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戦略論の歴史から学ぶ、戦略と組織の関係性〜マネプロ#9

こんにちは! DeNAでHRビジネスパートナーをしている坪井(@tsubot0905)です。

マネジメントの進化を探求するnote
『マネプロ』は今回が第9回目です。

このマネプロnoteのシリーズでは、5分で分かりやすく学べるシンプルな構成と、相手とのコミュニケーションで使えるようなシンクロしやすい問いを意識した内容を心がけています。

さて、前回から
マネプロの戦略編が始まりました。

マネプロの戦略編では
・いかに戦略と向き合うか?
・どのように戦略を活かすか?

といった戦略を使う人向けの内容を
お届けしたいと思います。

今回のテーマは、戦略と組織

戦略実現というマネジメントに求められる機能に対してどのように貢献していくかを考えるために、まずは戦略論の歴史をザックリとお伝えし、そこから組織との関係性を通じて「いかに戦略と向き合うか」について書いていきます。

目次はこちら!

<戦略と向き合う>

戦略と組織の関係性について
代表的な2つの考え方があります。

・組織は戦略に従う
・戦略は組織に従う

みなさん聞いたことはお有りでしょうか?

「組織は戦略に従う」は、ハーバード・ビジネススクール名誉教授で経営学者・歴史家のアルフレッド・チャンドラーによる1962年の書籍に書かれた考え方で、「戦略は組織に従う」は、経営学者であり事業経営者のイゴール・アンゾフによる1979年の書籍に書かれた考え方です。

せっかくなので、チャンドラー、アンゾフを起点に20世紀・21世紀の戦略論の歴史を私がピックアップした書籍に触れつつ戦略と向き合ってみたいと思います(キャプチャはAmazonからお借りしました)。

時代をタイムトラベルする気持ちでお付き合いください。
それでは、まず20世紀の戦略論のスライドから。

<戦略論の歴史:20世紀>

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<1960-1980 年代>
1962年 組織は戦略に従う(アルフレッド・チャンドラー)
1979年 戦略経営論(イゴール・アンゾフ)
1980年 競争の戦略
1985年 競争優位の戦略(マイケル・ポーター)

戦略は外部環境にフォーカス

1950年代頃のアメリカは黄金期でした。「世界の工場」として大量生産大量消費を謳歌。世界中から優秀な人材や資本が集める、まさに夢の国。

この時代は日本もアメリカも安く作れば売れるという状況で、経営の課題は、経営資源をいかに効率的に回すかといった企業内部の問題、すなわち経営管理(Management Control)が中心でした。

しかし、次第に需要が飽和してきます。みんながテレビも洗濯機も冷蔵庫も持っているのが当たり前になってきたんですね。

そこに重ねて1970年代に入ると2度のオイルショックもあり、世界的な低成長時代がやってきます。

当然、経営戦略にも変化が出てきます。

この時代の経営戦略で注目されたのがマイケル・ポーターです。書籍を通じて5フォース分析や3つの基本戦略といった考え方をご存知の方も多いはずです。

かんたんに言うと、外部環境である業界の競争要因を分析し、ターゲットと優位性を考慮して低コスト・差別化・集中化の3つから戦略を選択して競争優位を確立する方法です。

1980年代の戦略の中心は、「市場での競争に優位なポジションを取れ!」というポジショニング系の考え方が隆盛を極めます。

こうして、作れば売れるプロダクトアウトの発想から、顧客のニーズや市場の構造から事業戦略を組み立てていくというマーケットインの考え方への転換が求められるようになりました。マーケティングの歴史においては、マーケティング2.0の時代へシフトしたと呼ばれた時期と重なります。

作れば売れた1950年代が懐かしいですね。(私が生まれてもいない頃のお話ですが)

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<1990 年代>
1990年 コア・コンピタンス経営(ゲイリー・ハメルとプラハラード)
1991年 企業戦略論(ジェイ・バーニー)
1994年 ビジョナリー・カンパニー(ジム・コリンズ) 

