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神話と物語から生きる知恵を汲む

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いくつかの本をテキストとして、神話、昔話、物語をユング心理学の視点から読んでいく勉強会の内容をなるべくわかりやすく文章化しています。
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記事一覧

ふたつの「時」を生きる クロノスとカイロス

ふたつの「時」を生きる クロノスとカイロス

先月の勉強会では「クロノスとカイロス」について話をしました。いずれもギリシャ神話が元になっている「時」に関する言葉です。

クロノスは、いわゆる私たちが時間と認識しているもの。生まれた瞬間からすべての人に等しく流れる時間であり、量的に計測できる時間を指します。

カイロスは、個人の心が感知する質的な時間を指します。ギリシャ神話では、カイロスは男性神であり、絶好の機会を支配する神と言われています。こ

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ライフサイクルの視点から読む人生後半の昔話~「笠地蔵」アニミズムの再生

ライフサイクルの視点から読む人生後半の昔話~「笠地蔵」アニミズムの再生

あけましておめでとうございます。

新しい年の始まり、今年の初noteは、「笠地蔵」のお話で始めたいと思います。

「笠地蔵」は誰もが子どもの頃どこかで触れたことのあるなじみ深い昔話かと思います。
気持ちがほっこりと温まるこのお話は私が大好きな昔話のひとつでもあり、以前、このお話をモチーフに貼り絵を作ったこともありました(冒頭の画像)。

「成熟のための心理童話」アラン・B.・チネン著(ユング派分

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私たちの心に棲む山姥とは⑥ エピローグ「内なる自然」としての山姥イメージ

私たちの心に棲む山姥とは⑥ エピローグ「内なる自然」としての山姥イメージ

5回にわたって、山姥のお話を取り上げてきました。これ以外にも山姥にまつわるお話はたくさんあり、まだまだ興味は尽きませんがとりあえず、今回はここで区切りとし、私なりに感想を書いてみます。

お話ごとに山姥は様々なユニークな顔をみせてくれました。

すべてのものを食い尽くすほどの貪欲さ、恐ろしさであったり、人の人生を有無を言わせず変えてしまうような気紛れさだったり、ときには危ないものから守ってくれたり

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私たちの心に棲む山姥とは④ 「米福と粟福」女性の心の発達と山姥の関わり

私たちの心に棲む山姥とは④ 「米福と粟福」女性の心の発達と山姥の関わり

今回の山姥シリーズ④は、米福と粟福という二人の姉妹の物語です。

山口素子著「山姥、山を降りる~現代に棲まう昔話」に取り上げられたこのお話は、女性の心の発達という視点で姉妹の対比が大変興味深く描かれています。少し長くなりますが、ご興味持たれた方は、ぜひお付き合いくださいませ。

あらすじ
米福と粟福という姉妹がおり母親と3人で暮らしていました。母親は米福にとっては継母であり、粟福にとって実母となり

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私たちの心に棲む山姥とは⑤「蛇婿入り」 女性の心の発達と姥皮の役割

私たちの心に棲む山姥とは⑤「蛇婿入り」 女性の心の発達と姥皮の役割

「山姥」シリーズ5回目は、「蛇婿入り」というお話です。今回も「山姥、山を降りる ~現代に棲まう昔話~」(山口素子著)をテキストにしながら女性の心の発達と山姥の関わりを見ていきたいと思います。少し長くなりますが、ご興味持たれた方はぜひお付き合いください。

あらすじ
昔、あるところの長者に3人の娘がいた。ある朝、田んぼの水を見に行くと水が干上がっていて、稲は干し草のようになっていた。長者は困って「こ

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私たちの心に棲む「山姥」とは③ 運命を司る女神としての山姥

私たちの心に棲む「山姥」とは③ 運命を司る女神としての山姥

今年初の久々のnoteです。相変わらずの亀のあゆみですが、今年もマイペースで書いていこうと思いますのでどうぞよろしくお願いします。

さて、山姥シリーズの3回目。2回までは下記をご覧いただけると幸いです。
     ↓            ↓             ↓

このnoteは、山口素子著「山姥、山を降りる~現代に棲まう昔話~」からカウンセリングルームの勉強会で取り上げた内容を、なるべ

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私たちの心に棲む「山姥」とは② 「飯食わぬ女房」

私たちの心に棲む「山姥」とは② 「飯食わぬ女房」

山姥シリーズの最初に登場するのは「飯食わぬ女房」です。「山姥、山を降りる」(山口素子著)を参考に、自分なりの考えも織り交ぜながら、このお話を見ていきたいと思います。
 
まずはどんなお話かというところから始めましょう。
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独り者の貧しい桶屋の男がおった。「どこかに飯食わぬ女がおったらいいなあ」と独り言を言った。するとその晩、見た

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私たちの心に棲む「山姥」とは   ➀         プロローグ

