ケノヒ

小説書くのが好き📝 ゲームするのも好き、最近はAmong Us!✨ エッセイで哲学とか…

ケノヒ

小説書くのが好き📝 ゲームするのも好き、最近はAmong Us!✨ エッセイで哲学とか創作論とか書いてます。 [novel]https://estar.jp/users/481769097

マガジン

  • 屋根裏部屋のドラマチック

    両親が蒸発し、十歳で孤児となった少女、サユリは、偶然、同い年の女の子のハマに出会って、図書館の屋根裏部屋暮らしをしていた。 サユリは図書館の本を全て読み尽くし、読書にも飽きて退屈してしまっていた。 十六歳になったある日、ハマから一枚の中間テストの範囲票を貰う。 なんとサユリは、既に魔法学校に入学してから一カ月が経っていたことになっていたのだった。 果たしてサユリは、魔法学校に馴染めるのか。彼女の学園生活が始まった―― 新感覚学園ファンタジー! ぜひお試しあれ!

  • 人見知りのヒトミちゃん

  • エドンマーティヌの墓

    全ての事象はエロスが内在している―― 有名なトレジャーハンターである祖父の「神の光」を受け継いだ、大学生の江口イリア。しかし、受け継いでから2年、その能力が発現することはなかった。 しかし大嫌いなクラスメート、槙野アヤカに出会い、運命の歯車が回り始める。彼女は無事、神の光を発現することができるのか?!

最近の記事

長編小説:歩きタマゴ⑩

 塾の近くのマクドナルドで、ぼくとエリは参考書を広げ合っていた。エリはプレミアムコーヒーをひとつだけ買って、勉強モードへと完全に移行していた。学校帰りの勉強というシチュエーションに慣れないぼくは、がっつりセットメニューを購入してしまう。手渡されたお盆が、二人用の小さなテーブルのおよそ半分ほどを占めてしまっていた。 「でもさあ」コーヒーの飲み口をふうと口で冷ましながら、エリは言った。「勉強を教えるって言っても、私たちの通う塾は個別指導なんだから、もうできないならできないなりにな

    • 長編小説:歩きタマゴ⑨

      「――それでさあ、ミズキ」  その日の夜はミズキが家に来ていた。エフは、エフの父と洋食屋に出かけるらしく、ミズキはその誘いを断ってこちらに来たらしい。入学式での一件の関係でしばらくは不機嫌だったが、エフがバラしたのだと分かると、諦めの気持ちからか、すぐに納得してくれた。それからミズキはリビングでアニメを一通り見た後、今は参考書で勉強し始めている。彼女が言うには、もうすぐ高校範囲の勉強が終わるらしい。ぼくはすでに追い抜かれていた。ほんと、この子はぼくのことが好きという部分以外に

      • 小説:歩きタマゴ⑧

         入学式になって、ぼくは事前に知らされていたミズキのサプライズに、それ相応のリアクションを取らなければならなかった。「新入生代表」と学年担任が宣言したとき、ぼくは身構えた。そして、ミズキの名前が呼ばれる。全校生徒が揃った体育館は、微かにざわつく。今年の新入生代表は女の子か――なんて言う声も聞こえる。ぼくはそれで思いついた。 「あの子、ぼくが勉強を教えたんだよ、きゃー」と隣のやつの肩を叩いて、少し騒いだ。話したこともない女だったが、その子は何かを察したのか、壇上の女の子がこちら

        • 小説:歩きタマゴ⑦

           カレーとは不思議な食べ物だ。野菜を切ったり、それを湯に入れて煮たりしていたらいつの間にかサマになっている食べ物である。ぼくはこの、煮るという作業が好きだ。焼いたり炒めたりしたときはなんとなく野菜を傷つけ、変形し、加工している感覚があるのだが、煮るは違う。どこかの哲学者の言ったことの受け売りだが、煮ると言うのは食材をよく腐らせることであり、良き水を野菜に透し、深奥に隠された本質的な部分を滲ませる。具のゴテゴテとしたカレーは特に美味だ、実際なんの味なんだか、よく分からなくなる、