戦略は外部環境から社内資源の重視にシフト

ポジショニングの視点が全盛期だった1980年代といえば、日本経済が絶頂期の時代。私が生まれる前後のことです。

ポジショニングが隆盛のアメリカ企業の戦略がどこも同じような戦略となってしまって勢いを失う中、日本企業の躍進は衝撃的でした。

ここで、またもや転換が訪れます。

次第に「企業は自社の経営資源の強みを生かし、他社の真似できないやり方で戦うべきだ!」というケイパビリティ系の考え方にシフトしていきます。

これは戦略の卓越性より組織の独自性を重要視することで競争優位につながる、という価値観が生まれたといえます。社外ではなく社内のリソースに向き合う時代が到来したともいえますね。

これによって人事の世界では、SHRM(ストラテジックヒューマンリソースマネジメント)の考え方が発展していきます。

もともと社員を労働力・コストとして捉えていた時代がありましたが、1980-1990年代には社員を人的資源として捉えるHRMの考え方へと発展しました。

はじめは労働力の効率化に主眼がおかれていましたが、戦略論の変化に伴い、人材が経営資源の中でも重要な位置づけとなり、SHRMとして人事領域への注目が高まりはじめることになります。

話を戦略の歴史に戻します。

時代は容赦なく進み、ジャパンアズナンバーワンの時代はあっという間に終わりました。20世紀の終わりにはネット産業の時代がやってきて、アメリカ企業が再び盛り返します。

いよいよ21世紀に突入です。

<戦略論の歴史:21世紀>

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<2000 年代>
2001年 ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則
2005年 ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する
2006年 ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略
2009年 フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略

戦略への関心の多様性

『ビジョナリーカンパニー』。みなさんも一度は聞いたことがあるかもしれません。ビジョナリーカンパニーシリーズは累計1000万部(2020年時点)、中でも『ビジョナリーカンパニー2飛躍の法則』は400万部(2019年時点)売れたビジネス書です。

凡庸な会社や良好な会社と「偉大」な会社の違いとはなにか?
そのような違いを生み出す普遍的な違いはなんなのか?
について分析して書いてあります。

ブルー・オーシャン戦略は、競争相手のいない新しい市場をいかに作るかという発想です。外部環境に目を向けているという点から言えば80年代的かもしれませんが、新しい市場へのコンセプトを実現するケイパビリティの創造を提案しているため、90年代の発想も融合した考え方になっています。

ITによって生まれた新たな考え方がロングテールです。Amazonを代表としたネットショッピングの世界では、実店舗と違いスペースに限りがなく世界中の人を対象に物を売ることができます。

結果、売れ筋のメイン商品の売上よりも、あまり売れないニッチな商品群の売上合計が上回る現象が起きたのです。

「売れ筋商品」と「それ以外の商品」を軸に並べたとき、その売上の少ないほうの商品郡が、表紙の図のように低く長く示され恐竜のしっぽに見えることから、ロングテール(長いしっぽ)と称されました。

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<2010 年代>
2010年 シェア〈共有〉からビジネスを生みだす新戦略
2010年 ストーリーとしての競争戦略
2012年 ビジネスモデルジェネレーション

戦略の視点はビジネスのモデル&ストーリーへ

ネット時代が生み出した変化はまだあります。

その一つがFREE。
クリス・アンダーソンの『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』が出たのは2009年。ですが、実際の社会的な影響から考えると2010年代がしっくり来るので、こちらでまとめて紹介します。

現在私たちはネットでいろんな情報やツールを基本無料で使っていますよね。EvernoteやDropboxは、一定のサービスをフリー〈無料〉で使えるようにし、さらに便利に使いたいユーザーを有料化することで利益を生み出しています。

SHAREという考え方も生活の中にかなり浸透してきました。

これもIT技術の進歩が生み出した成果です。AirBnBやメルカリは、所有している部屋や商品をシェア〈共有〉するプラットフォームをつくり、手数料をもらうビジネスモデルになっています。

こんな具合で、ITとビジネスが組み合わさることで新たなビジネスモデルが生まれやすくなりました。

日本企業は海外で先に生まれたビジネスやビジネスモデルを国内に持ってくるタイムマシン経営を続けています。

しかし、日本でも自分たちでビジネスを組み立てる必要性の認識が高まっているのではないでしょうか。ビジネスモデルキャンパスというフレームワークを軸にした書籍が日本でも広がりをみせましたよね。

また、2010年には日本発の戦略論として「戦略とはストーリーである」という新たな視点も生まれています。この考え方は日本の一橋大学の楠木教授によるもの。私も大好きな本です。2011年のビジネス書大賞にも選ばれていましたね。

戦略を物語としてワクワクするものに仕上げて伝えていく。そうでなければ説得力を持たない。戦略をつくる視点だけでなく、戦略をいかに使うかの視点に変化してきていると感じた本でした。

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以上が私の興味関心からピックアップした戦略と組織の歴史の旅でした。

2020年代以降にどんな戦略論が生まれるのか。とっても楽しみですね!

