広瀬いくと(木俣はようやっとる)

中日ファン。 『中日新聞+』にて「発掘!B面ドラゴンズ史」連載中 https://p…

広瀬いくと(木俣はようやっとる)

中日ファン。 『中日新聞+』にて「発掘!B面ドラゴンズ史」連載中 https://plus.chunichi.co.jp/blog/hirose/ 『Re:minder』にて不定期掲載 https://reminder.top/profile/5731445468/?t=3

記事一覧

夏バテだよ

 広島でのゲーム終了後、中日は夜行バスで帰名。翌29日、いつもなら遠征明けの練習はベテラン組を休ませるのに、この日は高木守、木俣、さらにマーチン、ウィリアムの外国…

渋谷のありがたみ

「なんにも言うことあらへんで。殺生やがな」  ナイターに先んじて行われた阪神とヤクルトのデイゲーム。首位の阪神は6点を先制しながら古沢の乱調で逆転負けを喫した。…

ラストイニングの不覚

 前半戦を34勝27敗5分、首位阪神と1.5ゲーム差の2位で終えたドラゴンズ。悲願の優勝を射程圏内に捉えた好成績に見えるが、必ずしも前向きになれない理由がある。昨年も…

負けて、なお反骨

 勝ち運に見放されていた稲葉光雄が先月、約十ヶ月ぶりの白星を手にしたが、ある意味で稲葉よりも苦しい状態にあるのが巨人の高橋一三であろう。なにせ昨季は300イニング…

ツキに見放された星野仙一

 プロ野球 “夢の球宴” を彩るスター達の顔ぶれが決まった。今月20日から後楽園、西富、広島の3球場で計3試合が行われるオールスター戦。その出場選手の陣容が16日に発…

強いぞ、恐竜打線

 中日と大洋。共にチーム打率2割6分5厘を誇る攻撃的な打線を売りにするが、好投手の投げ合いになるとそう簡単に点が入らないものだ。  この日の両軍先発は三沢淳と平…

エース松岡の回帰

 今でこそ首位阪神を猛追する中日だが、つい一ヶ月前は故障者続出と先発陣の不調が重なり、出口の見えないトンネルの中でもがき苦しんでいた。あの時期、危機に頻したチー…

マサカリかついで1千本

 オールスターまで2週間弱。与那嶺監督はヤクルト、大洋、巨人とつづく残り9試合を「うまくいけんけれども、2勝1敗のペースでいけたら言うことない」とソロバンを弾い…

勝負の仙

「今日は勝負よ。仙でいく」  雨天中止から一夜明けた甲子園。普段は慎重派でめったに強気を表に出さない与那嶺監督だが、この日は並々ならぬ闘志を隠そうともしなかった…

雨天決行

 甲子園球場に大粒の雨が降りだしたのは試合開始まであと約1時間という頃だった。中止と決めこんでいた三塁ベンチの中日ナインにはすっかりお気楽ムードが漂い、星野仙に…

無我無心の境地

 日本列島の梅雨明けより一足早く明るい兆しが見え始めた中日。とりわけ阪神古沢を「あと一人」から沈め、翌日には若生をたった19球でノックアウトした打線の好調ぶりには…

夢のつづき

 この日の中日球場は観衆3万5千人、今季三度目の満員御礼にふくれ上がった。朝の時点で内野席5千枚、外野席1万3千枚が残っていた当日券もたちまち完売となった。前夜…

中日球場の奇跡

 5.5ゲーム差で迎えた首位阪神と2位中日の直接対決。ただし、その意味合いは両軍にとって大きく異なる。直近4勝1敗と好調を維持し、着々と土台を固めつつある阪神。か…

名手の不覚

 観客を沸かせるプレーも土台には反復練習がある。華やかな舞台で大歓声とスポットライトを浴びるプロ野球選手も、裏では地味で面白みのない練習を朝から晩まで気が遠くな…

ヒーローになり損ねた男

「もらったチャンスだもんね。一発出てりゃ楽勝だったからね」。試合後、大洋宮崎監督が振り返ったのは8回裏の自軍の攻撃のことだ。  大洋が2点リードで迎えたこのイニ…

別人になった金城

 軍隊にとっての上官命令と同じように、プロ野球の世界において監督の指示は絶対だと考えられている。監督が審判に「交代」を告げるためにベンチから腰を上げれば、たとえ…

夏バテだよ

夏バテだよ

 広島でのゲーム終了後、中日は夜行バスで帰名。翌29日、いつもなら遠征明けの練習はベテラン組を休ませるのに、この日は高木守、木俣、さらにマーチン、ウィリアムの外国人勢まで参加して全体練習を敢行した。