        長編小説:歩きタマゴ⑩

        マガジン

        • 屋根裏部屋のドラマチック
          6本
        • 人見知りのヒトミちゃん
          7本
        • エドンマーティヌの墓
          13本

        記事

          小説:歩きタマゴ⑥

          「――結局のところ、男の価値というのは女を愛せるかどうか、それに尽きるんですよね」  オススメのアニメを一通り見て、ミズキは唐突に言い始めた。多分、ぼくの父のことに言及しようとしているのだろう。彼女は、ぼくのゲーミングチェアに座りながら、きっとそのことについて考えていたはずだ。ぼくにとっては初めてのアニメだったが、既に何十回も視聴いていた彼女には、そういうことを考える時間があったはずだ。自分のオススメのアニメを一緒に視聴するとは、きっとそうやってイニシアティブをとって自分の言

          小説:歩きタマゴ⑥

          小説:歩きタマゴ⑤

           ――そういうわけで、母はエフの母を連れて世界一周旅行に行ってしまった。二人分の旅行費を家計から出すのは流石に厳しかったらしく、単身赴任の父に予算を打診したそうだが、そもそも度々世界旅行に出かけていたこと自体打ち明けていなかったようで、相当ブチギレられたみたいだ。特に、アパートのことはしこたま怒られていた。ちゃんとしたところに住まず、なぜ旅行などする余裕がある? ノマド気取りもいい加減にしろ! このセリフは電話口からも聞こえてきた。父の声を聞くのは何年振りだっただろう、彼はベ

          小説:歩きタマゴ⑤

          小説:歩きタマゴ④

           その日、ぼくはそのまま自分の家へ向かった。エフのバカさ加減を朝に堪能したためか、今日は何がなんでも歩きタマゴを見てやりたいと思ったのに、母に電話すると今日は帰ってきなさいとのことだったので大人しく従うことにした。基本的に子の道徳に絶対的不干渉であるこの親が、ぼくの自由を束縛することは尚も珍しかったので、何事かがあったのだろう。エフの後ろをつけるのとはまた別の緊張感が、家に近づくに従って増してくる。  果たして、エフのお母さんがリビングで母と談笑していたのだった。 「驚いた?

          小説:歩きタマゴ④

          小説:歩きタマゴ③

           エフをストーカーし続けてから一年で、新たに気が付いたことがある。それは、エフの姿勢が他の人間よりも伸びているということだ。気付いた今となっては、どうしてもっと早く気がつかなかったのかとも思うが、どうやらぼくはあの姿勢が普通だと思ってしまっていたらしい。ぼくがエフ以外の人間を知る機会があるとすれば、それはマンガやアニメか、あるいはテレビに映る芸能人か。彼らは皆、背筋が伸びている。底辺オタクですら、デブ以外が猫背になっているのを見たことがない。あるいはたとい猫背でも、それは「猫

          小説:歩きタマゴ③

          小説:歩きタマゴ②

           冬休みが終わって、学校が始まってから最初の夜、ぼくはまたエフの家にいた。いつものように母に電話をかけると、たまにはエフも家へ呼べと怒られた。しかしそれは、ぼくにとっては何の意味もないことであった。そう、ぼくがこの家に赴くのでなければ――エフの美少女性を堪能することは叶わない。母には悪いが、今日もこの家でグラタンをご馳走になることをぼくは選択する。 「めぐみさん――いや、今からもうめぐみ先輩って呼んだ方がいいですかね?」 「合格者最低点を上回ったくらいで調子に乗るな」  ぼく

          小説:歩きタマゴ②

          小説:歩きタマゴ

           何度も通ってきたはずの、高校への通学路でぼくはいやに緊張していた。心臓がクラブハウスのステレオみたいに激しく胸の裏を打つ、所在のない両手は電信柱を撫でたり擦ったり、あるいはそれをズボンで拭いたりしていた。夏の暑さも去って久しく、落ち葉に気の狂った黄色が目立ち始める。深呼吸をしようにも、肺はその冷たい空気を吸うばかり。ああ――雲の上の神よ、ぼくを今、見下ろしているのならいっそ隣へ来てほしい。隣へ来て、ぼくの肋骨を強く押して、溜まりに溜まって澱んだ劣情を無理矢理にでも吐き出させ

