【普通の話もおもしろく!】導入部の工夫で物語は劇的に面白くなる(2017年6月号特集)
ここでは、なんということもない話を面白く変えてしまうテクニックを紹介します。
ごく普通の日常を笑い話にする、面白くなかった話をリメイクするときに使えます。
持ち上げておいて一気に落とす
まったく同じ体験をしても、どう書くか、どのような組み立てにするかによって、話の面白さは全然違ってきます。
その実例として、ひとつ皆さんに練習問題をやってもらうとしましょう。
当博物館の訪問者数はあまりにも少ない。世界的にも稀有な歴史的遺構や遺物を数多く展示しているというのに、もったいないことです。
これでは面白くない。この話を面白くしてください。
当博物館は世界的にも大変貴重な、稀有とも言える歴史的遺構や遺物の宝庫である。なかでももっとも珍しいのは、訪問者である。
一種の自虐ネタですが、ニヤリとなりますね。では、もう一問。
劇評論家が演出家に嫌味を言う。「昨晩は君が演出した舞台を見たけれど、退屈で居眠りしちまったよ。おかげで夜は一睡もできなかったよ」
これでは単なる愚痴ですね。こちらも面白くしてください。
劇評論家が演出家に言った。
「昨晩は君の演出した舞台を見たせいで、夜は一睡もできなかったよ」
「そんなに興奮したかい」
「いやあ、単に劇場でぐっすり眠れたおかげなんだけどね」
落とすためには、その前にいったん持ち上げる。それがコツ。
次のなんでもない話を面白く作りかえて!
昨日、シャックリを直してやったんだ、一発で。八十を過ぎた女性なんだけどね、「オメデタですね」って言ってやったら、泡を食って。たちまちシャックリが止まっちゃったよ。ハハハハ。
主人公は、産婦人科医の亀田先生。彼のもとにシャックリが止まらないという人が来て、治してあげたわけです。
この自慢話を読んで、面白く書きかえてください。字数は600字程度とします。解答例は下記をご覧ください……
【模範解答】
導入部は物語の命。10パターンは考えよう
小説の導入部はとても大事です。文学作品の中には、ジェットコースターの最初のようにだらだらと上っていき、頂点から一気に加速して下降ものもあります。
しかし、普通の小説でそれをしたらいけません。読者は冒頭の数ページを読んだだけで立ち読みをやめてしまいますし、あとで面白くする筆力があるのなら、最初から面白くしてくれと思うでしょう。
では、面白くするコツは? ひとつはやはり謎です。これはどういう話なのか、どうなるのか、知的好奇心をそそれれば最高です。
ただ、ここで注意しなくてはいけないのは、隠しすぎること。読者は謎が好きですが、謎を謎のまま引っ張られるのは嫌いなのです。
「答えはまた明日」なんて言われたら、今教えてほしいと思ってしまいます。ことに、話がどこに進むのかがわからないのは最悪です。
となると、読み手の興味を惹き、ゴールを見せつつ、しかし、謎は配するわけですから、これは一筋縄ではいきません。
とりあえず、10パターンぐらい考えて、その中から最良のものを選べれば一番いいです。
倒叙にして謎を創出するという手も
導入部のパターンはいろいろありますが、今では定番になりつつあるのが、結末(またはその一つ前)を冒頭に持ってくる方法です。
結末を最初に書くということは、物語が進む方法を示すということです。その一方で、どうしてそんなことになったのかという疑問を残すこともできます。
いわゆる倒叙型ですが、一度試してみるのもいいでしょう。
Q:以下の話に、効果的な導入部を付けてください。
【模範解答】
上記の話は、直木賞作家・景山民夫のエッセイに書かれ、後にテレビ番組「世にも奇妙な物語」でドラマ化されたものをアレンジしたもの。
では、解答の例を。
特集「笑いを知れば小説はもっとうまくなる」
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※本記事は「公募ガイド2017年6月号」の記事を再掲載したものです。