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コア・コンピタンス経営-自社の強みを活かして未来の成功をたぐり寄せる〜マネプロ#16

こんにちは! DeNAでHRビジネスパートナーをしている坪井(@tsubot0905)です。

マネジメントの進化を探求するnote
『マネプロ』は今回が第16回目です。

このマネプロnoteのシリーズでは、5分で分かりやすく学べるシンプルな構成と、相手とのコミュニケーションで使えるようなシンクロしやすい問いを意識した内容を心がけています。

さて、第11回より3C分析のCustomer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)を順にテーマとしてお送りしております。

今回はいよいよ3つ目のC。
Company(自社)について扱います。

テーマは「自社の経営資源」

戦略の実現にむけて、いかに経営資源を注ぎ込めるか。
未来の成果を生み出すために、どう自社と向き合うか。
について考える視点を探求したいと思います!

目次はこちら!


<「選択と集中」はいつもそこに>

予定がギュウギュウに詰まっている時や、
明日の大事なプレゼンに向けて準備でパツパツな時。

私たちは、1日があと数時間多ければな、なんてことを考えます。

しかし、どうがんばっても、使える時間という資源は有限。

やれることは限られています。

今の自分にとって決定的に重要なことにしぼって、
残された時間を割り当てて行かなくてはなりません。

このように「選択と集中」は、
私たちが普段から当たり前に行っている行為です。

そして、有限のリソースの配分に迫られるのは、企業も同じ。「選択と集中」は戦略や経営資源の議論では頻出のワードです。

<経営資源を意識的に使う>

企業が持つ経営資源には、
人・物・金・情報などがあります。

もちろん、これらもすべて有限ですよね。

「選択と集中」とは
これらの経営資源を何に使うか決めることであり、
決めたことに経営資源を集中し成果を上げること。

それが戦略的な経営につながります。

『良い戦略、悪い戦略』の著者であるリチャード・P・ルメルドの言葉を借りるなら、良い戦略にとって必要なのは「目前の状況に潜む一つか二つの決定的な要素———すなわち、こちらの打つ手の効果が一気に高まるようなポイントを見極め、そこに狙いを絞り、手持ちの資源と行動を集中すること」です。


では、いったいどうやって資源と行動を集中させる狙いを絞れば良いのでしょうか?

それには、企業にとっての目的や目標に立ち返る必要があります。企業として実現したいコトがなければ、そもそも「決定的な要素」の輪郭は見えてこないわけです。

・企業経営を何のためにやるのか(目的)
・目的のために達成したいことは何か(目標)

目的は企業理念、目標は戦略と置き換えても良いと思います。
企業理念や戦略の実現に向かうための決定的な要素に
有限である経営資源を意識的に活用することが大切です。

<経営資源が自社の強みになるか>

ここまで、経営資源をどう使うのかという話をしてきました。

しかし、経営資源は使うだけのものではありません。

経営資源を長期的な強みに育てる視点も忘れるべからず!

戦略論の歴史から見ると、この視点が重視されるようになったのは1990年代からのことでした。

1980年代、経営戦略論は外部環境に重きをおいたポジショニングの考え方が強かったのですが、次第に経営資源に重きをおいたコア・コンピタンスやケイパビリティの考え方が強まりました。(詳しくはマネプロ#9へ)

そこで、今回注目したいのは
コア・コンピタンス経営です。

ゲイリー・ハメルとC K.プラハラードが1990年に発表した論文”The Core Competence of the Corporation”のなかで提唱した考え方ですね。

<コア・コンピタンス経営の3条件>

コア・コンピタンス経営を提唱した2人は、コア・コンピタンスを「顧客に対して、他社には真似のできない自社ならではの価値を提供する、企業の中核的な力」と定義しています。

そもそも、コンピタンス(competence)とは「能力、適性、資産、十分な収、権限、言語能力」などを意味する単語。

ですから、まあ文字通りなのでわかりやすいですね。

他社にはできないユニークな価値を顧客に提供できれば、
それが中核的な強みとなり、持続的な競争優位を築ける。

これがコア・コンピタンス経営のコアです。

そのコアになる条件としては

・顧客が認める価値を持つ
・競合にマネされにくい 
・他事業への展開力がある

の3つがあります。


<自社の中核的な強みを問う視点>

コア・コンピタンス経営を生み出す源泉は4つに分けられます。

それぞれ、「Value(経済的な価値)」、「Rareness(希少性)」 、「Imitability(模倣可能性)」、「Organization(組織)」。

これらの頭文字をとってVRIO(ブリオ)と呼びます。VRIOの中には、コア・コンピタンスの条件もすべて含まれていますね。「他事業への展開力がある」だけ直接的ではないのであとで詳述します。

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VRIOは4つが絡み合ってその企業の競争優位を生み出しますが、あえて分けるなら、最初の二つが「競争優位性があるかどうか」、後ろの二つが「持続的であるかどうか」を表しています。