          小説:歩きタマゴ

          よかったね

           君はなぜ、ぼくが、いや人がなぜ物語を書くのか、きっと分からないだろう。君はこれまで、物語を書こうと思ったことがない。読むのだって嫌いだ。しかも、君はそんな自分のことをどうしてか気に入っている。パソコンと睨めっこしながら四苦八苦しているぼくを見て、こうならなくてよかったとさえ思っているに違いない。しかし、君はぼくのことが好きだ。君は何かに熱中する人を好きにならないではいられない。本当に理不尽だ、ぼくは君の元を去ることができない。  君ほど、ぼくを理解できていない人間はこの世に

          よかったね

          アホ

           田中を見ていると、どうも人間ってアホだなあって思ったりする。  なんか伝えようという気がまるでない喋り方をしているっていうか、なんだか最初っからコミュニケーションを放棄していますって雰囲気が表情に表れている。なんも伝えないのに、なんで喋ってんだろ? 黙ればいいのに。 「ねえ、田中」しおりは言った。「どうしてそんな感じなの?」 「ブブ――、ブ、ブ、ベ……」 「まあなんでもいいや」  静かな喫茶店の中で、口から発せられた田中の羽音だけが無様に響く。マスターはどうやらまた、ガール

          バカ

           コンセントに鼻くそを詰めてショートした民家の存在!  うるち米を微塵ぎりにして炊いたら見事べちゃべちゃ!  テーブルの足が取れてしまったので手をつけてみました?  あなたは今、どこにいるのかしら?  新聞を閉じて、しおりは窓の外に聳え立った領収書の束を見た、私の冒険はここから始まるだなんて意気込んだのも束の間、クソゲーに捕まって、詰んでいるマップを二日間も彷徨っている。少し前に呼ばれた友達は、カップラーメンを作るためにケトルに水を入れ続けて一時間が経った。蛇口から流れる水

          「エスカレーター」

           ごはんを一緒に食べたあとに、なんか、一緒に帰ろう的なことを言われたんだけれど、振り切って帰ることにしたの。どうせまた家に呼んで、なんやらかんやらやりたいんだよ、でも、あたしだって疲れてるんだから、彼の家暖房なくって寒いし、はあ、どうにも、彼氏の面倒を見るのは疲れる。でも別れたくないんだよね、これ以上付き合いたくないって気持ちもあるけど、度合い的に別れたくない気持ちの方が強い。多分、3くらいは強い、今は辛抱しなくちゃ、どうせ結婚なんか向こうも考えてないでしょ、うちのこと、とり

          「エスカレーター」

          長編小説;トパーズ色の海で ②

          「夏衛、珍しいじゃないか」  文芸部の扉を開くと、むわりと籠った本の匂いの中で、三人がテーブルを囲んで小説を書いていた。話しかけてきたのは部長の北川先輩。このクソみたいな馴れ合い部活の中でも、まあ少し書けなくもない人だ。他二人は――モブだな。 「本当は来たくなかったんだが、春美のやつが来いって」 「お前、あいつのこと好きだもんな」 「は? てめえ、喧嘩売ってんのか? ぶっ殺すぞ」 「まあまあ――」  後ろで声がしたので振り返ると、春美が照れたフリをしながら入ってきた。 「そん

          長編小説;トパーズ色の海で ②

          長編小説: トパーズ色の海で

           ぼくが小説を書く意味? なんでそんなこと聞く?  そんなの、楽しいから――以外にないでしょ。他に思いつく? 思いついたら、むしろ教えて欲しいわ。君自身の小説には興味ないけれど、その姿勢は興味わくかな。まあ、少しだけね。  でさ、そういうのって結果が重要なわけじゃないじゃん。意味を聞くっていうのはさ――なんていうか、自分がどんな小説を書くのか、あるいは書いたのかってことにフォーカスしすぎている気がするんだよね。じゃなくて、大事なのはどのように小説を書くのか――じゃない? 一流

          長編小説: トパーズ色の海で