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「家族介護者支援について、改めて考える」⑯『ヤングケアラー支援』についてのシンポジウムに参加して、考えたこと。

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 初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。

家族介護者の支援について、改めて考える

 この「家族介護者の支援について、改めて考える」では、家族介護者へ必要と思われる、主に、個別で心理的な支援について、いろいろと書いてきました。

 今回は、「ヤングケアラーへの支援」についてのオンラインのシンポジウムに参加して、それが、「家族介護者支援」自体を、改めて考える機会になりました。

 そのことを、お伝えしようと思いました。

ヤングケアラー支援

 オンラインで、「ヤングケアラー支援」についてシンポジウムを開催することを知り、参加しました。

 私も、家族介護者への個別の心理的支援である「介護者相談」を某自治体でおこなっていて、今年で10年目を迎えるのですが、恥ずかしながら、この2年で、「ヤングケアラー支援」に国をあげて、予算がさかれ、これだけ、前のめりに支援が行われようとしていることを、初めて知りました。

 それは、とても大事なことだと改めて思います。

 そして、今回、シンポジウムでも、さまざまな立場の支援者がパネリストとして語り、さらには、元・ヤングケアラー当事者としてコメンテーターとして参加してくれた人たちのコメントもあって、特に当事者としての言葉は、本当に貴重な提言で、さまざまなことが凄くよく見えていると思いました。

 全体の印象では、ヤングケアラー支援についての必要性は共有された上で、政策として取り組むことになったので、2年ほどで、その体制が急速に整えられつつあることに、驚きました。

 ヤングケアラー支援についても、具体的には、どのような支援方法が有効なのか。当事者にとって本当の意味で助けになるのか。そうしたことは、試行錯誤が続いているようにも思いました。

 一つ目は、「ヤングケアラー」を無理をして、見つけ出さないでほしい、ということです。

 国の調査によると、中学生であればクラスに2人はいる、といった統計結果が出ています。そして、家族を介護していることによって、さまざまな困難を抱えている人がいるのは間違いないのですが、誰が「ヤングケアラー」なのかを、無理に見つけ出すことは避けたほうがいいと思っています。

 当事者の方々が、自分はヤングケアラーかもしれない。そして、何かしらの支援を求めてもいいのでは、と自然に思え、自ら支援を求められるような環境を作っていただければ、と思います。「ヤングケアラー」というのは、下手をすれば、今後、マイナスのラベリングになる(例えば同級生の間で)可能性も考えられるので、慎重にしていただきたいと、勝手ながら思っています。 

 これ↑は約2年前に書いた記事ですが、こうした事は、2023年の今でも、課題として成り立つのでははないか、と感じました。

介護者支援

 もちろん、私が無知なのが問題ですが、「介護者支援」として、「介護者相談」を2014年から続けてきているにも関わらず、自治体の方からも、ヤングケアラー支援については、ほとんど聞く機会もなく、私も知らないままでした。

 ただ、「介護者相談」といった窓口が、この20年でもほとんど増えないのとは別に、ヤングケアラー支援の窓口は、この2年で、政策になったため、急速に増加しているようです。

 それ自体は、社会に必要な事で、それだけ注目をされてきたのも、正当な事だと思います。

 ただ、介護者全体の支援については、私も微力とはいえ、その必要性を訴えてきていましたし、さらに、もっと大きい団体や社会的に力のある方々も、そうしたことを続けてきたはずなのですが、介護者全体(ケアラー)については、ヤングケアラー支援の増加とは違って、特に変化がないことに、なんだか微妙な思いにもなりました。

 私だけではなく、介護者相談をしている臨床心理士・公認心理師の方はいらっしゃるわけですし、私よりも以前からおこなっている地域もあるのですから、そうした方々にも、ヤングケアラー支援に関しても、声をかけてくれれば、と思いました。

 ヤングケアラー支援も、介護者支援の一環でもあるのですから、そうした方々の介護者支援経験も、必要な情報では、と思うのは、私が、介護者支援をしているからに過ぎないのでしょうか。
(もし、他の方に声がかかっていたら、私が力が足りず、知らないだけで、すみません)

(こちらの窓口↑は、私自身が関わっているわけではないのですが、臨床心理士・公認心理師のかたが、相談を受けられています)。


 ただ、今回の「ヤングケアラー支援」に関しては、「介護」支援ではなく、あくまでも「子ども」支援の側からのアプローチのようで、それは政策も関わっていますし、私のように、介護者支援をしてきた人間の働きかけも不足していたとは思いますので、知らないままなのも仕方がないのかもしれません。

 ただ、新しく「ヤングケアラーコーディネーター」という役割が、全国の自治体で設置されてきて、その役割を担うのに必要な資格に、臨床心理士・公認心理師も入っていたので、恥ずかしながら、私がただ知らなかっただけの可能性もあります。


(現在のヤングケアラー支援については「ヤングケアラー支援体制強化事業実施要綱 」に詳細が記されています)

https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/yongcarer_support_20220331.pdf

イギリスの介護者支援

 これも2年前の番組ですが、この放送の内容で気になることがあったのを、やはり、自分の記事の中で書いています。

2014年に法律を制定しました。地方自治体に対して、ヤングケアラーを適切な支援につなげることを義務づけたのです。

 「クローズアップ現代」では、このように伝えられていました↑。
  ただ、それは事実ですが、全部ではありません。

 ただ、イギリスは、「介護者支援」については「先進国」であって、その法律制定の前、1990年代には「介護者支援法」が制定されています。

 元々の、「介護者支援」(ケアラー支援)があってこそ、「ヤングケアラー」への支援もよりスムーズに発展してきたと考えられるのではないでしょうか。そこに触れてくれれば、さらに議論も深まるのでは、と思いました。

 今も、その時の危惧がそのまま残されているように思います。

 最初に介護者全体の支援があって、その後にヤングケアラー支援があるので、おそらくは、よりスムーズな支援の流れが出来やすいはずの、「イギリス」の方法は、結局、検討されないまま、全体の「介護者支援」をほぼスキップして、「ヤングケアラー支援」が始まっているように思います。

 もちろん、ヤングケアラーという存在が認知され、しかも支援体制が整えられてきたことは、とても大事な一歩ですが、これから支援を考えるときには、やはり、これまでの介護者支援のことも参考にしたほうが、適切な支援をしやすいのではないか、といった気持ちはあります。

 私も、区役所の相談窓口で『介護者相談』をおこなっています。

 ヤングケアラーと言われるような若い世代の人にとっては、こうした窓口へ相談するハードルは高いと思います。シニアの介護者との違いはもちろんありますが、ヤングケアラーも、介護者ですから、出来たら相談に来てもらえる工夫や努力はしたいと思っています。




(他にも介護について、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしく思います)。





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