「まだ球宴中の休みボケでタイミングが合ってないから」と与那嶺監督。ここから10日間も続く地元・名古屋での9連戦で、なんとしても混戦から抜け出したいという決意がうかがえる。

 今季中日はロードで16

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渋谷のありがたみ

渋谷のありがたみ

「なんにも言うことあらへんで。殺生やがな」

 ナイターに先んじて行われた阪神とヤクルトのデイゲーム。首位の阪神は6点を先制しながら古沢の乱調で逆転負けを喫した。格下ヤクルトを軽くひねって首位固めといきたかった阪神にとって、北海道遠征での2敗1分けは誤算も誤算。金田監督が言うとおり “殺生” としか表しようのない結果となった。

 阪神敗れるーーこの一報を試合前に受けた中日ナイン、そして首脳陣の表

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ラストイニングの不覚

ラストイニングの不覚

 前半戦を34勝27敗5分、首位阪神と1.5ゲーム差の2位で終えたドラゴンズ。悲願の優勝を射程圏内に捉えた好成績に見えるが、必ずしも前向きになれない理由がある。昨年も貯金「8」で折り返しながら8月に7勝15敗と大きく負け越し、それが原因で首位戦線から脱落した苦い経験があるからだ。

 ただし事情の違いは考慮しなければならない。投打共にガッチリ噛み合った昨年の前半戦とは違い、今年の中日は開幕後のスタ

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負けて、なお反骨

負けて、なお反骨

 勝ち運に見放されていた稲葉光雄が先月、約十ヶ月ぶりの白星を手にしたが、ある意味で稲葉よりも苦しい状態にあるのが巨人の高橋一三であろう。なにせ昨季は300イニング以上投げまくって23勝を挙げる大活躍。巨人V9の立役者は間違いなくこのサウスポーだった。

 その高橋が今季は投げても投げても打ち込まれ、前半戦も終わるというのに未勝利とは、にわかに信じがたい。2軍降格したとき、夕焼けを背に多摩川をランニ

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ツキに見放された星野仙一

ツキに見放された星野仙一

 プロ野球 “夢の球宴” を彩るスター達の顔ぶれが決まった。今月20日から後楽園、西富、広島の3球場で計3試合が行われるオールスター戦。その出場選手の陣容が16日に発表された。

 注目すべきは中間発表で投手部門のトップを走っていた星野仙一だが、蓋を開けてみれば7位という残念な結果に。堀内、江夏といった巨・神勢は仕方ないにせよ、浅野、平松にまで追い抜かれたのは少々やるせない。その他の中日勢も松本が

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強いぞ、恐竜打線

強いぞ、恐竜打線

 中日と大洋。共にチーム打率2割6分5厘を誇る攻撃的な打線を売りにするが、好投手の投げ合いになるとそう簡単に点が入らないものだ。

 この日の両軍先発は三沢淳と平松政次。とりわけ平松は今季このカード初先発とあって気迫満点。右打者にはスライダー、左打者にはカミソリシュートが冴え渡り、ランナーこそ出すものの要所を締めるピッチングで中日打線を翻弄した。

 三沢も負けず劣らずの力投で5回まで1安打ピッチ

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エース松岡の回帰

エース松岡の回帰

 今でこそ首位阪神を猛追する中日だが、つい一ヶ月前は故障者続出と先発陣の不調が重なり、出口の見えないトンネルの中でもがき苦しんでいた。あの時期、危機に頻したチームを左腕一本で支えたのが松本幸行だった。もし松本がいなければ、首位争いどころか今ごろ中日は借金返済に窮していたのではないだろうか。それほど前半戦における松本の貢献は多大なものがあった。

 6連勝と勢いに乗る中日は、その松本をマウンドに送っ

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マサカリかついで1千本

マサカリかついで1千本

 オールスターまで2週間弱。与那嶺監督はヤクルト、大洋、巨人とつづく残り9試合を「うまくいけんけれども、2勝1敗のペースでいけたら言うことない」とソロバンを弾いた。その通りにいけばちょうど貯金「10」。後半戦に向けて弾みを付けるのにキリのいい数字である。

