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最も近くて遠い「睡眠」のヒミツ

あまりにも身近すぎて疑わないことの1つは「睡眠」ではないでしょうか?
「なぜ眠るのか?」その根本的な質問に回答するのは難しいと思います。

そんな睡眠のメカニズムについて、わかりやすい専門家インタビューが載っていました。

要は、「眠気」は「ししおどし(あの日本庭園のなどで使う竹の水筒型シーソーです)」に似ていて、その水に相当するのが「オレキシン」という神経伝達物質とのことです。

「ししおどし」は分かりやすいたとえですね。

ただ、仕組みはわかりましたが「何故必要なのでしょうか?」こちらも、文中にある仮説を引用します。

なぜ、睡眠が必要なのかという問いに対して、昔から考えられていた学説の一つに、「シナプスの恒常性説」がある。この仮説は、覚醒状態が続いて高まったシナプスの結合強度が、睡眠を取ることにより元の状態に戻り、恒常性が維持されるというもの。

上記記事文中より

「シナプス」とは、我々の脳内情報処理を担う「ニューロン」をつなぐ結合部です。
脳はネットワーク型コンピュータなので、この接合度合が健全になれば脳の処理も正常ということです。(接合が多ければいいわけではないそう)
つまり、睡眠しないと我々の脳は疲弊してしまうので「脳の中のお掃除」の機能を担ってるのでしょう。
昔のWindowsコンピュータでは、断片化したHDDのデータを整理整頓する「デフラグ」という処理がありましたが、それに似てますね。

なんとなく当たり前な回答ではあります。ただ、コンピュータのSleepは単に省電力化ですが、もっと活発なお掃除をしているようです。

例えば、脳内の見える化でこんな研究成果が2021年に発表されています。

まず、睡眠には2種類の状態があり、上記文中をそのまま引用します。

急速眼球運動(rapid eye movement, REM)を伴う睡眠をレム睡眠、伴わない睡眠をノンレム(non-REM)睡眠と呼びます。これらの2つの睡眠は、脳波や眼電図によって区別できます。ヒトでは、総睡眠時間の約80%をノンレム睡眠が、約20%をレム睡眠が占めます。

上記記事内より

このレム睡眠を解析したところ、なんと脳内の毛細血管血流が「覚醒時よりも活発に活動している」ということが分かりました。
そこからの仮説ですが、成人においてレム睡眠の割合が少ないと、このような活発な物質交換が行われず、脳の機能低下や老化が進み、認知症のリスクが高まる可能性があるとのことです。

下記の書籍でも同じく、レム睡眠時に脳内のお掃除について分かりやすく解説されています。

書籍内の最後に、興味深い「問い」があります。以下引用します。

「なぜ眠るのか」という問いは、(1)「なぜ眠る必要があるのか」という問いであるとともに、(2)「なぜ眠気を感じるのか」という問いでもある。実は両者の本質は全く異なる。どちらも脳にまつわることだからこの両者を混同しがちだが、これらは分けて考える必要があるのだ。

「睡眠の科学」より

これはとても考えさせられる表現でした。
「睡眠」に限らずどの問題でもそうですが、「なぜ」はもう少し構造化させないといけませんね。
科学者の思考がうかがえてとても興味深いです。

冒頭の記事でも、まだ睡眠で分かっているのは2・3割程度とのことですが、神経科学の発展が睡眠を分子レベルで解明しつつあるのはとても爽快です。

枕を高くしてこれからの睡眠科学の成果を待とうと思います。

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