ひだまりレモン

学校やカウンセリングルームなどで長年カウンセリングの仕事に携わっている臨床心理士、公認…

ひだまりレモン

学校やカウンセリングルームなどで長年カウンセリングの仕事に携わっている臨床心理士、公認心理師です。ユング心理学、老子のタオの世界から人生の学びを得ています。和太鼓、篠笛をこよなく愛し、ときどき土偶作りや貼り絵お絵描きをして遊んでいます。

マガジン

  • お絵描き創作帳

    ちょこっとお絵描きして、たまに描いた絵からお話が生まれてくることがあります。なにか生まれてきたらアップすることに。

  • 神話と物語から生きる知恵を汲む

    いくつかの本をテキストとして、神話、昔話、物語をユング心理学の視点から読んでいく勉強会の内容をなるべくわかりやすく文章化しています。

  • 心の雑記帳

    心にフツフツと浮かんできた考えや思いが、言葉として纏まってきたら書き留めておこうと思います。

最近の記事

創作絵本「あじさい色のきもち」

昨年、紫陽花を見て描いた絵からお話が生まれ、それをnoteにアップしました。その後、それをもう少し絵本仕立てにしてみたくなりました。 絵は全くのド素人なのですが、絵のプロの息子に透明水彩の使い方を教わり、試行錯誤しながら絵を描き仕上げることができました。 今までの人生で、こんなに夢中になにかをやったことってあったかしらと思うほど、それはそれは楽しかったです。 とても拙いけれど、せっかく生まれてきたのだから陽の目をみさせてあげたくて、初チャレンジの記念にnoteにアップさせ

    • ライフサイクルの視点から読む人生後半の昔話~「笠地蔵」アニミズムの再生

      あけましておめでとうございます。 新しい年の始まり、今年の初noteは、「笠地蔵」のお話で始めたいと思います。 「笠地蔵」は誰もが子どもの頃どこかで触れたことのあるなじみ深い昔話かと思います。 気持ちがほっこりと温まるこのお話は私が大好きな昔話のひとつでもあり、以前、このお話をモチーフに貼り絵を作ったこともありました(冒頭の画像)。 「成熟のための心理童話」アラン・B.・チネン著(ユング派分析家)にこのお話が取り上げられています。短いお話ながら、人のライフサイクルとそれ

      • 篠笛修行 ~シンプルであることの怖さと奥深さ~

        10年ほど前から、趣味で篠笛を習っている。篠笛は竹の筒に指孔と吹き孔がついただけのとてもシンプルな楽器だ。 音を出すのは、それほど難しくはないのだけれど、きれいな響きで演奏するとなると本当に難しい。10年経ってもまだまだである。 シンプルなだけに繊細な楽器。ちょっとしたことが即影響する。 以前、熱い味噌汁を飲んでいて、唇をちょっとだけやけどした。そんなに腫れたわけでもないのに、いつもとわずかに違う唇の感触で音が出なくなってしまったことがあった。 心持ちも、おおいに影響

        • 私たちの心に棲む山姥とは⑥ エピローグ「内なる自然」としての山姥イメージ

          5回にわたって、山姥のお話を取り上げてきました。これ以外にも山姥にまつわるお話はたくさんあり、まだまだ興味は尽きませんがとりあえず、今回はここで区切りとし、私なりに感想を書いてみます。 お話ごとに山姥は様々なユニークな顔をみせてくれました。 すべてのものを食い尽くすほどの貪欲さ、恐ろしさであったり、人の人生を有無を言わせず変えてしまうような気紛れさだったり、ときには危ないものから守ってくれたり、助けてくれもするけれど、その代わりに自分に対しての相当な覚悟も要求してくる厳し

        創作絵本「あじさい色のきもち」

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        • お絵描き創作帳
          3本
        • 神話と物語から生きる知恵を汲む
          23本
        • 心の雑記帳
          9本

        記事

          私たちの心に棲む山姥とは⑤「蛇婿入り」 女性の心の発達と姥皮の役割

          「山姥」シリーズ5回目は、「蛇婿入り」というお話です。今回も「山姥、山を降りる ~現代に棲まう昔話~」(山口素子著)をテキストにしながら女性の心の発達と山姥の関わりを見ていきたいと思います。少し長くなりますが、ご興味持たれた方はぜひお付き合いください。 あらすじ 昔、あるところの長者に3人の娘がいた。ある朝、田んぼの水を見に行くと水が干上がっていて、稲は干し草のようになっていた。長者は困って「この田に水くれた者さ、娘のどれだかひとりを嫁っこにするんだがなあ」と独り言を言った

