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日本に来る難民と入管行政の問題点:まとめ

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#社会保障

読順①日本に来る(いる)難民:入管行政の基本的な問題点について

日本にも「難民」が外国から来たり、日本で非正規滞在していたりします。

こうした外国人の出入国の管理をするのが、出入国在留管理庁(略称は入管庁)です。もともとは法務省の内部部局でしたが、平成31年に法務省の外局として改めて設置されました。

以前から、日本の入管行政については、国内外から人権侵害であるとたびたび批判されてきました。この入管行政について、問題点を整理したいと思います。

「難民」とは

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読順②「人数」で見る入管行政の問題

2019年ベースでの人数把握のため、データをまとめました(たまに2017年や2018年のデータですが…)。これで、この問題の規模感が分かると思います。

2020年からのコロナの影響で収容者数が減り、仮放免者が増えたそうですが、その実数のまとめはまた後ほどしようと思います。

申請者総数約1万人・認定率0.42%2019年に日本で難民認定申請をした人は10,375人、難民として認定されたのは44人

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読順④入管行政の最近の動き(報道)~2020年10月現在~

入管行政の最近の動きについて、まとめます。(報道の掲載された時期については順不同で記載しています)

強制収容トルコ人男性と国が和解 朝日新聞「入管が異例の「謝罪」」(有料記事 2020年10月1日掲載)https://www.asahi.com/articles/ASNB173LYN9ZPTIL00D.html

大阪入管と男性とで和解との報道。和解金を国が支払い、和解条項に謝罪が盛り込まれると

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noteを書こうと思ったきっかけ

NPO法人の時の思い(この記事は思い出話のような内容なので、興味のない人は読み飛ばしてください)

この「入管行政問題」に関心を抱いたのは、かれこれ5年ほど前。

当時、僕は都内の生活困窮者支援のNPO法人に勤めていて、WAM(独立行政法人医療福祉機構)からの委託事業を受けた生活困窮者向けのシェルター事業の担当者だったのですが、そのシェルター事業のことが難民支援協会の方のお耳にも入ったそうで、(簡

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読順③「時系列」で見る入管行政の問題

大きなトピックとなった事件、制度変更等を時系列的にまとめました。集められるだけの情報の中から取捨選択し、だいぶ簡略化しています。

昨年から今年にかけての動きについては、拙稿の過去記事「入管行政の最近の動き(報道)」を参考にしてください。https://note.com/kuro_refugee_jp/n/n76605e841dd5

また、入管行政・入管法の対象には、当然「技能実習制度」も含みま

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用語 まとめ①「全件収容主義」「第三国定住」「ノン・ルフールマン原則」

全件収容主義在留資格がない人や超過滞在者など、入管法に違反していれば、難民申請中といった個別の事情や、その人が逃げる可能性があるかどうかを考慮せずに収容してよいとする入管側の解釈を指す。

過大すぎる入管の「裁量」。政府からも法改定による見直し案も出されたこともあるが、現在も入管行政による「裁量」に任されている。

<根拠法>

a.収容令書による収容(30日以内、延長可):入管法第39条第1項、

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用語 まとめ②「出国命令」「退去強制令」「収容令」

「出国命令」(入管法24条の3、55条の2から6)

不法残留者が、帰国を希望して自ら入国管理局に出頭した場合は、以下の五つの要件をすべて満たすことを条件に、出国命令という制度により、入国管理局に収容されることなく出国することができる。

①速やかに出国することを希望して、自ら入国管理局に出頭したこと

②不法残留している場合にかぎること

③窃盗その他一定の罪により懲役刑等の判決を受けていないこ

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用語 まとめ③「一時庇護上陸」「仮滞在」

一時庇護上陸(入管法18条の2)

船舶や航空機の外国人乗員や外国人乗客に対し、在留資格が無くとも一定の条件を満たす場合に限り査証等を求めることなく、簡易な手続により一時的に上陸を認める許可のこと。

こ難民に該当する可能性があり、かつ、その外国人を一時的に上陸させることが相当であると思われるときに入国審査官が許可する。

しかし、一時庇護上陸許可数は著しく低迷しており、許可を得られる確率は低い。

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読順⑤ソーシャルワークとの関連(その1)社会福祉士(会)との関連

社会福祉士との関連

難民(アサイラムシーカーズ含む。以下略)支援について、支援者(団体)として挙げられるのが社会福祉士ですが、社会福祉士養成のカリキュラムに「難民」について取り上げられていないばかりか、外国人支援についての専門的な教育カリキュラム(例えば、「多文化ソーシャルワーク」のようなもの)はつくられていません。

しかし、社会福祉士には難民を含む外国人に対する支援に倫理的な責任があります。

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用語 まとめ④「アサイラム・シーカーズ」「在留特別許可」

「アサイラム・シーカーズ」自国を逃れて庇護や難民としての地位を求める人を、アサイラム・シーカーズ(Asylum seekers)と呼ぶことがある。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR: United Nations High Commissioner for Refugees)ではアサイラム・シーカーズを「国際的な保護を求めており、難民としての地位を求める申請に対する認定がなされる前の個人」と定義

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読順⑥ソーシャルワークとの関連②難民申請者に対するセーフティネットの脆弱性(その1)

法からの疎外・貧困に陥りやすい難民申請者日本での難民申請者(法的には在留資格未取得者)のセーフティネットは法的保障はほとんどなく、社会的な地位はおろか、就労も禁じられたり、生活保護を受給することもでないといった厳しい制約の中で生きていかざるをえません。さらに、日本に居続けられないからといって本国に戻れないという状況を抱えた難民は、国と国との間の空白(法の支配の外)に落ちてしまったような状態といえま

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最近の入管行政の動き(法改正)

法務省の改正案「法務省の「難民いじめ」が悪化する? 国連勧告を無視する入管法「改正」に懸念」(ライブドア・ニュース)
https://news.livedoor.com/article/detail/19679439/
この改正法案では、難民条約31条「避難国に不法にいる難民に刑罰を科してはならない」、32条「追放の禁止」、33条「追放・送還の禁止」、自由権規約9条(4)「裁判を受ける権利」に違反

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