『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』のレビュー第十二回を投稿します。
(各回をまとめたマガジンはこちらです。)
※ こちらのレビューは、非常に内容が濃い本書を私なりにまとめた「概要」です。
興味をお持ちになった方は、ご購入の上、本レビューを副読本的にお読みになることをお勧めします。
第3部 ストーリー設計の原則
11 シーンの分析
【テクストとサブテクスト】
ここで著者は、「含みのない、悪いシーン」の例として、以下のようなものを挙げています。
このシーンには、サブテクストが存在しておらず、もし俳優にこのシーンを演じてほしい依頼したら、「拒否される」「何らかのサブテクストを加えることを求められる」「俳優が自分でサブテクストを織りこむ」のいずれかが起きるだろうと、著者は言います。
「演じる」ということは決して「覚えたセリフをただ口にして、ト書きに書かれた通りに動く」ということではありません。
力のある俳優は、脚本からサブテクストをつかみ取り、その上で演技に臨みます。
これは、「自分が書いた脚本を人に演じてもらう」という経験を初めてしたとき以来、私も1作品ごとに実感しています。
さらに著者は、映画『チャイナタウン』から「テクストの下に、サブテクストが埋めこまれているシーン」の実例を挙げています。
著者は、脚本家が原稿にサブテクストを埋めこむことを「人生で実際に起こりうるように書くということだ」とも表現しています。
誰しも、「思考や感情」と「発言や行動」が常に完全に一致することなどあり得ません。
従って、「脚本家がテクストの下にサブテクストを埋めこむこと」は、「作品にリアリティを持たせること」「登場人物を、生身の人間らしく描くこと」なのだと捉えると、個人的には非常にしっくり来ます。
【シーンの分析の技法】
「五つのステップ」とは、以下のようなものだと著者は言います。
その上で著者は、映画『カサブランカ』を例に取って、各ステップの詳細を解説しています。
『カサブランカ』のあらすじは、以下の通りです。
上の「あらすじ」の翌日に、以下のような出来事が起きます。
これ以降のシーンを、著者は「五つのステップ」で分析していきます。
【ステップ1 葛藤を明確にする】
【ステップ2 最初の価値要素を確認する】
※「価値要素」という言葉は、これまでの章にも度々登場しており、以下のように解説されています。
「価値要素」の具体例は、「生/死」、「愛/憎」、「自由/隷属」、「真実/嘘」、「勇気/臆病」、「忠誠/裏切り」、「知恵/愚鈍」などです。
著者は、リックとイルザがリネンの露店で会話するシーンの「最初の価値要素」を以下のように分析しています。
【ステップ3 シーンをビートに分ける】
※「ビート」という言葉もこれまでの章に度々登場しており、以下のように解説されています。
この前提で著者は、リックとイルザがリネンの露店で会話するシーンを、以下のようにビートに分けています。
この後もさまざまなビートが展開して行き、シーンの終盤には以下のようになります。
【ステップ4 最後の価値要素を確認し、最初の価値要素と比較する】
ステップ2にある通り、このシーンでの「価値要素」は「愛」です。
【ステップ5 ビートをくわしく調べ、転換点を見つける】
欠陥があるシーンについては、これら「五つのステップ」で分析すれば問題点が浮き彫りになるというわけです。
☆「第3部ストーリー設計の原則 12 編成」に続く
****************
脚本、小説のオンラインコンサルを行っていますので、よろしければ。
****************
※このブックレビュー全体の目次は以下の通りです。
第1部 脚本家とストーリーの技術
(1)ストーリーの問題
第2部 ストーリーの諸要素
(2)構成の概略
(3)構成と設定
(4)構成とジャンル
(5)構成と登場人物
(6)構成と意味
第3部 ストーリー設計の原則
(7)前半 ストーリーの本質
(7)後半 ストーリーの本質
(8)契機事件
(9)幕の設計
(10)シーンの設計
(11)シーンの分析
(12)編成
(13)重大局面、クライマックス、解決
第4部 脚本の執筆
(14)敵対する力の原則
(15)明瞭化
(16)前半 問題と解決策
(16)後半 問題と解決策
(17)登場人物
(18)ことばの選択
(19)脚本家の創作術
Twitterアカウント @chiezo2222