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JW656 熊襲、討たれて

【景行征西編】エピソード27 熊襲、討たれて


第十二代天皇、景行けいこう天皇てんのう御世みよ

西暦82年、皇紀こうき742年(景行天皇12)12月。

景行天皇こと、大足彦忍代別尊おおたらしひこおしろわけ・のみこと(以下、シロ)の寵愛ちょうあいを受けた、市乾鹿文いちふかや(以下、ふうか)は、襲国そのくにに帰国していた。

地図(襲国)

出迎えたのは、彼女の父、厚鹿文あつかや(以下、あっくん)と、迮鹿文さかや(以下、さかお)である。 

ふうか「父親が二人? どういうことなの?」 

あっくん「『おい』にも、ようわからん。」 

さかお「まあ、どっちかの娘じゃろう。」 

ふうか「そんなことで、いいのかしら・・・。」 

あっくん「それで? どげんじゃったどうだった? 夜麻登やまと奴原やつばらは?」 

ふうか「えっ?」 

さかお「『おい』たちが、だまって、娘を敵方てきがたに送るわけがなかろう? 作者は、諜報活動ちょうほうかつどうをさせていたち、考えちょる。」 

ふうか「そんなことより、たくさんの濃くて良い酒を用意したの。うたげでも、しない?」 

あっくん「どげんしたら、そげんコツになるんじゃ?」 

ふうか「なんでって・・・『日本書紀にほんしょき』に、そう書かれてるからよ。」 

さかお「仕方なかっ。そいならそれなら、宴をしながら、話を聞くことにしもんそしよう。」 

「あっくん」と「さかお」は、大いに飲み、酔って寝てしまった。 

ふうか「ぐっすり眠ってしまったわね。」 

兵士(は)「『ふうか』様。弓のつるを切っておきましたぞ。」 

ふうか「ありがとう。じゃあ、っちゃって・・・。」 

兵士(に)「ははっ。ではっ。」 

ザシュッ 

あっくん「フ・・・フゲッ。」 

ザシュッ 

さかお「グ・・・グフッ。」 

それから、数日後・・・。

ここは、高屋宮たかや・のみや

現在の宮崎県宮崎市みやざきしか、西都市さいとしのあたり。

地図(高屋宮)
筑紫行幸参加者名簿

一行の前に、熊襲梟帥くまそたけるの首が、二つ、並べられた。 

シロ「こ・・・これは、如何いかなることじゃ?」 

ふうか「二人のかしら御首級みしるしにござりまする。」 

シロ「そのようなことをうているのではない。これは、なれがおこなったのか?」 

ふうか「はい。酒をすすめ、酔って眠ったところを・・・。」 

シロ「愚か者! この者たちは、なれの父親であろう!」 

ふうか「えっ? 大王おおきみ?」 

シロ「子が、親をあやめるなど、あってはならぬこと・・・。」 

カヤ「お待ちくださりませ。姉上は、心を鬼にして、ヤマトのために・・・。」 

シロ「例え、そうであっても、これを許さば、親殺しを認めることになってしまう。」 

いっくん「大王おおきみ? 如何いかがなされるんです?」 

シロ「『ふうか』を斬罪ざんざいしょせ!」 

ふうか「えっ?」 

やぁちゃん「大王おおきみ!? いくらなんでも、それは、あんまりです。『ふうか』殿どのは、大王を想って・・・。」 

シロ「わかっておる! わかったうえで、もうしておる!」 

カヤ「どうか! 大王おおきみ! 姉上を、お許しくださいませ。」 

シロ「ならぬ。許すこと出来できぬ!」 

タケ「大王おおきみ・・・。いかりをしずめられよ。まずは、心を穏やかにして、よくよく考えるべきにござりまするぞ。」 

シロ「『タケ』先生・・・。われの心は、穏やかにござる。この怒りは『ふうか』を想えばこそ・・・。」 

たっちゃん「大王おおきみ?」 

シロ「われとて『ふうか』をうしないとうはござらぬ。されど、われは、大王おおきみにござる。これを許さば、天下にしめしが、つきませぬ。親殺しを認めた大王と、のちまで、そしりを受けましょうぞ。」 

百足ももたり「お・・・大王おおきみもうされる通りじゃ。」 

シロ「それに『ふうか』をかさば、こののち、『ふうか』は、親を殺したおなごと、うしゆびされるは必定ひつじょう。そのような恥辱ちじょくこうむるくらいなら・・・(´;ω;`)ウッ…。」 

ふうか「大王おおきみ・・・(´;ω;`)ウッ…。」 

シロ「・・・『ナッカ』・・・。『ふうか』をれ。」 

ナッカ「か・・・かしこまったっす。」 

ふうか「大王おおきみ・・・。短いあいだでしたが、『うち』は幸せでした・・・(´;ω;`)ウッ…。」 

シロ「・・・(´;ω;`)ウッ…。」 

こうして「ふうか」は、宮の外に連れ出され、斬られることとなった。 

ナッカ「『ふうか』ちゃん・・・。許してほしいっす。俺・・・大王おおきみめいさからうこと、出来できないっす。」 

ふうか「わかっております。よろしく御願い致します。」 

ナッカ「それじゃあ、いくっすよ。」 

ふうか「大王おおきみ・・・。」 

ザシュッ 

熊襲討伐は、悲しい結末で幕を閉じたのであった。

つづく

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