 この日から対戦のヤクルトは、対巨人5年ぶりの3連勝と勢いづいて名古屋に乗り込んでくる。最下位に甘んじているとはいえ、侮れない相手だ。とりわけ

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勝負の仙

勝負の仙

「今日は勝負よ。仙でいく」

 雨天中止から一夜明けた甲子園。普段は慎重派でめったに強気を表に出さない与那嶺監督だが、この日は並々ならぬ闘志を隠そうともしなかった。約一ヶ月ぶりに星野仙一の先発復帰に踏み切ったのも、この一戦を前半戦最後のヤマ場と捉えているからに他ならない。

 これ以上負けられない阪神は江夏豊を先発に立てた。いわゆるエース対決だが、中日ベンチには臆するような雰囲気はいっさい無かった

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雨天決行

雨天決行

 甲子園球場に大粒の雨が降りだしたのは試合開始まであと約1時間という頃だった。中止と決めこんでいた三塁ベンチの中日ナインにはすっかりお気楽ムードが漂い、星野仙に至っては「さあ、みんな引き揚げようぜ!」と帰り支度まで済ませていた。

 しかし、どれだけ雨脚が強くなっても「中止」の決定が出ない。そうこうするうちに阪神の戸沢球団社長が直々に内野グラウンドの状態を点検。その後、審判団から正式に「決行」のア

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無我無心の境地

無我無心の境地

 日本列島の梅雨明けより一足早く明るい兆しが見え始めた中日。とりわけ阪神古沢を「あと一人」から沈め、翌日には若生をたった19球でノックアウトした打線の好調ぶりには目を見張るものがある。この勢いで一気にペナントレースの主導権を奪いたいところだったが、30日の阪神戦、2日のヤクルト戦と2試合つづけての雨天中止は文字通り水をさされた感がある。

 何しろ “打線は水もの” という言い伝えがあるくらいだか

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夢のつづき

夢のつづき

 この日の中日球場は観衆3万5千人、今季三度目の満員御礼にふくれ上がった。朝の時点で内野席5千枚、外野席1万3千枚が残っていた当日券もたちまち完売となった。前夜の勝利がいかに多くのファンの胸を打つものであったか、球場外のチケット販売所にできた長蛇の列がそれを物語っていた。

 この上昇ムードを逃す手はあるまい。ここで負ければ阪神の優位は保たれ、再び独走を許すことになる。中日はハーラートップの松本幸

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中日球場の奇跡

中日球場の奇跡

 5.5ゲーム差で迎えた首位阪神と2位中日の直接対決。ただし、その意味合いは両軍にとって大きく異なる。直近4勝1敗と好調を維持し、着々と土台を固めつつある阪神。かたや中日は目下3連敗中となかなか波に乗ることができず、Bクラス転落の危機が間近に迫っている。

 首位攻防とは名ばかりで、実質的に中日はペナントレースから脱落するかどうかの瀬戸際に立たされているのだ。

 前の試合では高木守が痛恨の2失策

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名手の不覚

名手の不覚

 観客を沸かせるプレーも土台には反復練習がある。華やかな舞台で大歓声とスポットライトを浴びるプロ野球選手も、裏では地味で面白みのない練習を朝から晩まで気が遠くなるほど繰り返す。何千、何万回と、失敗しようがないほど徹底的に体に染み込ませるのだ。

 名手と評される中日の二塁手、高木守道が “練習の虫” であることは有名だ。代名詞のバックトスも、やはり反復練習の末に身につけた名人芸だという。そんな彼で

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ヒーローになり損ねた男

ヒーローになり損ねた男

「もらったチャンスだもんね。一発出てりゃ楽勝だったからね」。試合後、大洋宮崎監督が振り返ったのは8回裏の自軍の攻撃のことだ。

 大洋が2点リードで迎えたこのイニング、ここまで11安打4失点と調子の悪い松本幸行は投球だけではなくフィールディングでも精彩を欠いた。7回にバントの処理ミスがきっかけで失点したのに続き、ここでもバントを一塁へ高投。さらにワイルドピッチ、四球で無死満塁のピンチを招くと、さす

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別人になった金城

別人になった金城

 軍隊にとっての上官命令と同じように、プロ野球の世界において監督の指示は絶対だと考えられている。監督が審判に「交代」を告げるためにベンチから腰を上げれば、たとえ不本意であっても選手はそれに従うしかない。そこに選手の意志が介在する余地は本来あり得ないのだ。

 しかしこの日、谷沢健一は交代を拒んだ。8回の守りに入る前、交代を打診した与那嶺監督に「まだ行けます」と言ってポジションへと向かったのだ。右足

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