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ビジネスモデルキャンバスで事業の作り方と届け方を再考する視点〜マネプロ#19

こんにちは! DeNAでHRビジネスパートナーをしている坪井(@tsubot0905)です。

マネジメントの進化を探求するnote
『マネプロ』は今回が第19回目です。

このマネプロnoteのシリーズでは、5分で分かりやすく学べるシンプルな構成と、相手とのコミュニケーションで使えるようなシンクロしやすい問いを意識した内容を心がけています。

さて、前回のマネプロからは戦術編をお送りしております。初回は、戦略と戦術ってどっちも大事!という話に始まり、ラグビー日本代表の事例を紹介して優れた戦術について探求しました。

今回からは、マネジメントの4領域(事業・業務・組織・人材)それぞれに焦点を当てて、戦略から戦術への落とし込みを探求します。

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今回のテーマは「事業のマネジメント」。
みなさん一度は聞いたことがあると思われるビジネスモデルの話です。

目次はこちら!


<ビジネスモデルってなに?>

ビシネスモデルを考えるというのは、
ビジネスの構造を設計することです。

書籍『ビジネスモデル・ジェネレーション』では

ビジネスモデルとは、どのように価値を創造し顧客に届けるかを論述的に記述したもの

と定義しています。

いかに顧客に提供できる価値を継続的に生み出すか?そのために社内外の経営資源をどう活用するか?業務プロセスをどう組み立てて価値を届けるか?儲ける仕組みをどう作り上げるか?

そういったものを「こうしてああしてこうなる」と論理の組み立てによって構造化して説明したものなんですね。

<ビジネスモデルを構成する4つの視点>

ビジネスモデルの構成は、いろんな学者の方がいろんな分け方をしています。今回は4つの視点に分ける説明と9つの要素に分ける説明を紹介します。

まず、4つに分ける視点から。

ビジネスモデルについての理論を体系化したマーク・ジョンソン氏は、ビジネスモデルが「顧客価値提案」「利益方程式」「主要経営資源」「主要業務プロセス」の4つの視点に分かれると説明しています。

漢字が多くて難しい和訳ですが、ざっくり言うと
「どんなことを求める人に何を提供するのか」
「どんな仕組みで利益を生むのか」
「そのために必要なリソースは何か」
「具体的にどんな手段で回していくのか」
のことです。

これまでのマネプロでは、消費者の心理や行動を紹介した#13シルク・ド・ソレイユを例に新しい価値の生み出し方を紹介した#14で「顧客価値提案」を、コアコンピタンス経営を紹介した#16で「主要経営資源」についてを説明してきました。(よかったら振り返って見てみてください)

続いて、この4つの視点を9つに分ける要素ですが、こちらは「ビジネスモデルキャンパス」という便利なフレームワークとともに紹介します。


<ビジネスモデルキャンバスの全体像>

ビジネスモデルキャンバスとは、ビジネスの構造を一目瞭然で伝えられるフレームワークです。9つの要素で構成されています。まずはこちらの図を見てください。

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ごちゃごちゃしているなと思われた方もいると思いますが、実はすごく考えられた配置になっているので、そこを理解していただくと見やすくなると思います。

まず、図の下側。ビジネスモデルの土台の部分には「収益」と「費用」が配置されています。これは利益方程式の視点ですね。

そして、ビジネスモデルを構築する際の大黒柱は真ん中にある「価値提案」です。顧客への提供価値がお金を生み出さなければ持続的にビジネスはできません。

この「価値提案」に対してビジネスモデルキャンバスの右側は顧客へ価値を『届ける』構造を考えること。左側は提供価値を『作る』構造を考えることになります。

つまり、右側が企業活動におけるマーケティング、左側が企業活動におけるオペレーションと関連してきます。そのため、企業の中ではそれぞれの領域において主に責任をもつ経営者をCMOやCOOと呼ぶケースもありますよね。

これでずいぶん見やすくなったと思います。
では、9つの要素を具体的に見ていきましょう。

<ビジネスモデルキャンバスの9要素>

大まかな構造は分かったとはいえ、9つもあるので配置込みで覚えるのは大変。私も使うときには、メモや資料を参考にしていました。

まず、9要素の概要はここでチェックしましょう!

 Value Propositions: 提供する価値提案
企業が提供する製品・サービスを通じて、どんな価値を提供し、顧客のどういったニーズを満たすのかを書きます。

Customer Segments: 顧客セグメント
誰に価値を提供するのか。最も重要な顧客は誰か。顧客を意味ある分け方で分類し、どのグループをメインターゲットにするのかを書きます。

Channels: チャネル
チャネルとは、媒体や経路のこと。どう顧客に知ってもらうか、どう販売する接点をもつか、どう価値を届けるかを書きます。

Customer Relationships: 顧客との関係
顧客とどのような関係を築くか。どう顧客を獲得して、関係をどう維持し、拡大させていくかの手段を書きます。

Key Resources: 主要なリソース
事業を行う上で強みとなるヒト・モノ・カネを中心とした資源(ブランド、データ、ネットワーク、知的財産なども含む)を書きます。コア・コンピタンスの話ですね。

Key Activities: 主要な活動
必ず実行しなければならない重要なアクション、価値提案の差別化のため最重要となる活動にフォーカスして書きます。

Key Partners: 主要なパートナー
事業を運営する上で欠かせないパートナーは誰か。顧客も大事なパートナーではありますが、お金を支払う相手はパートナーに、お金を頂戴する場合は顧客セグメントに書きます。

