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#石田剛太
『秋の恋』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年10月19日(再放送:10月23日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
女「夏は男を少年に戻し、女を大人にする」
ジャックローズを口して彼女はそう言った。
女「そう思わない?」
彼女の唇はまるでジャックローズで染められたように真紅だった。
女「夏の恋がすぐに終わる理由、分かる?」
男「ひと夏の恋ってやつだね」
女「なぜ夏は恋をしたくなるか。それはみんな薄着だからよ」
男「僕らは肌色に恋をするってこと?」
女「あながち間違いではないわね。薄着だと相手の体型が分か
『告白の瞬間』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年10月12日(再放送:10月16日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
(本作は4月27日放送分「仲良くなりたい」、9月21日放送分「告白のタイミング」の続編になる第3話です)
ゼミで一緒のあの娘に僕は恋をしている。
黒いショートボブの髪色はいつの間にかブルーアッシュになっていた。
彼女の髪は会うたびにころころ変わる。
少し目尻の下がった大きな瞳にしっかりした眉毛。
きれいに真っ直ぐ伸びた鼻筋に控えめな小さな鼻。
薄い上唇に反してぷっくりとした下唇。
端っこは常に
『テキーラの香り』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年10月5日(再放送:10月9日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
彼女と別れた9月、
僕はスマホに入っている彼女の写真を全て消去した。
(バーにて ♪フランクシナトラのSeptember in the Rainが流れている)
バーのカウンターに座ってバーボンを飲みながら、
10月になってからも忘れられない彼女との思い出を、
記憶からも消去しようとしていた。
男「マスター、もう一杯」
マスター「同じもので?」
男「ああ」
飲んでいるバーボンがアーリータイム
『山と海と君と』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年9月28日(再放送:10月2日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
「言うべきだよ、はっきり好きだってね」
山頂で僕の友人ははっきりそう言った。
「やっぱりそうかなあ」
「当然さ」
彼の言葉はいつも端的だ。
「多分、分かってると思うんだ、彼女も僕の気持ちを」
「そうかもしれない」
僕は友人に誘われて山に登った。
彼はよく一人でも山に登っている。
彼と山に登るのは初めてだった。
その山の頂上からは海が見えた。
頂上まで登って綺麗な海を眺めながら、彼の淹れて
『猫と彼女』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年9月7日(RE:9月11日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
夜中に一人、部屋でボウモアをロックで飲んでいると飼い猫が話しかけてきた。
猫「最近彼女来ないね」
やれやれ。
このシングルモルトは40度もあるんだ。5杯も飲めば猫が話しかけてきてもおかしくない。
猫「どうして彼女は来なくなったんだい?」
猫は大きな目をしてこっちを見ていた。
「君にまだ言ってなかったね。彼女とはもう終わったんだ」
僕は猫に伝えた。
猫は悲しい顔をした。
猫「つまり彼女
『夏の終わり』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年8月31日(RE:9月4日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
9月。
この時期になると、夏が終わっていくのが惜しくなっていく。
真夏日が続いた8月は早く秋になってくれと思っていたのに。
今年は彼女と一緒に夏らしい夏を過ごすことができた。
一緒に海へ行き、ビアガーデンに行き、浴衣を来て夏祭りへ、そして花火大会へも行った。
どの思い出も彼女の笑顔で溢れている。
そんなことをスマホで撮った写真を見返しながら考えている。
ふと、彼女はこの夏は楽しかったのだろうかと
『君とシェア』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年8月24日(RE:8月28日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
「ねえこれ借りていい?」
彼女は僕のラルフローレンの白いシャツを掲げてそう言った。
「もちろん。じゅあ君のこれ今日使ってもいいかい?」
僕は彼女のLLbeanのトートバッグを掲げてそう言った。
「どうぞ~」
僕と彼女はルームシェアをしている。
ただシェアするのはルームだけじゃなくなってきている。
