さんが亡くなり、新聞で井上荒野さんの文章を読んだ。この追悼文によると、寂聴さんと彼女の父親が不倫をしていたらしい。さらに、そのことを題材にした小説を荒野さんは書いているらしい。一体どんな物語なのだろう。

話は、男の妻と愛人の両方の視点で交互に語られる。男女の仲になるきっかけ、男が語る嘘の数々、また別の女。

妻も愛人も、その後成長し小説

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『くまちゃん』角田光代

『くまちゃん』角田光代

「あの人が言っていたことはこういうことだったのか」と、その人と会わなくなってからわかることもある。公園の花見で知り合った新卒社会人の女の子と学生のような「くまちゃん」の恋。その後のくまちゃんの恋、その後の…と続くオムニバス小説。

それぞれの登場人物とエピソードがあまりにもしっくりしていて、没入して読んでしまった。一つ一つの章も見事だし、それらの繋がりもこれまた見事。今年読んだ本でいちばん「いい」

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『ライオンのおやつ』 小川糸

『ライオンのおやつ』 小川糸

人は死ぬ。私は今のところ、特に長生きをしたいと思っていない。痛いのと苦しいのが嫌だから、それさえなければいい。でも、実際に今、余命を突き付けられたら、間違いなく動揺し、嘆く。

私より若いにも関わらず、余命を告げられた主人公の雫さんは残りの日々を過ごすために瀬戸内海にあるホスピスへと向かう。このホスピスでは毎週日曜日に「ゲスト」がリクエストしたおやつが、そのエピソードとともにふるまわれる。

昨年

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