Revenue Streams: 収益の流れ
課金形態、課金メニュー、支払い方法など、マネタイズのポイントや収益の流れを書きます。

Cost Structure: コストの構造
事業を運営する上でかかる費用を書きます。

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さて、ここまで読んで「うんうん、大体わかったけど、書き込んでから具体的にどう使えばいいの?」と思った方、いらっしゃると思います。

私も現在の事業状況を記載してマッピングしただけではあまり意味がないと思います。ちなみに、私が新規事業をやっていた時には何も書けませんでした(笑)でも、よく考えたら当たり前です。何もないから新規事業なので。

というわけで、
マネプロ恒例の事例紹介で使い方を説明します。

<シルク・ド・ソレイユのビジネスモデルキャンパス>

取り上げるのは、またもやシルク・ド・ソレイユ。
マネプロ#14でも取り上げましたね。

今回は「事業のエッジがきいている特徴と事業でカットした特徴」を下図のように黄色と白色の付箋で分けて書きました。

他にも「現在と未来」など『軸』を変えて事業構造を考える使い方ができるフレームワークです。『軸』を変えることで差別化や未来に想いを馳せることができるんですね。

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では、事例の話へ。
シルク・ド・ソレイユの土台となるコスト・収益の構造から見ましょう。

従来のサーカスに比べ、芸術的な製作費に焦点を絞ってコストをかけており、収益はグッズ販売などではなくチケット価格の上昇によって成り立たせています。

しかし、動物ショーも花形パフォーマーも辞めてしまったサーカスの高いチケットなんて誰が買うのか?

大黒柱となる「価値提案(VP)」にその説得材料が書かれています。

シルク・ド・ソレイユは「芸術性の高いダンスと音楽」によって魅せる、「テーマ性」を持った「複数の演目」を披露することにしたのです。

一言で言えば「サーカスを家族向けの娯楽ではなく、教養ある大人の娯楽にする」といったところでしょう。

なので、図の右側「顧客セグメント(CS)」は「劇場やオペラの観客向け」となっている。

もちろん、提案したい価値を生み出すためには、使えるリソースを用いて、日頃の業務に落とし込む必要があります(図左側)。

このように各要素がしっかりリンクしていると、意味のあるビジネスモデルが設計できていると言えます。

<ビジネスモデルの変化と変革>

せっかく整合性の取れたビジネスモデルを築けても、それがずっと価値を生み出せるとは限りません。

社会は変化し、顧客は移ろい、競合は追いかけてくるのが常だからです。

ですから、ビジネスモデルは常に変化し進化していくものです。そうしなければ、通用しなくなってしまう…。

例えば、アップルはコンピューターの製造・販売のみ(元は完成品ではなく部品のプリント配線板の製造・販売)でしたが、いまではコンピューターのようなハードウェア製品だけでなく、ソフトウェア製品も扱いデジタルコンテンツを提供するプラットフォーマーでもあります。

事業が多角化するといくつもビジネスモデルキャンパスが増えます。そして、時にはキャンバスを塗り替える「変革」が必要な時もありますよね。

「変革」というのは事業のピボットです。例えば、Youtubeは最初出会い系動画サイトでしたし、Instagramはロケーションチェックインアプリだったのだとか。おそらく、元々の事業だと今のようには成長していないでしょう。

自分たちのビジネスモデルに必要な変化は何か?

そもそもビジネスモデルの変革が必要なのか?

ビジネスモデルキャンパスで俯瞰的に事業を再考し、ビジネスの構造を設計することで、事業の戦い方がハッキリすれば、戦術の実行力は高まります。

ビジネスモデルはHow to Win(どう勝つか)の事業ストーリーをつくる設計図ですね!

<今回のQuestions>

以上が19回目のマネプロでお届けしたかったコンテンツでした!
いかがでしたでしょうか?

ということでマネプロ恒例、最後の問いです。

今回のテーマを通じて、リーダーやマネージャーの方々に問いかけたい4つの質問を選びました。忙しい皆さんの思考の整理と、新たな行動の後押しになれますように!

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※「自分はこう考える」「自分ならこれを問いかける」という考えはぜひTwitterにて「#マネプロ」を付けてつぶやいていただけたら嬉しいです!

<次回に向けて>

今回はマネジメントの4領域でいう「事業」についてビジネスモデルキャンパスを通じて、いかに戦術を再考するかにフォーカスしました。

次回のマネプロで注目したいことは業務のマネジメント。
ビジネスモデルの視点にある主要業務プロセスのところ。
つまり、価値提案を「いかに作るか」の話です。

価値が作れなければ、価値は届けられないし広げられない。事業の次は「業務のマネジメント」の戦術を探求したいと思います。お楽しみに!

次回は2週間後の水曜日。
良かったらぜひnoteのスキやフォローをお願いします。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

読者のみなさんと共にマネジメントの進化を探求できれば何よりです。Twitterのフォロリツ大歓迎です!DMでの感想も是非!(@tsubot0905)

noteで取り上げた内容について、みなさんの持論や新たな問いかけの視点をもらうことでマネジメントの探求がもっと楽しくなるはず。ですので、みなさんからのリアクションを心待ちにしております。よろしくお願いします!

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