枝豆家族
今回は枝豆出荷をお手伝いした時の話。
出荷作業の現場は、昔はタバコの加工場だったらしく、
妙に角ばったタバコの乾燥機がずっしりと並んでいた。
少し早めに着いた現場で、おじいさんが一人でなにやら作業をしている。
近所の人かな?と思い、会釈する程度にして、その風景をなんとなく眺めながら待っていた。
暫くすると、荷台が枝豆の株で緑一色になっている軽トラが着き、
50代位の方がおりてきて、「今日よろしく」と短い一言をかけられた。
作業が始まるのだと、気を引き締める。
よくよく二人を見ていると、顔も話し方もそっくり。
時間が経つにつれ、二人が親子であることを確信する。
つまりは、おじいさんは家長だったのだ。
慌てて帽子をとったものの、時すでに遅し、
それはただ帽子をとるという行為になってしまった。
後悔に反して、二人が面白いほどに似ていることに、
少し緊張がほぐれてしまう。
気を取り直し、軽トラから枝豆の株をおろし始める。
いつも見慣れているはずの枝豆の莢は、
葉っぱや枝の緑に隠れてしまい、目を凝らさないと見えない。
任された仕事は、枝豆の株を脱莢装置にかけ、枝葉と莢を分別すること。
装置は大きな音をガタガタ立てながら、勢いよく莢をはじき出していく。
後ろでは近所から手伝いにきた人が、出てきた豆の選定をしている。
余りにも装置の音が大きいので、耳元で叫んでようやく話せるほどで、
装置が動いている間は、よっぽどのことがない限り黙るしかない。
一段落ついて装置のスイッチを切るとみなが話しだす。
またスイッチをつけるとみな黙々と作業を再開する。
なんだか会話のスイッチを押している気分になった。
日が傾きだし、夕方5時のチャイムがなる頃に、作業が終わった。
もらった枝豆を袋に詰めながら、枝豆で作れる晩御飯は何かと考えた。
小さく刻んだ枝豆は、卵焼きにすると美味しいらしい。
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