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島食の寺子屋

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海・山・里に囲まれた離島で、和食の料理人を育てる「島食の寺子屋」。食材の出自を辿り、その日に島で採れる食材のみで料理を学んでいく。http://washoku-terakoya.…
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2019年10月の記事一覧

寺子屋の先輩・後輩

寺子屋の先輩・後輩

島食の寺子屋の一年間コースへ入学したいという女性が試験を受けにきた。

昨年の日本仕事百貨の記事が、島食の寺子屋を知ったきっかけ。
記事を読んだのが今年の3月31日で、今年の春の入学に間に合わず、
この一年間ずっと島食の寺子屋に入学したいと思い続けてくれていたらしい。

一年間コースに入学したいという方には、現地を見てもらいながら、
島の野菜と魚を使って一品か二品を校舎で作ってもらう。
試験では、

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初めての中華

初めての中華

島食の寺子屋は和食の学校ですが、
今日はゲストで中華の茂手木講師をお招きして、
一日だけの中華料理の講座をしました。

和食の学校として、毎日の授業はもちろん和食ですし、
これまでにゲスト講師で来られたのも和食の方だけ。
見るもの聞くもの食べるもの、全てが今までは和食。

これまでストイックすぎたせいか、初めての中華が刺激になりました。

茂手木さんは中華の道60年で、
人生のほとんどを中華ととも

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雑なる草の名前

雑なる草の名前

朝晩だけでなく、日中も肌寒くなってきて、
外の空気が一気になにかと入れ替わってしまったような気がする。

島全体の緑が落ち着きはじめ、家の周りの雑草も伸び切ったところ。
夏のあいだは、草刈りをした次の日には、もう元に戻る勢いで、
刈れども刈れどもきりがない。

ここの人たちは、庭の手入れをしっかりするし、
庭といっても、基本的に一軒家であるから、手入れする範囲は広い。
お隣はお婆ちゃんが一人暮らし

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屋台 神社 島

屋台 神社 島

後鳥羽天皇がまつられている隠岐神社が、
御創建80周年を迎えた中で大祭を開催している。

鳥居をくぐってすぐのところでは、ちびっこ相撲をやっていて、
応援する大人・子供の声で賑わっていた。

運動会では順位も関係なくほのぼのしているのに、
この相撲大会で負けると子供たちはなぜか号泣する。
土俵という場所、神社という場所になると、
ぶつかり合うことに目覚めてしまうのだろうか。

相撲大会が終わり、夜

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枝豆家族

枝豆家族

今回は枝豆出荷をお手伝いした時の話。

出荷作業の現場は、昔はタバコの加工場だったらしく、
妙に角ばったタバコの乾燥機がずっしりと並んでいた。

少し早めに着いた現場で、おじいさんが一人でなにやら作業をしている。
近所の人かな?と思い、会釈する程度にして、その風景をなんとなく眺めながら待っていた。

暫くすると、荷台が枝豆の株で緑一色になっている軽トラが着き、
50代位の方がおりてきて、「今日よろ

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運動会の直会(休み編)

運動会の直会(休み編)

台風が過ぎた快晴の朝。
風が強かったせいか、家から出た途端に金木犀の香りが漂ってきて、
まだ金木犀があったことを思い出した。
運動会に向かう、良い1日の始まりに感じた。

今回は島内に2つある小学校のうちの1つの運動会。
途中参加だったので、着いた時には競技が随分と進んでいて、
ちょうど綱引きが始まっていた。

島では小学生も大人も交ざって競技をする。
少子高齢化だからこうなるとか、小難しい話はさ

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重ね色

重ね色

ここ最近、色んな時間に島内を移動する。
朝の5時半に出かけることもあれば、
夕暮れ時や、飲み会のあと夜遅くに車で帰ることもある。

住んでいる崎地区とフェリーの着く港を結ぶ道は一本だけ。
かれこれ4年半も住んでいるから、1,000回は同じ道を往復しているはず。
そして、毎日のように同じ風景を目にしている。

「この時期になると、空がこんな色になるんだな」が、
「空がこんな色だから、そろそろこんな時

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木こりの本業

木こりの本業

山で生業をしている人を、なんと呼ぶのだろう。
海であれば漁師、里であれば農家。山が思い付かない。

今日会った山の人は、自らのことを「木こり」という。
普段は山の中で木を伐採する仕事をされていて、
山から里に下りてくる時にたまに遭遇してしまう。

まるで熊のようだが、熊のようにワイルドで、かつマイルドな人。
「今日もデンジャラスな仕事でクタクタだよ、恒光くん」と、
よく笑いながら話してくれる。

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柿の葉も濡れる

柿の葉も濡れる

今年は雨が多めの秋かもしれない。
稲刈りの日程も雨の様子を見ながら、二日待っては一日動き、
また三日待ってから二日動いたりしていた。

気まぐれな天候に自分の予定を合わせていると、
こっちも気まぐれな気持ちになってきて、
普段歩かない山の小道を歩いてみた。

朝は晴れていたけど、午後からは天気予報通りの雨。
雨音が響くほどの雨ではない。
少しくらい濡れたっていいやと道を進み続ける。

雨で薄暗かっ

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ほろほろを受け継ぐ

ほろほろを受け継ぐ

近所のパン屋さんというのは愛着がわく。
メロンパン、あんパン、カレーパン。
場所が変われど、近所のパン屋さんは近所のパン屋さんだ。

島にはときわベーカリーというパン屋さんがあって、ここのパンを食べて育ったと言う島民の方も多い。島というスケールだと、たった一つのパン屋さんが届けるものには、絶対的な存在感がある。

ときわベーカリーはパンだけではなく、常盤堂製菓舗として「白浪」という和菓子も作ってい

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稲わらは大事なへそくり

稲わらは大事なへそくり

稲刈りが終わり、秋の仕事はもう一段落かなと、
少し寂しい気持ちでいたところに、また新たな仕事が入る。
今度は畜産農家の方を手伝うことに。

島では人間の暮らしの中に牛がいたようで、家屋の平面図をみると「牛小屋」という記載があるほどに、寝食を共にしていたのだ。

今では島全体が放牧地のようになっていて、
牛たちが森から顔を出して草を食む姿が見られる。
こんなに自由な管理でいいのかと考えてしまうが、

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稲刈りの「単位」

稲刈りの「単位」

秋の恒例行事、稲刈り。

人生80年もあれば、生きているうちに一度は経験するかもしれない。
もしかすると、過去に経験したのを忘れてしまっていることもあるかも。
それ位に田んぼというのは、日本人にとって身近な存在だと思います。

鎌でザクっザクって刈っていく、あれです。
想像しただけで、やってみた気分になれそう。

とはいえ、平地でそんな方法で稲刈りをしていたら、
冬になってしまいますので、コンバイ

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海から来た豆腐

海から来た豆腐

小さい頃、大阪のベッドタウンに住んでいた私にとって、豆腐といえば豆腐屋さんが移動販売しているのを買うものだった。夕方位に豆腐屋さんが車で近所にやってきて、ご近所の主婦がぞろぞろと家から出てきて豆腐を買う。

主婦はみな豆腐を買ったあとに、小一時間ほど立ち話をする。豆腐よりもご近所付き合いの為に、買い物に来ているようだ。

主婦の長いお喋りに巻き込まれたくない一心で、蒸気に包まれた車の荷台で水中に浮

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