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(無料公開中)<第86回> 上司がヤバい人なので、転職したいです。

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こんにちは、安斎響市です。


今日いただいた質問は、下記のようなものです。

上司が発達障害(ASD)の疑惑があり、他部署との関係をぶち壊しまくっていて、尻拭いに疲れ、転職したいと考えています…。
実は前職の上司も発達障害(ADHD)の疑惑があり、マネジメントが全くできず、振り回されることに疲れて転職しました。

よく知らない人からすると、そんな人がなんで管理職をやってるの?と思われるかもしれませんが、二人ともとてもいい大学、会社出身で英語ペラペラ(一人は海外勤務経験が長いです)、難関資格をぽんぽんとってる方で、社内ではその経歴を買われているようです。

上司の発達障害疑惑を転職理由として説明していいものか、するとしたらどのように説明するかを悩んでいます。アドバイスあればお伺いできますと嬉しいです。


※この週刊連載「安斎響市の転職相談室」(毎週土曜日更新)は、マシュマロというツールで募集した匿名の質問に対して、安斎響市が、徹底的に真面目に答えていくという企画です。

転職活動の心構えやテクニック、面接や企業選びの具体的な対策方法などについて、毎週1問、このnote記事で徹底解説していきます。

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あの……

「上司の発達障害疑惑を転職理由として説明していいものか…」って、

良いわけないですよね?


最近ほんと、ASDだかADHDだかADSLだか知らないけど、なんでもかんでも「発達障害」のせいにしてる人が多すぎませんか?


しかも、今日の質問者の方は、上司が発達障害(ASD)疑惑で、前職の上司も発達障害(ADHD)疑惑だと言っていますが…

「疑惑」って何?

誰がどう調べたの? 診断書あるの?

と、ちょっとツッコミどころ多いです。


ただ、

  • 上司との人間関係が嫌になって会社を辞めたい

  • もう今の上司の下ではこれ以上働きたくない

という気持ちはすごく分かるので、「上司が理由で辞める場合」の転職活動の進め方について、今日は説明します。



「上司」を退職理由にした時点でアウト


とりあえず、「発達障害」の話は一旦置いておきましょう。

もし仮に「上司が発達障害である」という明確な証拠を持っていたとしても、それを自分の転職理由にする人は、絶対に面接では評価されません。

「上司に精神的な障害があるから辞めたい」だと、障害を持った人を差別するような印象を受けます。それどころか「上司に発達障害の疑惑(?)があるから辞めたい」だと、もはや上司ではなく自分の方がヤバい人だと思われるでしょう。そんなの、勝手な言いがかりか、妄想に過ぎないですからね。


自分自身の転職活動なのに、「他人の障害」の話をしてる時点で終わってますし、そうでなくても、「上司」が退職理由という時点で、面接では一発アウトです。ほとんどの場合、お見送りです。


もちろん、本当に酷い上司に当たってしまい、上司が嫌なので辞めたいという場合もあるでしょう。私にも、「退職を本格的に考えるきっかけは当時の上司だった」という苦い経験が過去にあります。

しかし、それを正直に面接で喋ってしまっては、評価が下がるだけです。仮に「上司が理由で辞める」のが事実だったとしても、面接では別の言い方で「退職理由」を話すべきです。


例えば、

  • 自分の上司を含め、会社全体にパワハラが蔓延していて、気持ちよく働ける職場ではないので、もう少し社員がお互いの個性を認め合って働ける職場に移りたい

  • 現職は、上司や同僚の雰囲気が「年功序列」「上の言うことに絶対服従」という環境の会社なので、みんなが意見を自由に発言して実行していけるような職場の方が自分に合っていると思った

このような言い方の方が、いくらかマシです。


つまり、「上司個人」の話ではなく、「会社全体」の話として退職理由を語るということです。


面接官の視点から言うと、「上司が精神的な障害を持っていること」「上司がパワハラ気質であること」「上司が問題ばかり起こしている仕事のできない人であること」と、「あなたが会社を辞めること」はまったくの無関係です。

上司個人に何か問題があるのなら、社内のさらに上の幹部社員か、もしくは人事部に報告すればいいと思います。転職活動の面接の場で訴えることではありません。

また、どうしても今の上司と仕事をしたくないのであれば、人事異動の希望を出せばいいのではないか? という印象を受けます。上司が別の人になれば即解決する問題なのであれば、「会社を辞めるほどの事情」として、あまり説得力がないです。

上司個人が「退職する理由」になってしまうと、面接官から、「この人は、たまたま上司との相性が悪いくらいで会社を辞める人なのか。ウチに入社しても、すぐ何か理由を付けて辞めてしまいそうだな…」と思われてしまいます。

どう転んでも、良い評価にはつながらないです。


言うとしても、「上司」一人の問題ではなく、「会社」全体として抱えている問題が原因で辞めるという説明にした方が良いです。



転職理由を「他人のせい」にした時点で、何をやっても失敗する


そもそもの話ですが、自分の仕事を取り巻く状況を「すべて上司のせい」にする人は、ビジネスパーソンとして決して評価されません。

上司と上手くやっていく能力も、重要なビジネススキルの一つです。

上司からスムーズに承認を取ってプロジェクトを前に進める能力も、重要なビジネススキルの一つです。


転職活動の面接の場で、「上司の問題点」を語るような人は、面接官から、「この人は、上司と上手く接するためのコミュ力が全然ないんだな」「この人は全部上司のせいにして、自分では何も行動できないんだな」という非常に悪い印象を持たれてしまいます。