「競争優位がある」状態の定義は明快で、競争相手より低いコストで生産できるか、高い価値を提供できる時、またはその両方ができる時を言います。

続いて、「持続的である」状態ですが、競争優位が持続的であるには優位性を生み出す経営資源をマネされないことが重要です。

特許やブランド力、取引関係や人脈、熟練技能や組織文化はマネされにくいリソースと言えるでしょう。これらが組み合わされば最強です。事例でいえばこちら。

アップルのiPhone事業は、ブランド力、評判、iTunesの補完的なサービス、専用アプリなどによるネットワーク効果によって守られている。どれも経営陣が巧みに形成してきたものであり、持続可能な競争優位を確保するプログラムに組み込まれている。
『良い戦略、悪い戦略』より


<自社の強みを未来の事業につなげる>

コア・コンピタンスの3つ目の条件、
「他事業への展開力」について見ていきます。

2つの条件(顧客が認める価値、競合にマネされにくい)が競争優位を“深める”視点の話をしているのに対し、”広げる”視点から話をします。

既存の製品、顧客、競争相手から視点を移し、自社の競争優位を支えている独自のリソースをほかに活かせる道はないかと探すこと。これが他事業への展開です。

自社の事業の展開を拡大する考え方に
アンゾフの成長マトリックスというフレームワークがあります。

経営戦略の父アンゾフが唱えた考え方で、図のように「市場」が新規か既存か、「顧客」が新規か既存かの二軸で構成されています。(ちなみに、Zを書く順番に難易度が上がるため、「Zモデル」とも呼ばれています)

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4象限のうち、左上にある市場浸透は今回の「他事業への展開」にそぐわないのでカット。残り3つの事例について触れたいと思います。

ー 製品開発:新規製品 ×既存市場 ー

既存顧客に新しい価値を提供するパターンです。
Amazon プライムを例に考えてみます。

私自身、Amazonの利用者でしたがプライム会員ではありませんでした。
別に商品が翌日に届かなくても良いと思っていたのですが、
プライムビデオ・ミュージックプライムなど新たなサービスが使えることを知り、定額動画サービスの利用を検討していた時に会員になりました。

「顧客基盤」×「商品/サービスの品揃え」という
Amazonの強みが活かされた製品開発として事業拡大に貢献しています。


ー 市場開拓:既存製品 ×新規市場 ー

既存の価値を活用して新しい顧客を拡大するパターンです。
ポケモンGOを例に考えてみます。

ポケモンGOは2016年にリリースされて、2019年には10億ダウンロードを突破した世界で人気のゲームです。運動しながら遊べることから、幅広い年齢層、かつ健康志向の方々も楽しんでいて日本でもブームになりましたよね。

既存の遊び方ではなく、新たな切り口からポケモンの遊び方を提示し、世界各国の市場を開拓したからこそ成しえた10億ダウンロードの人気ゲーム。

ポケモン社の「日本から生まれたブランド力」とグーグルの社内ベンチャーだったナイアンティック社の「世界の位置情報を活用した技術」の強みが組み合わさって市場開拓が上手くいった事業の発展例ですね。


ー 多角化:新規製品 ×新規市場 ー

新しい顧客に新しい価値を提供するパターンです。
Uber Eatsを例に考えてみます。

Uberのスタートはタクシーの配車アプリでした。
ですが、現在はUberEatsを使っている人の方が多いのではないでしょうか。

UberEatsでは届ける内容が「人」から「物」に移りました。Uberという名は共通ですが、新しいサービスで新しいニーズを獲得しています。

この2つのサービスが生まれたことによって、Uberは「届けるサービスをテクノロジーで提供する会社」という一段抽象度の高いブランドイメージまで獲得できたのではないでしょうか。

難易度が最も高い事業の多角化を成功させたUber。
育まれた自社の強みを今後の事業でどのように活かすのか楽しみですね。

<今回のQuestions>

以上が16回目のマネプロでお届けしたかったコンテンツでした!
いかがでしたでしょうか?

ということでマネプロ恒例、最後の問いです。

今回のテーマを通じて、リーダーやマネージャーの方々に問いかけたい4つの質問を選びました。忙しい皆さんの思考の整理と、新たな行動の後押しになれますように!

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※「自分はこう考える」「自分ならこれを問いかける」という考えはぜひTwitterにて「#マネプロ」を付けてつぶやいていただけたら嬉しいです!

<次回に向けて>

これまで、3C分析を用いて5回にわたって
戦略に影響する視点の探求を続けてきました。

外部環境と経営資源をふまえて
いかに戦略をつくり、活かしていくのか。

次回は「3Cから戦略へ」をテーマにします。
戦略編の仕上げの会です。お楽しみに!

次回は2週間後の水曜日。

良かったらぜひnoteのスキやフォローをお願いします。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

読者のみなさんと共にマネジメントの進化を探求できれば何よりです。Twitterのフォロリツ大歓迎です!DMでの感想も是非!(@tsubot0905)

noteで取り上げた内容について、みなさんの持論や新たな問いかけの視点をもらうことでマネジメントの探求がもっと楽しくなるはず。ですので、みなさんからのリアクションを心待ちにしております。よろしくお願いします!

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