「えー何このオーバーオール、買ったの?かわいいじゃん」
「うん、オーバーオール欲しくてさ」
『プールのあとに』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年8月17日(RE:8月21日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
仕事を終えジムに行きプールでひと泳ぎしたあと、僕は必ずバーに行く。
そして一杯目に必ずビールを頼む。
「ぷはーうまい」
自然と声が漏れる。
「ふふふ、ごめんなさい。あんまりおいしそうなんで」
「いやあ、これは失礼」
「コマーシャルかと思っちゃった」
「これだけ毎日暑いと、思わず声が漏れ出ちゃいました」
「いえいえ、私も少し前に同じ声を出しましたから」
と言って彼女は空になったビールグラス
『フローズンダイキリに必要なもの』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年8月10日(RE:8月14日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
「フローズンダイキリが飲みたい」
彼女のその言葉を聞いて夏が来たことを僕は知る。
夏になるとどうしても飲みたくなるカクテルがある。
フローズンダイキリだ。
ラムとライムジュースに砂糖を少し混ぜて作るショートカクテル。
それにクラッシュドアイスをミキサーに一緒に入れてシャーベット状にしたのが、フローズンダイキリだ。
「夏になると私はフローズンダイキリを飲まなきゃならないの。そう決まってるの」
『初デート』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年8月3日(RE:8月7日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
(※本作品は2021年8月31日で閉館のイムズ Inter Media Station IMSに感謝とリスペクトをこめて作成)
「じゃあ、待ち合わせはイムズ前で」
「明日がとても楽しみだわ」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
少しの間。
「切らないの?」
「あなたから切って」
「じゃあ、せーので切ろう」
「そうしましょ」
「せーの」
「いや切ってないじゃないか笑」
「あなただっ
『バルコニーからの眺め』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年7月27日(RE:7月31日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
「はい」
「ちょっと冷たいよ!」
「キンキンに冷えてるでしょ」
彼女はいたずらっぽく僕の頬に缶ビールを押し付けた。
(缶ビールを開ける音が2回なる)
「かんぱーい」
「んーおいしい!」
バルコニーのデッキチェアに座って僕らは緑の缶ビールを飲んだ。
彼女はいつも緑の缶ビールだった。
「うん、ビール飲んでるって感じする」
そう言って今度は自分の頬に缶ビールを押しあてた。
その日はとて
『彼女のヒント』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年7月20日(RE:7月24日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
それは数日前のデートの別れ際だった。
「ねえ、今夜の私、何か気付かなかった?」
「え?」
「私、ヘアーをカットしたのよ」
「あああ」
「さよなら」
彼女は僕に背を向けて歩き始めた。
「あの、気付いていたよ」
僕の言葉は彼女の背中に当たって道端に落っこちた。
僕は少しエゴイストになっていたようだ。
久しぶりの外での食事。
それだけで少し特別な気持ちになっていた。
彼女の些細な変化に気付かな
『コーヒーの香り』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年6月29日(RE:7月3日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
鮮やかなライトブルーの電動コーヒーミルに淡い焦げ茶色のコーヒー豆を入れて、僕はスイッチを押した。
ローマ字でカリタと書かれた文字が震えながらウィーンという音とともに中粗挽きになった豆がちょうど二杯分出て来た。
朝にコーヒーを淹れるのは僕の役割だ。
彼女はオープンキッチンの前に立って焦げ目のついたトーストに何やらいろいろ乗っけている。
バターを塗ってプレーンオムレツを置き、その上に塩揉みした
『角田輝夫の運命の女性』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年6月22日オンエア分ラジオドラマ原稿)
ああ、恋がしたい!無償に恋がしたい!素敵な女性と恋に落ちたいぃ~!
・・・冒頭からごめんなさい。これが今の、私の心の叫びです。私の仕事場は男ばかりで、女の子との出会いなんてありません。だから女性と恋するチャンスが無いのです。かといってマッチングアプリとか、どうもやる気になれないし、キャバクラとかにも行く気にはなれない・・・。このまま一生女の子と出会わないんじゃないか?そんな不安が毎日押し寄せてき