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お国別『仕事の流儀』 | コンテクストの違いが生む、それぞれの仕事スタイル

こんにちは。最近落語をよく聞くようになりました。若い時分は言葉の難解さから敬遠していましたが、奥ゆかしいオハナシの世界はなかなか乙なモノです。

はじめに

この前、カイシャノ | Keikyさんのnoteを拝読しました。内容は『職場の若者vsオジサン 〜ローコンテクストvsハイコンテクスト〜』です。

空気を読まない若者忖度が基本のオジサンとの間に起こる、世代間のミスコミュニケーションに関する考察と理解してます。サラリーマンの方にオススメです。

ハイコンテクストとは、コミュニケーションや意思疎通を図るときに、前提となる文脈(言語や価値観、考え方など)が非常に近い状態のこと。 民族性、経済力、文化度などが近い人が集まっている状態。 コミュニケーションの際に互いに相手の意図を察し合うことで、「以心伝心」でなんとなく通じてしまう環境や状況のこと。
ローコンテクストとは、コミュニケーションや意思疎通を図る際に前提となる文脈や価値観が少なく、より言語に依存してコミュニケーションが行われること。 「ローコンテクスト文化」や「ローコンテクストな社会」などとして使われる。

私にとって、落語は究極のハイコンテクストとの認識です。噺の面白さは聞き手によるところが大きく、言葉の意味も含めて予備知識が必要です。ユーモアやお笑い全般がそうなのかもしれません。

ハイコンテクストローコンテクストは、異文化コミュニケーションの研修などで毎度毎度触れられる内容です。

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『空気を読む』は昭和の日本人の宿命か

日本人は空気を読む』とか『阿吽の呼吸が大切』とか言われます。これはハイコンテクストならではの行動になります。こういった例は、日本と外国におけるコミュニケーション方法の違いを説明するためによく用いられる印象です。

また、Keikyさんのnoteに書かれた通り、日本人どうし、特に世代間でもこの『コンテクスト=空気を読むかどうか』の違いからミスコミュニケーションが発生します。『最近の若いものは言われた事しかしない』という発言はその典型だと思ってます。詳しくはKeikyさんのnoteをご覧ください。

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『空気を読む』文化は意外と根が深い

前述の日本と外国とでのコンテクストの違いは、単にコミュニケーションに留まらないと思っています。日本vs海外での仕事面においても、いろいろな部分に絡んでいる印象です。

私が仕事上付き合いのあるのはドイツの部署なんですが、ドイツは特にローコンテクストのようです。一方、我々日本人は究極のハイコンテクスト文化、つまり対極に位置します。

前置きが長くなりましたが、このコンテクストの違いがどこから来ていて、仕事上どんな場面に影響しているのか、について少し考えてみました。この場を借りてご紹介させていただきます。

ここから展開する考察は完全なる私見です。やや偏見に満ちてるかもしれませんが暫しお付き合い頂ければと思います。

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文化と思考のガラパゴス、極東日本

以前受けた研修資料の中に、外国人向けに『日本人の思考』を説明するためのスライドを見つけました。本音とか建前とか沈黙の意味とかがツラツラと説明してありました。その中にこんな問題が。

アメリカ人はローコンテクストと言われていますが、その理由はなんでしょう?

私なりの回答ですが、アメリカは
・人種のサラダボール、異なる文化の人だらけ
・文化が違えば、思考が違う場合も
・よって自ら意思表示しないと周りから理解されない
・故に、ローコンテクストとなる

この逆が日本となります。つまり、文化が同じ人々がマジョリティとなるため、いちいち説明しなくても空気を読んで忖度できる。ジャパニーズスタイルはそんな仕上がりになってます。我々にとってはそれが当たり前かもしれませんが、文化が違えば説明が必要なんです。

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仕事におけるコンテクストの違い

以上のようなコミュニケーション上のコンテクストの違いから派生して、役割分担意思決定におけるスタイルの違いについて私の考えを紹介します。ちょっと長くなりましたので、先にまとめました。

《まとめ》
ハイコンテクスト(日本スタイル)では、
・役割以上のパフォーマンスが求められる
・意思決定は下意上達で、現場が会社を回している

ローコンテクスト(ドイツスタイル)では、
・役割を超える仕事をしたら怒られる
・意思決定は上意下達で、管理職は優秀

日本=島国という地理的特徴から上記のような違いが生まれたんだとすれば凄く面白いなぁと思ってます。が、これってワタシだけでしょうか。笑 個人的には、異なる文化へ晒される度合いや頻度の違いによって、コミュニケーション方法だけでなく、仕事の仕組みそのものまで違ってくるのが大変興味深いと思ってます😃

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言われた事しかやらない 〜役割分担〜

先程、『最近の若い者は言われたことしかやらない』という発言の背景にある考え方ハイコンテクストと言いました。

日本では担当外の仕事をこなしたり、指示された事以上に自分で考えて行動することは『あるべき姿』とされています。しかし、ドイツの場合はだいぶ事情が異なるようです。

ドイツにいる上司との面談で『こういう場合、私はどうやって対処すれば良いか』と聞いたところ、『それはアナタの仕事ではないからやるべきではない』と返ってきました。これは日本人と異なる反応です。

