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僕が子どもをやめた日
※不快な恋愛に関する話を含みます。苦手な方はお気をつけください。
「愛が人を救うなんて言ってたら一生救われないんだよ、無償の愛なんてもう手の届かないところにあるんだから」
広い部屋を空き瓶だらけにしている、ほろ酔いの自分と泥酔の彼。なぜこうなってしまったのかと後悔し始めていた。本当は店で飲むつもりだったが自分の家にして本当によかった、細身の自分では彼を抱えて家まで送るのは面倒だっただろう。目元
墨色を拭って、悲しみを洗って
雨に温もりがあるとしたら君のおかげで、雨の雫が冷えていればそれは僕のせいだ。
バスは先日少しの期待を胸に進んだ道を、今日は虚しさを纏って逆から辿っていく。
この路線のバスに乗ることはもうないだろう。
街並みも。人も。もう見ることはない。
帰る先とこの街とは離れていると思い込みたくて、来るとき快速バスには乗らなかった。そして帰りもその気持ちは変わらなかった。
視線を少し右に動かすと、窓ガラ
この灰は地図だったものです
学びとは自分の地図を広げていくものだと教えてくれたのは誰だったか。
賢くなって世の中や自分についての理解度が深まれば、容易く生きられる?
知識をつけて、思考力をつけて、そうして広げた地図は何を教えてくれる?
開いた地図の大きさに打ちひしがれて、真っ白な地図に怒りを覚えて、それでも足を休めるなと叱咤されて。
この世界の広さを理解できないほど愚かなら自分の小ささに怯えずに済んだのか。
この世
おれの呼吸を許してください
「おれはどうしようもなく死にたいと思っていますけど、そんなおれでも死んじゃいけない理由ってなんですか」
大学生活3年間を終えて、その美しさに魅了され、優しさを敬愛し、賢さに嫉妬し、もっとも尊敬している、卒業を控えたひとつ上の異性の先輩に投げかけるにはあまりに色気のない言葉だった。
彼女は少し伏し目がちに穏やかな呼吸を数度繰り返し、話し出す。
「君が死ぬと悲しむ人たちがいるからだよ」
「それ