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#122 リエゾン学級経営 第4章「特別支援理解教育とは? 学級担任が新年度に着手すべき4つの取り組み」

リエゾン学級経営とは?

中教審答申「令和の日本型学校教育」実現への課題

令和の日本型学校教育は、2020年代を通じて目指すべき学校教育の姿として、中央教育審議会において答申されたものです。
この答申では、全ての子供たちの可能性を引き出すために、個別最適な学びと協働的な学びの実現を重視しています。

個別最適な学びとは、一人ひとりの子供の興味・関心や学習状況に応じて、最適な学びを提供することです。
そのためには、子供の理解度や習熟度を把握し、その結果に応じて指導内容や方法を調整することが重要です。
また、子供自身が自分の学びを主体的に考え、計画・実行・評価できるような環境を整えることも大切です。

協働的な学びとは、子供同士が協力しながら学び合うものです。
そのためには、子供同士が協力し合うためのルールやマナーを身に付け、お互いに尊重し合いながら学び合えるような環境を整えることが重要です。
また、子供たちが主体的に学び合うことができるような課題や活動を設定することも大切です。

令和の日本型学校教育が目指す個別最適な学びと協働的な学びは、いずれも子供たちの主体性を育むことにつながります。
子供たちが自分の興味・関心や学習状況に応じて学び、お互いに協力し合いながら学び合うことで、自ら考え、行動できる力を身に付けることができるのです。

個別最適な学びは、「個に応じた指導」の理念を具体化するものとして位置づけられています。
支援を必要とする少数派の子どもたちは、診断の有無にかかわらず、さまざまな特性や課題を有しています。
そのため、一人ひとりの特性や課題に応じて、学習内容や方法を調整することが重要です。

協働的な学びは、「共生社会」の実現に向けた重要な取り組みとして位置づけられています。
支援を必要とする少数派の子どもたちは、多数派の子どもたちと共に学校生活を送ることになります。
したがって、多数派と少数派が互いに寄り添い合いながら学び合っていかない限り、共生社会の理解や共感力を育むことはできません。

この個別最適な学び・協働的な学びの実現の障壁となる課題が2つあります。
①特別支援教育のスキルアップ。
②多数派と少数派が互いに寄り添いあい、共感しながら学び合うことのできる学級づくり。

この2つを解消しない限り、令和の日本型学校教育は実現は絶対にできないと確信しています。

この2点を解消する学級経営手法が、リエゾン学級経営です。

このような現状や課題をふまえ、多様性を尊重し共に学び成長する新たな教育アプローチとしてリエゾン学級経営を考案しました。

この考え方のベースとなっているのは、多数派が使う「ふつう」という言葉の違和感からです。

多数派が使う「ふつう」には、どんな意味があるのでしょう?
「みんなと同じ」
「多くの人と同じ」
ではないでしょうか?

「ふつう、チャイム鳴ったら座るよね」
「ふつう、発言したいときは手を挙げるよね」
といったような使い方を、多数派の人達は無意識にしています。

そして、みんなと同じであることを「ふつう」としてしまったのが、日本の教育システムです。

ここで多くの人が使う「ふつう」には、おそらく悪意はありません。
「ふつう」であることで居場所を確保し、みんなと同じという安心感を抱きたいだけなのです。
ですが、結果的にみんなと同じようにできない子たちを少数派として追い込み、居場所をなくしていったことも事実です。
同調圧力という言葉は、まさにこの多数派優位の社会の状況が生み出した負の遺産と言えます。

日本は学制以降、一斉指導スタイルを原則として指導をしてきたため、一人の教師が、同じ課題を40人近くの子どもに教えてきました。

それゆえに、
「みんなと同じであること」が強要されてきた歴史があります。
それが積み重なって大きな負の財産となってしまいました。
令和時代の教育においては、この負の財産を払拭すべく、「ふつう」のパラダイム変換をしていかない限り教育の未来はありません。