私たちの心に棲む「山姥」とは ➀ プロローグ

 
無料マガジン「神話と物語から生きる知恵を汲む」は、今回から新しいシリーズ「山姥編」に入ります。

このマガジンの概要をお知りになりたい方は以下をご覧ください。
    ↓            ↓             ↓

https://note.com/komorebi1231/n/n42ce062bdbc7

 
今までグリムやアンデルセンの童話、ギリシャ神話の女神など取り上げてきま

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女性の心の成長の物語「エロースとプシュケー」 ギリシャ神話編 番外編

女性の心の成長の物語「エロースとプシュケー」 ギリシャ神話編 番外編

多様性が謳われる時代、多様なあり方が認められるようになり、型にはまらない自由な生き方や生活スタイルを選ぶ女性も増えてきています。それはとても素敵なことです。

一方で、自由な生き方は、そんなに容易いことでもありません。自ら選ぶことには当然ながら、迷いや不安も生じるし、選んだ道を引き受ける勇気や覚悟も必要になるわけで、そのことにたじろいでしまうこともあるでしょう。

とくに、これだけ情報があふれる今

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愛と美と官能の女神アプロディーテ― ~変容と成長をもたらす錬金術師 ギリシャ神話編⑧

愛と美と官能の女神アプロディーテ― ~変容と成長をもたらす錬金術師 ギリシャ神話編⑧

ギリシャ神話の女神シリーズもいよいよ終盤。7番目に登場の女神はアプロディーテ―です。アプロディーテ―という名前にピンとこない人もヴィーナスと聞いたらお分かりになることでしょう(ローマ神話ウェヌスの英語呼び)。愛と美と官能の女神です。

アプロディーテ―は、今まで取り上げた自律的な処女神たち(アルテミス、アテーナ―、ヘスティア)、関係性重視の女神たち(ヘーラー、デーメテール、ベルセポネー)の両方の性

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乙女コレーから成長し冥界の導き手となったベルセポネー ~永遠の少女から老賢女への変容 ギリシャ神話編⑦

乙女コレーから成長し冥界の導き手となったベルセポネー ~永遠の少女から老賢女への変容 ギリシャ神話編⑦

無料マガジン「神話と物語から生きる知恵を汲む」では、現在「女はみんな女神」(ジーン・シノダ・ボーレン著、村本詔司+邦子訳)をテキストにして、私たちのカウンセリングルームで昨年度行った講座をまとめたものを順次アップしています。

概要については下記をご覧ください。

前々回から関係性重視の傷つきやすい女神たちを取り上げています。

前回は突然娘コレ―をさらわれて、深い悲しみの彷徨から、娘との再会を果

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大地と豊穣の女神デーメテール~母なるもの、喪失と抑うつからの再生 ギリシャ神話編⑥

大地と豊穣の女神デーメテール~母なるもの、喪失と抑うつからの再生 ギリシャ神話編⑥

ちょうど、今朝NHKの朝ドラ「カムカム エブリバディ」初代ヒロインの物語の総集編を見終わって、パソコンに向かっています。愛する人と結ばれたものの、夫は戦死してしまい、授かった娘を必死に守り育てようとするヒロインの姿は、これからnoteに書こうとしているデーメテールの姿と重なります。

守ろうとしても守り切れず、引き裂かれていく母娘。降りしきる雨のなかで絶望に陥る母の姿は、まさに愛娘ベルセポネーを奪

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結婚の女神ヘーラー ~ 絆を結び育てる力、妻であることの喜びと苦しみ ギリシャ神話編⑤

結婚の女神ヘーラー ~ 絆を結び育てる力、妻であることの喜びと苦しみ ギリシャ神話編⑤

 無料マガジン「神話と物語から生きる知恵を汲む」では、現在「女はみんな女神」(ジーン・シノダ・ボーレン著、村本詔司+邦子訳)をテキストにして、私たちのカウンセリングルームで昨年度行った講座をまとめたものを順次アップしています。

 しばらく投稿ができずに、ずいぶん間が空いてしまいました。初めてお読みになる方、以前読んでくださったけど、どんな内容だったっけとなってしまわれた方は、下記をお読みください

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炉の女神ヘスティア~内なる調和を保ち、静かに自分の中心にあり続ける老賢女  ギリシャ神話編④

炉の女神ヘスティア~内なる調和を保ち、静かに自分の中心にあり続ける老賢女 ギリシャ神話編④

この記事は無料マガジン「神話と物語から生きる知恵を汲む」シリーズのギリシャ神話編です。概要はギリシャ神話編①に書いてありますので、是非お読み頂ければと思います。

アルテミス、アテーナ―に続いて次の処女神はヘスティアです。オリュムポスの神々のなかでは、かなり地味な女神であり、ドラマティックなエピソードもほとんど語られていません。私自身も、「女はみんな女神」(ジーン・シノダ・ボーレン著)を読んで初め

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