もちろん、「自分の上司になった人が明らかにヤバい問題人物だった」ということも現実にあるでしょうけど、それは、面接官には伝わりません

ここが大事です。

面接官には、あなたの上司がどんな人なのかは、ほとんど伝わりません。

だって、知らない人ですからね。会ったことないし、一緒に仕事をしたこともないですからね。


伝わらないことを一生懸命語っても、意味がありません。

仮に「上司がヤバい人だった」のが事実だったとしても、面接官にはその事実確認ができないし、ただ単に、目の前の人が「面接の場で上司の愚痴を言うダメな人」に見えるだけです。


自分自身の転職活動なのに、会社を辞める理由を「他人のせい」にした時点でアウトです。



面接で「本音」を喋る必要はない


若干、身も蓋もないことを言ってしまうと、面接って、事実はどうでもいいんです。100%正直である必要はないんです。

重要なのは、面接官から、自分が「評価に値する人物」に見えるかどうかです。そうでなければ、内定は出ません。


「上司がヤバい人だった」というのは、仮に事実だったとしても、それを語ることは面接での評価にはつながりません。逆に、致命的な減点ポイントになってしまいます。


そもそも、志望理由や退職理由って、「本音を語る」必要はまったくないんです。

企業の人事部担当者や面接官だって、何とか入社してもらえるように、自分の会社のことをできる限り良く見せようとしているじゃないですか。会社の人間関係の問題とか、わざわざ入社前には教えてくれないじゃないですか。企業側だって、「本音」を全部包み隠さずに話しているわけではありません。

それと同じです。お互い様なんです。



例えばですけど、私が現在所属している企業に入社したとき、本音の話と、面接で話した内容は、このくらい違いました。

  • 本音の「志望理由」と「退職理由」

    1. 今の業界にはあまり将来性がないので、IT業界などに移りたい

    2. 今の会社にいてもこれ以上給料が上がらないので、転職で給料を大幅に上げたい

    3. 新しい上司がやたら偉そうでムカつくし、仕事の内容にもちょっと飽きてきた

    4. 本格的に副業を始めたいので、「副業可」の会社で働きたい

  • 面接で実際に話した「志望理由」と「退職理由」

    1. 今の業界にはあまり将来性がないので、IT業界などに移りたい

    2. 御社のビジネスモデルと企業姿勢に強い興味を持った

    3. 現職企業では明らかに足りていない、データドリブンな戦略策定・企画業務の経験を積みたい

    4. 自分の過去の経験を十分に活かしつつ、新たに必要なスキルを身に付けられる環境はここしかないと思った


1つ目だけは本音ですね。(笑)

現実はこんなもんだと思います。

面接って評価の場なので、「評価につながらないこと」「ネガティブなこと」「自分のスキル・経験と関係ないこと」を長々と話しても、あまり意味がありません。


面接では、本音を一生懸命伝えるのではなく、その回答を聞いて面接官が、

  • おッ! 面白い人材だな!

  • この業界のこと、よく分かってるじゃないか!

  • かなり稀少な経験を持っているんだな…

  • まさに、あの業務には打ってつけの人材だ!

などと、「自分がその会社で活躍できる根拠」になる情報だけを話せばいいんです。

それ以外の情報は、必要ありません。上司の発達障害の話なんて一切要りません。



正直言うと、面接官の方も、「本音の転職理由」なんて言われると困るんですよ。

面接官も、採用活動をやっている以上は、「できるだけ早く、良い人を見つけて採用したい」と常に願っています。しかし、適当によく考えず採用すると、後々自分のチームメンバーに迷惑がかかりますし、不適切な人材を採用してしまったら、自分の責任問題になってしまいます。

面接官が、採用面接の中で探しているのは「この人を雇うべき明確な根拠」「この人を採用しても問題ないと言える根拠」です。

それが見つけられないと、上司や人事部の偉い人から「この人、採用して本当に大丈夫?」と言われたときに説明ができませんし、後で「なんでこんな人、採用しちゃったの?」と言われても弁解の余地がありません。


面接官は、「あなたを雇うべき理由」を、短い面接時間の中で一つでも多く集めたいんです。



それなのに、

面接で「今の会社を退職しようとしている理由は何ですか?」と質問したときに、

  • 「上司が本当に酷い人で、問題ばかり起こしているんです」

  • 「数か月後に地方転勤を控えているんですが、正直行きたくないんです」

  • 「今の会社の給料だと暮らしていけなくて、給料を上げたいんです」

などの回答が返ってくると、

面接官は心の中で、「いや、そういうことじゃねぇよ!!」とツッコミを入れています。

「せっかく良い経験持ってる人材なのに、自分で減点ポイント作らないでくれよ…… 面接後のレポートにこの内容書いたら、さすがに採用承認降りないよ……」とガッカリしたりしています。(私はしょっちゅうです)



面接は、「自分が言いたいことを伝える場」ではなく、面接官に「自分を採用しても大丈夫な根拠」をスムーズに提供してあげる場だと捉えると、内定にグッと近づくことができると思います。


なぜ、「上司」中心の話をしてはいけないのか、なんとなく理解できましたよね。



おわりに


以上、「上司が理由で辞める場合」の転職活動の進め方のお話でした。

求職者側と面接官側、双方から考える転職面接の必勝法について、もっと詳しく知りたい方は、書籍『すごい面接の技術を読んでください。


発売からたった3ヵ月で重版出来、私が今まで出した本の中ではダントツのスピードで売れています! 本屋さんでもかなり良いところに置いていただいているので、「ビジネス書」「転職関連」コーナーで見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。

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以上、お相手は、安斎響市でした。


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