『「介護時間」の光景』(104)「日曜日」「モデル」。4.15.
いつも読んでくださる方は、ありがとうございます。
そのおかげで、こうして書き続けることができています。
初めて、読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
臨床心理士/公認心理師の越智誠(おちまこと)と申します。
(この『「介護時間」の光景』を、いつも読んでくださってる方は、「2007年4月15日」から読んでいただければ、これまで読んで下さったこととの、繰り返しを避けられるかと思います)。
自己紹介
元々、私は家族介護者でした。介護を始めてから、介護離職をせざるを得なくなり、介護に専念する年月の中で、家族介護者にこそ、特に心理的なサポートが必要だと思うようになりました。
ただ、そうした支援をしている専門家が、自分の無知のせいもあり、いるかどうか分からなかったので、自分で少しでも支援をしようと思うようになりました。
そして、分不相応かもしれませんが、介護をしながら、学校へも通い、臨床心理士の資格を取りました。2019年には公認心理師資格も取得しました。現在は、家族介護者のための、介護相談も続けることが出来ています。
「介護時間」の光景
この『「介護時間」の光景』シリーズは、介護をしていた時間に、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。
それは、とても個人的なことで、断片的なことに過ぎませんが、それでも家族介護者の気持ちの理解の一助になるのではないか、とも思っています。
今回も、昔の話で申し訳ないのですが、前半は「2007年4月15日」のことです。終盤に、今日、2022年4月15日のことを書いています。
2007年の頃
1999年から介護が始まり、2000年に、母は入院したのですが、私は、ただ病院に毎日のように通い、家に帰ってきてからは、妻と一緒に義母の介護を続けていました。
土の中で息を潜めるような生活が続き、だんだん慣れてきて、4年が経つ頃、2004年に母にガンが見つかり、手術し、いったんは症状はおさまっていたのですが、翌年に再発し、それ以上の治療は難しい状態でした。
そのため、なるべく外出をしたり、旅行をしたりしていました。
2007年の2月には、母の希望していた熱海に旅行に行けたのですが、その後は体調が整わず、さらに不安が大きくなっている頃でした。
ほぼ毎日、病院に通っていました。
2007年4月15日
「昨日、病院に弟が来てくれた。
安倍川もちと、うなぎパイが置かれている。
持ってきても、もう食べれないのに、と思う。
ベッドの上に、母は、ゴロンとしていて、反応も悪くて、ぼんやりしていて、ほんとにもうダメかと思うくらい、すごく、衰えている。
夕食は、天ぷらで、エビ一本だけ食べて、終わり。
2割くらい。15分で食事は終わる。
しんどそうに見える。
点滴をまだ、つけている。
あと2日、と聞いたような気がする。
明日、休むと母に伝える。
後ろめたい。
午後7時に病院を出る。
母は、おむつパンツになっていた。
おむぱん、と言っていたような気がしたけれど」。
日曜日
カジュアルな格好をした中年男性が電車にいる。
普段は、背広を着ているような感じがした。
座席に座っていて、足を広げているけれど、その広げる角度が、平日よりも、今日は広めではないか、と思わせる気配があった。
そのそばで、座った時にレシートを落とした初老の女性。
床へ手を伸ばして拾ったら、今度はケイタイを落とした。
また拾わなくてはいけなくなる。
動作のスピードがかなりゆっくりだった。
モデル
渋滞気味の交差点。
いつもの送迎バスに乗った。駅のそばの交差点で信号を待って、止まっている。
向こうから、バスが来て、グッと前にいったん来て、それからゆっくりと車体の横を見せつつ、右折して、さらに進んで去っていった。
舞台の上のモデルみたい。
テレビなどでしか見た事がない癖に、とっさにそんな事を思った。そして、左折のバスだったら、グッと前に来るような感じが出ないから、そんな事も思わなかったかもしれない、と思った。
(2007年4月15日)
母は、2007年の5月に病院で亡くなった。
その後も、義母の介護は続いたが、2018年の年末に、義母が突然亡くなり、急に介護が終わった。
自分自身の体調を整えるのに、思った以上の時間がかかり、そのうちにコロナ禍になった。
2022年4月15日
雨が降り続いている。
昨日も降っていたのに、今日もまだ雨で、それも1日中、降り続くらしい。
気温も下がってきて、また季節が戻っているような気がする。
健康診断
区の無料の健康診断があって、結果を聞いたのが、一週間ほど前だった。
その時に、全体的には健康だったのだけど、1つだけ気になることがあったので、さらに検査をお願いした。
結果は一週間後、と言われて、その間にも、忘れているようで、時々、不安がせり上がってくるような毎日だった。
その結果を聞きに隣町の病院に行ったのが一昨日で、診察室を開けて、医師に「問題ありませんでした」と言われた時には、やっぱりホッとはした。
「また異常があったら、病院に行ってください」とは言われたけれど、これで、また色々とできる時間が与えられた気もした。
連絡
出版社の方から、メールが届いた。
家族介護者の心理の理解と支援をテーマにした本を出したいと思い、企画書を送っているのだけど、今回もダメだった。
突然の郵送に対して、こうして反応があるだけでも有難いし、いろいろな情報も教えてもらったので感謝しているものの、やっぱりガッカリはする。
大学院を修了して、70ヶ所ほどの場所に履歴書などを送って、ことごとく断られた時と、気持ちは似ている。
それでも、また企画書の書き方などを見直し、別の出版社に送ることは続けるけれど、ある意味で、これが永遠に続くだけなのではないかといった気持ちにもなる。
何十回出したら、成果につながるのだろう。
止まった時間
午後3時を過ぎて、買い物に出かける。
ちょうど近所の高校の下校時刻と重なり、学生が大勢、駅の方へ歩いて行く。
近くのスーパーに寄り、メモを見て、カゴに入れて、会計をする。
帰りは、雨がとても小降りになっていて、カサをさすかどうか迷う。
家に帰ってくる。
洗濯が2日できないので、カゴに洗濯物がたまっている。
なんだか、自分の時間だけが止まっているような気持ちになる。
(他にも、いろいろと介護のことを書いています↓。よろしかったら、読んでもらえれば、うれしいです)。
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