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ブレークスルー賞2023の解説:生命科学

そろそろノーベル賞の噂もささやかれる時期に近づきます。
もう1つ基礎科学分野で有名になってきた「ブレークスルー賞」に日本人が選ばれたニュースが飛び込んできました。

睡眠障害「ナルコレプシー」の原因が「オレキシン」という神経伝達物質が鍵を握っていることを突き止めました。
つまり、構造としては自己免疫(自身を攻撃する)による神経疾患であるということです。

この研究成果を通じて、その神経疾患への緩和を促す睡眠導入薬の開発などに貢献し、Emmanuel Mignot氏との共同受賞です。

この研究については、過去にも投稿しましたので、それ以上の深堀は割愛しますが、今回の受賞で一層と睡眠という謎に関心が集まりそうですね。

今回は、この研究以外で表彰されたブレークスルー賞のうち、生命科学Partだけを切り出して紹介してみたいと思います。主な参考サイトは下記の公式サイトです。


1.AIによるたんぱく質3次元解明
この話題は結構メディアでも取り上げられているので知っている方もいるかもしれません。
「AlphaFold2」開発に対してDemis Hassabis と John Jumperが受賞しました。
生命科学における最大の課題の 1 つであるタンパク質の3次元構造予測の問題を大幅に解決した AI システムの名称です。名前から想像の通り、囲碁の世界チャンピョンを破ったAlphaGoを開発したDeepMind社によって開発されました。
このアルゴリズムに基づく解析自体は誰でも使えるように公開され、今でもその解析は進んでいます

DeepMind社はこれ以外にもいろいろとAIを基礎・応用科学に適用しており、以前にも投稿したので引用しておきます。


2.細胞膜外の新しいメカニズムを解明

Anthony Hyman と Clifford Brangwynne氏による細胞の新しい機能を解明した研究に対して贈られました。
従来、細胞内のほとんどの活動は、細胞小器官 (膜に囲まれた特殊なサブユニット) で行われていると考えられていました。
しかし、 膜の非存在下でタンパク質と他の生体分子間の細胞相互作用を働かせる、新しい仕組みを発見しました。
水中で形成される油滴と同様に、相分離によって形成される動的な液体のような液滴を説明し、水細胞内部の分子の混乱から保護された一時的な構造を生成します。
彼らのこの発見以来、こういった細胞膜にない液体凝縮物が、シグナル伝達、細胞分裂、細胞核内の核小体の入れ子構造、およびDNAの調節に寄与していることが他の研究者によっても解明されていきました。

分子生物学と工学の垣根を超えた画期的な研究成果です。

下記サイトで、もう少しこの「細胞内の相分離」というイメージが湧きやすい説明があったので、公式説明動画と併せて紹介しておきます。


以上の3つの研究が受賞されました。
余談ながらブレークスルー賞には、各研究テーマに300万ドルが贈られます。
一方ノーベル賞は、研究1テーマに対して1000万スウェーデンクローナ(約1億2700万円)ですので3倍以上の規模となります。

創立者でもある下記のメンバーです。これを見ると何となく納得の(ノーベル賞を上回る)賞金総額ですね。
セルゲイ・ブリンとその夫人
マーク・ザッカーバーグとその夫人
ユーリ・ミルナーその夫人
ジャック・マーとその夫人

次回はその他の2023受賞を紹介します。

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