「ふつう」という概念のパラダイム変換については↓をご覧ください。

リエゾン学級経営とは、
「少数派と多数派が互いに寄り添い合い、共に学び、クラス全員が成長するための教育的なアプローチのことです。」

※少数派とは学級で個別の支援を要する児童
※多数派とは個別の支援を必要としない児童

全員が多様性を尊重し、誰にとっても居心地のよい場、楽しく学びながら互いを認め合う学習環境を築き、目標に向かって努力しながら成長できることを目指します。

学級経営(ゴール設定)×心理的安全性(居場所づくり)×特別支援理解教育(多数派/保護者/職員への理解)=リエゾン学級経営

リエゾンとは、もともとフランス語からきた言葉です。
連携や結びつきを意味していて、医療現場でよく使われています。

これからの学級経営において、多数派と少数派の連携や保護者や校内外の人材との結びつきを強化し、互いの理解を深め合うことが必要不可欠であると感じ、

リエゾン学級経営と名付けました。

次の学習指導要領改訂では、特別支援教育の理解が一層求められる内容となることが予想されます。

そういう意味で、このリエゾン学級経営の理論は、令和時代における学級経営の基本となっていくはずです。

これまで
第1章:教室で困り感を示す子ども達が増加の原因
第2章:不登校児増加問題
第3章:誰にとっても居心地がよいクラスづくり

について説明してきました。

さて今回は、

第4章「特別支援理解教育について」です。

特別支援教育と、特別支援理解教育は似て非なる言葉です。

簡単に表すと以下のようになります。

特別支援教育の対象→少数派
特別支援理解教育対象→多数派

特別支援理解教育とは、多数派が少数派の子を理解し、寄り添うことができるようにすることです。

リエゾン学級経営を実践するためには、まず多数派工作をしなくてはいけません。
つまり、特別支援理解教育に着手するのです。

なぜなら、この理解教育こそが、リエゾン学級経営に必要不可欠なものだからです。
理解教育を怠たると、多数派優位の学級経営となり、少数派を追い詰めていきます。

特別支援理解教育を詳しく分けると以下の3つになります。
1.児童への理解教育
2.保護者への理解教育
3.職員への理解教育

1.児童への理解教育:
多数派が少数派に寄り添い、理解することで、共に学び合い、成長する環境を築くことができます。

具体的には、以下の4つを実践し、クラスづくりをしていく中で児童への理解教育を図ります。

失敗から学ぶ姿勢を育む: 間違いや失敗を恐れず、それらから学ぶ意識を育むこと。同調圧力を抑え、誰とでも自由な意見交換を奨励します。「おなじで~す」といった同調圧力につながる言葉は徹底的に排除する。

②違いを受け入れる: 互いの価値観や考え方を尊重し、多様な意見や視点を受け入れる心を育てる。「えっ?」という疑問から「あっ」という気付きのできる子を育てていく。


助け合いを奨励する: 友達の困り感の原因が何か考え、寄り添うことのできる子の育成。トラブル対処を絶好のチャンスと捉え、困り感に寄り添える子を増やしていく。

④嫉妬や妬みを排除する: 特別な支援をしている子に対して抱くずるいという感覚や、特別な個性をもつ子に対して抱くねたみの心を排除する。特別支援理解教育を新学期すぐに実施する。

リエゾン学級経営を実践するにあたって、この児童への理解教育が一番重要であることは間違いありません。

2.保護者への理解教育:
特別支援理解教育は、保護者への理解教育も欠かせません。
保護者への理解と協力が、学級内外での支援体制を強化します。
保護者会や学校だより、学年・学年だよりを通じて、特別支援教育についての情報を提供したり、学級経営方針について理解を図ったりしていきます。ICTを活用すれば、動画で学級の様子を詳細に伝えることや、双方向での連携も可能となります。
ただ、一番効果があるのはやはり、対面での話し合いです。
個人面談の準備は大変ですが、効果は絶大です。

3.職員の理解教育:
学校内の全職員が特別支援理解教育に対する理解を深めることも不可欠です。学級担任一人の力では、学級づくりはうまくいきません。
とはいえ、特別支援教育の理解があまりない先生も、残念ながらいるのが事実です。
全員が居心地よいと思えるクラスにするために努力していることは、担任だけでなく、全職員の共通理解の上、実践されなくてはなりません。
特に個別に支援が必要な子に対する声のかけ方や、対応方法は全職員が同じ対応でないといけません。

それができないと、担任の授業では落ち着いているのに、専科の授業や講師の授業では暴れてしまうといった現象が起きます。
全職員に特別支援理解教育が浸透していないことと、特別支援についての勉強不足、及び共通理解が図れていないことが原因です。

そうならないためには、特別支援コーディネーターが中心となり、異なる専門性、考え方を持つ職員同士であっても、同じ指導・支援を学校全体で実現できる仕組みづくりをしていかなければなりません。

特別支援理解教育は、多数派が少数派を理解し寄り添うことができるようになるために必要不可欠です。
この理解教育が実践されない限り、少数派の居場所はありませんし、全員の成長は見込めません。

特別支援理解教育は、リエゾン学級経営の中核ともいえます。
新年度にはまず、
失敗から学ぶ姿勢を育む
②違いを受け入れる
助け合いを奨励する
④嫉妬や妬みを排除する
この4つを着手して児童への理解教育を図ります。
さらに、保護者及び職員への理解教育も推進していくのです。

そうすれば、だれにとっても居心地がよいクラスができ、全員が成長できる環境が整います。

少数派を力で抑えこみ、多数派中心の学級経営をしてクラスが安定しているからといって、満足していてはいけません。
恥ずかしながら、なにを隠そう、若い頃の私です。

当然ながら少数派から大きな反発をもらったことがありました。
当然といえば当然の結果です。
少数派に寄り添わずに追い詰めたのですから。
今こうして振り返ってみると、なんて傲慢でひどいことしていたんだろうと反省しています…
お互いにとって大きなダメージでした。
そこで目が覚めたのです。
特別支援教育などほとんど関心がありませんでしたが、それ以降、本を読んだり、研修に参加するなど、必死に勉強しました。
そして20年の経験をもとに、このリエゾン学級経営を考案しました。

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一人でも多くの方がこのリエゾン学級経営に賛同し、実践していただけることを願います。
すべての子どもの幸せを祈って!

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