          私たちの心に棲む山姥とは⑤「蛇婿入り」 女性の心の発達と姥皮の役割

          絵から生まれたお話「あじさい色の気持ち」

          週末に紫陽花を見に行きました。6000株の色とりどりの紫陽花にうっとり魅せられて絵を描いてみました。描いた絵を眺めていたら、こんなお話が生まれてきました。 トコちゃんは、自分の気持ちや思っていることを、ことばにするのが少し苦手な女の子です。 急に胸があつくなって、涙があふれたり、なんだか落ち着かなくてソワソワしたり、心の奥がチクッと痛くなり、かたまってしまうことがよくあるのです。 まわりのみんなが、どうしたの?大丈夫?と声をかけてくれるのですが、何も言えず、どうしようも

          絵から生まれたお話「あじさい色の気持ち」

          私たちの心に棲む山姥とは④ 「米福と粟福」女性の心の発達と山姥の関わり

          今回の山姥シリーズ④は、米福と粟福という二人の姉妹の物語です。 山口素子著「山姥、山を降りる~現代に棲まう昔話」に取り上げられたこのお話は、女性の心の発達という視点で姉妹の対比が大変興味深く描かれています。少し長くなりますが、ご興味持たれた方は、ぜひお付き合いくださいませ。 あらすじ 米福と粟福という姉妹がおり母親と3人で暮らしていました。母親は米福にとっては継母であり、粟福にとって実母となります。あるとき母は、米福には穴だらけの袋を,粟福には穴の開いていない袋を渡し、栗

          私たちの心に棲む山姥とは④ 「米福と粟福」女性の心の発達と山姥の関わり

          「記憶」について思うこと

          私たちは色々な記憶に彩られて生きている。 記憶は人を支えもすればときに苦しめもする。 認知症だった父は発症初期の頃、「頭に霞がかかったみたいなんだ」と、自分の記憶が薄れてあいまいになっていくさまを訴えた。以前の父からは考えられないような、頼りな気で不安な表情だった。家族の思い出話をすると「そうだったかね」とどこか困ったような心もとない笑みを浮かべていた。 記憶の欠損は、心の拠り所をなくすことであり、人を不安にさせるのだとそのとき強く思った。 父の元を訪れるときは、好物の

          「記憶」について思うこと

          私たちの心に棲む「山姥」とは③ 運命を司る女神としての山姥

          今年初の久々のnoteです。相変わらずの亀のあゆみですが、今年もマイペースで書いていこうと思いますのでどうぞよろしくお願いします。 さて、山姥シリーズの3回目。2回までは下記をご覧いただけると幸いです。      ↓ ↓ ↓ このnoteは、山口素子著「山姥、山を降りる~現代に棲まう昔話~」からカウンセリングルームの勉強会で取り上げた内容を、なるべくわかりやすく文章化して、その大切なエッセンスをお伝えしようという試みです。私な

          私たちの心に棲む「山姥」とは③ 運命を司る女神としての山姥

          私たちの心に棲む「山姥」とは② 「飯食わぬ女房」

          山姥シリーズの最初に登場するのは「飯食わぬ女房」です。「山姥、山を降りる」(山口素子著)を参考に、自分なりの考えも織り交ぜながら、このお話を見ていきたいと思います。 まずはどんなお話かというところから始めましょう。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 独り者の貧しい桶屋の男がおった。「どこかに飯食わぬ女がおったらいいなあ」と独り言を言った。するとその晩、見たこともない女が訪ねてきて、「飯食わぬ女房が欲しいといった桶屋さんですか? 私は飯

          私たちの心に棲む「山姥」とは② 「飯食わぬ女房」

          私たちの心に棲む「山姥」とは ➀ プロローグ

          無料マガジン「神話と物語から生きる知恵を汲む」は、今回から新しいシリーズ「山姥編」に入ります。 このマガジンの概要をお知りになりたい方は以下をご覧ください。     ↓ ↓ ↓ https://note.com/komorebi1231/n/n42ce062bdbc7 今までグリムやアンデルセンの童話、ギリシャ神話の女神など取り上げてきました。いずれも西洋もの。さて日本のお話は?となったとき、私の頭のなかにまず浮かん