海外の部署にはジョブディスクリプション(職務記述書)というモノがあるようです。

ジョブ・ディスクリプションは、職務内容を記載した雇用管理文書である。労働者の職務を明確化することによって「働きの度合い」と「賃金」を繋げる役割がある。成果主義、成果給を導入する際には不可欠なものであり、企業の人事考課方針などに使用される。

スタッフに求められることは全てジョブディスクリプションに書かれた通りであり、これ以外のことは求められていません。というか、やってはいけないとの理解です。大いなる混乱が生まれます。

一方、日本の場合はこれに当たる書類は見せられたことがありません。チーム毎やポジション毎に役割や責任範囲は決まっているものの、範囲は曖昧臨機応変に対応することが暗に求められます

この臨機応変さは、ドイツの部署では、マネージャーに求められるようです。マネージャーの『マネージ』は『何とかする』の意味ですし、チームを回すためにスタッフ以上に『何とかしてる』印象があります。

このように、役割分担についてもハイコンテクストとローコンテクストでスタイルの違いがあると思ってます。

ローコンテクストの文化では、職務として『説明しなければ実行できない』=『説明されたこと以外はやるべきではない』との前提があると思ってます。文化が異なれば『空気を読んで』『忖度する』といった仕事のスタイルは、時にご法度となるわけですね。

《まとめ》
ハイコンテクスト(日本スタイル)では、
役割以上のパフォーマンスが求められる

ローコンテクスト(ドイツスタイル)では、
役割を超える仕事をしたら怒られる

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現場の声を会社の活力に 〜意思決定〜

先程の役割分担では、コンテクストの違いにより担当外の仕事に対する姿勢が異なってくると述べました。

この役割分担に対する考え方の違い意思決定にも影響していると考えています。

日本では、『現場の声が会社の危機を救った』みたいな話が美談として語られる印象を持ってますが、ローコンテクストの職場では事情が違うようです。

以前研修で、『意思決定のスタイルは、ハイコンテクストはボトムアップ、ローコンテクストはトップダウン』と習いました。日本スタイルはボトムアップ、つまり現場レベルから意思決定に働きかけをしているという事になります。初めは違和感があったんですが、役割分担に対する姿勢の違いを踏まえると何となく腑に落ちました。

ローコンテクストの職場は縦割りです。アナタの仕事はアナタの仕事。したがって意思表示はお偉いさんの仕事

一方、ハイコンテクストの職場では役割以上のパフォーマンスを求められます。その結果、何かしらの改善提案をしたり新しい仕組みを取り入れたりと働きかける(やらされる)わけです。当然、お偉いさんが承認することで意思決定となりますが、内容を考えて行動しているのは我々スタッフになります。

トヨタのカイゼンが一時期もてはやされましたが、ローコンテクスト文化ではあり得ないことなのかもしれません。

ちなみにこれは完全な私見なんですが、ドイツの部署の管理職は優秀揃い日本の管理職はピンキリの印象です。逆に、日本のスタッフは意外と優秀ドイツの部署ではピンキリ、という偏見(?)を持っています。

日本では、実行上のスタッフの裁量と自由度が比較的高く、スタッフが自分で考えて勝手に行動する(できる)ため管理職がポンコツでも組織は機能します。一方、ドイツの部署では、スタッフの役割分担が明確なためマニュアルやツールの整備が進んでおり、アウトプットの質に個人差が出にくくなる印象があります。その分、想定外の事態ではスタッフの小回りが効かず、管理職の的確なサポートが要となるわけです。これはあくまで私が知ってる範囲で、私が感じた事に過ぎませんが。

ハイコンテクスト(日本スタイル)では、
下意上達で、現場が会社を回している

ローコンテクスト(ドイツスタイル)では、
上意下達で、管理職が優秀

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さいごに

《まとめ》
ハイコンテクスト(日本スタイル)では、
・役割以上のパフォーマンスが求められる
・意思決定は下意上達で、現場が会社を回している

ローコンテクスト(ドイツスタイル)では、
・役割を超える仕事をしたら怒られる
・意思決定は上意下達で、管理職は優秀

個人の考え方を尊重する時代の流れと逆行して、ナショナリティでガッツリ型にはめた説明となっちゃいました。笑 ステレオタイプは良くないのかも知れないですが、ワタシはまずはこれを起点として考えてます。勿論、個々人で考え方は異なりますので上記が全てではありません。

ハイコンテクストとローコンテクストはどちらが良いかとかではありません。また、なるべくしてなったんだと思ってます。

双方で仕事における考え方ややり方の違いは当然生じます。お互いが批判することなく、思考の違いの分岐点に歩み寄る必要があるのかなと思ってます。それではまた。

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