今後のマネプロはしばらく戦略編が続くので、今日紹介した戦略論の中身にも触れながらマネジメントを探求していきたいと思います。

<戦略と組織の関係性>

さて、
改めて冒頭の2つの考え方の話に戻ります。

・組織は戦略に従う
・戦略は組織に従う

これらの考え方は20世紀に生まれた考え方でした。戦略論のトレンドをみると、戦略そのものよりも組織に重きを置かれる傾向もありましたが、私は「組織は戦略に従う」を前提に考えるのが良いと思っています。それは理念や戦略といった目的・成果を達成するために組織があると考えるからです。

一方で、戦略をつくる時にも、戦略をつかう時にも「戦略は組織にしたがわざるを得ない」という壁にぶつかるのではないかと思います。

戦略の実現のためには、社外環境や社内資源に基づいた変化が必要であり、挑戦をしなければなりません。

そこに対して組織の力が及ばずに戦略の実行力に勢いがつかないと、戦略は現在の延長という名の重力に負けて組織に従わざるを得ず、結果として戦略の実現にまで至れないもの、なのではないでしょうか。

そこで、注目すべきテーマの1つが「組織開発」の領域(いよいよ人事っぽくなってくる!?)。

ということで、次回は私が所属している組織名でもある「組織開発」の領域に触れていくぞ!と前フリをさせていただきます(笑)

<戦略論の歴史をふまえて>

マネプロ8話で戦略を「勝利の方程式」である、つまり、ビジネスで成功するための勝ち方を示すことである、という考え方を書きました。

今回の戦略論のトレンドの変化、特に「ストーリーとしての競争戦略」に影響をうけて持論に言葉を加えるなら、戦略とは「ワクワクする勝利の方程式」である、とアップデートして伝えていきたいと思いました。

最後に『ストーリーとしての競争戦略』から抜粋してこちらの2つの言葉を紹介したいと思います。

優れた戦略とは思わず人に話したくなるような面白いストーリーだ。
その戦略にかかわる社内外の人々を面白がらせ、興奮させ、彼らを突き動かす力をもっていること。これは戦略が成功するための絶対条件です。

今回の戦略の歴史を通じて、みなさんの戦略に対する考え方をアップデートする機会になっていたら幸いです。

<今回のQuestions>

以上が9回目のマネプロでお届けしたかったコンテンツでした!
いかがでしたでしょうか?

ということでマネプロ恒例、最後の問いです。

今回のテーマを通じて、リーダーやマネージャーの方々に問いかけたい4つの質問を選びました。忙しい皆さんの思考の整理と、新たな行動の後押しになれますように!

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※「自分はこう考える」「自分ならこれを問いかける」という考えはぜひTwitterにて「#マネプロ」を付けてつぶやいていただけたら嬉しいです!

<次回に向けて>

今回はいかに戦略と向き合うか?を考えるために、戦略と組織の歴史について書いた回となりました。

次回の記念すべき10回目は戦略と組織開発のテーマで探求したいと思います。

戦略に向き合った上で
いかに戦略を活かすのか?

このテーマを考えるのに組織開発の知識が活きてきます。次回は組織開発の理論の中でも、私が最も好きな考え方を紹介しながら持論をまとめたいと思います。

次回は2週間後の水曜日。
良かったらぜひnoteのフォローやシェアをお願いします。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

読者のみなさんと共にマネジメントの進化を探求できれば何よりです。Twitterのフォロリツ大歓迎です!DMでの感想も是非!(@tsubot0905)

noteで取り上げた内容について、みなさんの持論や新たな問いかけの視点をもらうことでマネジメントの探求がもっと楽しくなるはず。ですので、みなさんからのリアクションを心待ちにしております。よろしくお願いします!

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