          私たちの心に棲む「山姥」とは ➀ プロローグ

          心の羅針盤になる歌に出会う 

          先週、「エロースとプシュケー」のお話をアップしたばかり。 女性たちが自分の選んだ道を歩いて行くための「心の羅針盤」になるお話として紹介したのでした。 そんな矢先、運転中にラジオから流れてきた歌に心を掴まれてしまいました。 マライア・キャリーの「ヒーロー」!! 彼女の豊かで力強い歌声と共に、朧げながら耳に入ってくる歌詞が気になり、車を停めて、すぐに歌詞をググッてみたら、なんと、なんと、まさにこれだ!!と思ったのでした。 エロースとプシュケーのお話と見事にシンクロしてし

          心の羅針盤になる歌に出会う 

          女性の心の成長の物語「エロースとプシュケー」 ギリシャ神話編 番外編

          多様性が謳われる時代、多様なあり方が認められるようになり、型にはまらない自由な生き方や生活スタイルを選ぶ女性も増えてきています。それはとても素敵なことです。 一方で、自由な生き方は、そんなに容易いことでもありません。自ら選ぶことには当然ながら、迷いや不安も生じるし、選んだ道を引き受ける勇気や覚悟も必要になるわけで、そのことにたじろいでしまうこともあるでしょう。 とくに、これだけ情報があふれる今の時代、大海の荒波に揉まれる小舟のように、情報の波に翻弄され、自分を見失い、生き

          女性の心の成長の物語「エロースとプシュケー」 ギリシャ神話編 番外編

          愛と美と官能の女神アプロディーテ― ~変容と成長をもたらす錬金術師 ギリシャ神話編⑧

          ギリシャ神話の女神シリーズもいよいよ終盤。7番目に登場の女神はアプロディーテ―です。アプロディーテ―という名前にピンとこない人もヴィーナスと聞いたらお分かりになることでしょう(ローマ神話ウェヌスの英語呼び)。愛と美と官能の女神です。 アプロディーテ―は、今まで取り上げた自律的な処女神たち(アルテミス、アテーナ―、ヘスティア)、関係性重視の女神たち(ヘーラー、デーメテール、ベルセポネー)の両方の性質をいくらか持ちつつもどちらの女神グループにも属さない、独自の特徴を備えています

          愛と美と官能の女神アプロディーテ― ~変容と成長をもたらす錬金術師 ギリシャ神話編⑧

          「待つ」にまつわる心の風景

          春が来た! 今年は寒い冬だったから、春の暖かい陽射しはありがたく嬉しい。 月1回開催しているアートセラピーグループで春の絵を描いた。 描きながら、雪国で暮らしていた子ども時代のこと、春を待ちわびていた気持ちを思い出していた。 今年は日本海側、北海道はかつてないほどの豪雪に見舞われている。 私が暮らしていたのは新潟県上越。半世紀も前のこと・・・ 当時の記憶では、年越しのあたりから雪が本格的に積もった。朝起きると家のまわりには雪の壁ができていて薄暗かった。学校へ行くた

          「待つ」にまつわる心の風景

          乙女コレーから成長し冥界の導き手となったベルセポネー ~永遠の少女から老賢女への変容 ギリシャ神話編⑦

          無料マガジン「神話と物語から生きる知恵を汲む」では、現在「女はみんな女神」(ジーン・シノダ・ボーレン著、村本詔司+邦子訳)をテキストにして、私たちのカウンセリングルームで昨年度行った講座をまとめたものを順次アップしています。 概要については下記をご覧ください。 前々回から関係性重視の傷つきやすい女神たちを取り上げています。 前回は突然娘コレ―をさらわれて、深い悲しみの彷徨から、娘との再会を果たし、復活した母親元型としてのデーメテールのお話でした。 今回は、その娘コレ―

          乙女コレーから成長し冥界の導き手となったベルセポネー ~永遠の少女から老賢女への変容 ギリシャ神話編⑦