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ボクシング&格闘技の試合やエッセイ

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試合のことや格闘技について書いたものです。
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記事一覧

格闘技の魅力について語りたい

格闘技の魅力について語りたい

先日、『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』というスポーツノンフィクション書籍が出版された(読んでない)
日本ボクシング界最高傑作と称されるモンスター(怪物)こと井上尚弥チャンピオンに敗れた選手たちにスポットライトをあてて、リング内外を綿密に取材したそうだ。
彼らは恐ろしく強い怪物と闘うことをなぜ決意したのか、リング上で対峙して何を感じたのか、怪物の前に散った夜にどう想ったのか。
それを描

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遠藤健太郎vsチャン・タオ

遠藤健太郎vsチャン・タオ

韓国で試合が決まった時の話

最近負けてばっかだから負け試合のことばかり書いてるし、まあそれは仕方ないとしても勝利には勝利にしか味わえない光景や感情があるのは確かだし、その瞬間に自分が感じた気持ちを書き残しておきたいというのもあるから、今日は昔の勝った試合を思い出して書こうかな。

***

今から8年前、当時6回戦ボクサーだった僕は韓国で試合をしていた。
2012年頃からだろうか。ボクシング人気

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フューリーvsガヌーはボクシングの敗北か?

フューリーvsガヌーはボクシングの敗北か?

日本時間で今日の朝、サウジアラビアのリヤドでボクシングヘビー級10回戦が行われた。
WBC世界ヘビー級チャンピオンのタイソン・フューリー(35=英国)vs元UFC世界ヘビー級チャンピオンのフランシス・ガヌー(37=カメルーン)による競技の枠を超えた注目のビッグマッチは、2-1のスプリットデシジョンでフューリーが勝利した。

ハイライトでしか見てないので詳細な内容については何とも言えないが、ガヌーが

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生きる必要がない世界で、生きていく理由はなんだろう?

生きる必要がない世界で、生きていく理由はなんだろう?

ずっと生きる理由を探してきた

僕は最近ずっと、生きる理由を探している気がする。別に希死念慮があるわけじゃないし、生きることに無気力なわけでもない。ただ、ある種の不文律として絶対的な価値観とされている「死んだらいけない」とか「何があっても生きていくべき」という倫理観について、盲信せずに自分の頭で真剣に考えてみたいのだ。
本当に、この世界で生きていく必要があるのだろうか。

哲学者ハイデガーは人間の

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奪われたバックボーン

奪われたバックボーン

最高のボクシング世界タイトルマッチ

日付は昨日、7月25日にボクシングの世界戦が日本で開催された。
メインイベントはWBC・WBOスーパーバンタム級タイトルマッチ。
王者スティーブン・フルトンvs挑戦者 井上尚弥
そしてセミファイナルにはWBOフェザー級タイトルマッチ。
王者ロベイシー・ラミレスvs挑戦者 清水聡
身内アピールするのはダサすぎるから言うのは少し気が引けるけど、僕も2年前まで大橋ジ

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引退します

引退します

3月4日、試合をした。
結果を言うと判定負け。

プロとは言えないような内容だった。
たった3ラウンドなのにフラフラ。自慢のパンチ力も死んでいた。体力もない。今回は練習では調子良かったはずなのにな。

負けるのは仕方ない。相手が強ければ負けることもあるだろう。元々そんなに強くないし。
ただ自身のあまりに体たらくなパフォーマンスに、もうこれ以上試合しても体を傷つけるだけだと実感した。
試合前は死んで

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プロ4戦目

プロ4戦目

先日、試合の話があった。

2023年3月4日(土)Krush-EX 2023 vol.2

こちらの大会に出場することが決まった。

プロ4戦目、僕の戦績は1勝2敗。もう負けられない状況だ。オールドルーキーの最後の挑戦として、ボクシングから転向してきた。
Krush-EXはK-1グループの1番下の大会で、主に新人選手が参加している。僕もまだ新人ではあるんだけど、もう34歳だし、勝ったり負けたりを

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偏見と愛に満ちた格闘技の話

偏見と愛に満ちた格闘技の話

実は格闘技の種目数は武術や武道、流派も含めると有識者に広く知られてるだけでも百をはるかに超えるほど多い。おそらくは千をゆうに超える数に上る。それは球技と比べても圧倒的に多いのだ。
一般的に球技は一括りにされることなく野球は野球だしサッカーはサッカーだと認識されてるが、格闘技は格闘技と一括りにされてることが多い。知らない人に自分のしてる競技をボクシングとかキックボクシングとか説明しても理解されなかっ

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プロ第3戦

プロ第3戦

10月16日、僕のキックボクシングプロ第3戦目があった。

結果から言うと3ラウンドKO負け。
10月21日現在。試合が終わって体調が悪くなり病院に緊急搬送され、そのまま入院した病室のベッドから今この文章を書いている。
来月には34歳になる。さすがにもう格闘技は潮時かもしれないと考えている。

***

遡ること2か月。8月10日に格闘技団体KROSS×OVERから試合のオファーがあった。
前戦か

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リアルを求める

リアルを求める

5月9日。一通の電話が入った。
先月プロデビュー戦を勝利で飾ったキックボクシング団体、KROSS×OVERのプロモーターからだ。

「3週間後にKrushで試合できる?」

「えっ?」

急遽舞い込んできた試合のオファーだった。
KrushといえばK-1グループが運営している大会で、日本のキックボクシング業界の中ではかなりメジャーな部類だろう。
なんでも、怪我で欠場する選手がいたことで代役を探して

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プロキックデビュー戦

プロキックデビュー戦

試合がいよいよ近づいてきた。
キックボクシングに転向してから遂にプロデビュー戦だ。遂にといっても始めて半年くらいだけど。

4月11日。試合まで1週間を切り、fight week に入った。
ここからは減量というより調整になる。キャリアを重ねるにつれて積もりゆく知識の山から、自分に最適な調整方法を導きだす作業が僕は結構好きだ。
棋士の谷川浩司九段は、棋士は研究者、芸術家、勝負師の三つの顔を持たなく

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試合決定

試合決定

来月17日に試合が決まった。
前回の試合はセミプロみたいな扱いだったから、今回がキックボクシングに転向してプロとして最初の試合、プロデビュー戦となる。

正直まだまだキックは下手くそだし、勝つためには長年やってきたボクシングの技術を活かしてパンチに頼って勝負するしかないだろう。
まあ蹴られて蹴られて、我慢して殴って殴って、それでどうなるかって感じになるんじゃないかな(笑)

僕にはプロ意識があまり

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転向しました

転向しました

今年5月、プロボクシング8回戦を行い3ラウンドTKOで敗れた。
多くの敗因があったと思う。しかしそれも全て、自分の甘さと弱さが招いたものだ。

その試合についてはこちら。

負けてからというものジムから足が遠のいた。
過去には日本ランカーと引き分けたり日本チャンピオンになる相手と際どい試合をしたこともある。
しかし32歳、負け越しノーランカー。夢への長い道のりを歩むにはもう時間が残されていない気に

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遠藤健太郎vs塚田祐介

遠藤健太郎vs塚田祐介

5月27日。
目が覚めると体重計に乗った。
「63.3kg」
前日の夜はまだオーバーしていた体重も、朝起きたら契約体重を下回っていた。体重計の液晶画面に映る数字を見て、僕はやっと安堵した。

計量が終わったら飲もうかと買っておいた経口補水液を少しだけ口に含む。
口の中全体に染み渡るように舌をコロコロと回し、ゆっくりと噛み締めるように喉を通して飲み込んだ。
飢えと渇きこそ最高の調味料だと語った哲学者

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