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介護について、思ったこと⑩理想の介護環境を考える。

 いつも読んでくださる方は、ありがとうございます。
 そのおかげで、こうして書き続けることができています。

(この「介護について、思ったこと」を、いつも読んでくださっている方は、『介護の現状』から読んでいただければ、繰り返しが避けられるかと思います)。


 初めて、読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。

自己紹介

 私は、元・家族介護者でした。介護中に、介護者への心理的支援が足りないと思い、生意気かもしれませんが、自分でも専門家になろうと考え、勉強し、学校へ入り、2014年に臨床心理士になりました。2019年には公認心理師の資格も取りました。

 さらに、家族介護者の心理的支援のための「介護者相談」を始めて、ありがたいことに9年目になりました。
(よろしかったら、このマガジン↓を読んでもらえたら、これまでの詳細は分かるかと思います)。

介護について、思ったこと

 このnoteは、家族介護者に向けて、もしくは介護の専門家に対して、少しでも役に立つようにと考えて、始めました。

 もし、よろしければ、他の記事にも目を通していただければ、ありがたいのですが、基本的には、現在、話題になっていることよりも、もう少し一般的な内容を伝えたいと思って、書いてきました。

 ただ、介護のことを考えて、改めて思うことがありましたので、余計なことかもしれませんが、お伝えしようと思いました。
 よろしかったら、読んでいただければ、幸いです。

介護の現状

 介護を始めたのが約20年前で、介護期間中に、家族介護者への支援の仕事も始めることもできました。約3年前には、自分自身の介護は終わってしまったのですが、その年月の中で、基本的に「介護の現状」は変わっていないと、改めて思うようになりました。


 家族の誰かに介護が必要になると、介護保険を利用して、デイサービスやショートステイ、もしくは、訪問ヘルパーや、看護師といった専門家を利用し、家族だけの介護ではなく、社会的なシステムを活用することによって、介護負担を少しでも減らして、介護生活を続けることになります。

 ただ、介護保険が始まって20年以上がたちますが、基本的には、家族の誰かがかなりの介護負担を背負うことで、やっと成り立つことで、そして、そのような介護環境で介護を続けても、様々な変化によって、家族が介護を担うのが難しくなったら、病院や施設に預ける段階に移行します。

 そんな手順を踏むのが、基本的なことになり、在宅から施設などへ入所してもらうタイミングをどうするのか?それが、介護の支援をする際のポイントの一つのように思われていますし、その移行をうまく促すことも専門家の大事なスキルのように言われていると思います。


 これが、介護環境の現状で、それ自体に、それほどの疑問を抱かれていないようなのですが、改めて考えると、このままで本当にいいのか?といった根本的な疑念は時々湧いてきます。

在宅介護の負担や負担感

 家族に介護が必要になって、在宅で介護をする人たちは、できたら、最期まで家でみたい、と思う方々も、少なくないのでは、という印象があります。

 それは、決して他から強制することでもなく、最初から施設などに預ける選択肢も否定することではないのですが、それでも、その「最期までみたい」という願いを貫くのも難しいのが、現状です。

 それは、基本的に、介護負担や負担感が、最期までみるにはあまりにも重いから、という理由が大きいと思われます。

 「いつまで続くか分からない」時間の中で、蓄積し続ける負担感があり、介護を必要としている家族の方に対して、介護をしている方が「いなくなってほしい」と思っても、おかしくないほどの負担と負担感です。


2・5人

在宅で認知症の人がケアを受ける際、介護者に過重な負担がかかりすぎないようにするためには、最低でも2.5人の人手を要するものである。(松本一生)

 認知症を長く診てきた専門医が、そのような見立てをしているのですが、とてもリアルな感覚があるのは、私自身は、妻と二人で介護をしてきたことと、比べてしまうからだと思います。


 私が夜間担当として、午前5時過ぎまで介護をし、その後、午前7時には妻は起きるので、二人で、ほぼ24時間体制でみることができたため、おそらくは在宅介護を続けられたと考えられます。二人とも、介護にほぼ専念する状況でした。それは、恵まれた環境だったとは思います。

 それでも、10年以上その生活を続けると、疲労は蓄積もしますし、例えば、どちらかが風邪をひいたりしても休むことができず、義母にうつさないように気をつけてはいましたが、そういう時に、もう一人いれば、と考えることはありました。

 ただ、もう一人いたとしても、おそらくは普通に仕事も続けるのは難しいのでしょうから、もし、介護以前までの生活を変えずに、さらに介護を続けられるとしたら、介護者は「4人」は必要になるのかもしれません。

在宅介護を続けるための環境を考える

 昔のことですが、ヨーロッパに住んでいる友人がいて、高齢者の家族の介護が始まったという話を聞いたことがあります。その頃は、オーストリア在住で、海外で、どれだけ大変だろうと思って、そのことを尋ねたりもしたのですが、本人が弱音を吐かないといったことを差し引いても、どうやら日本とはかなり違った状況なのは、伝わってきました。


 在宅介護をしていたとしても、24時間、いつでも介護サービスを受けられる状況なので、大変だけど、思ったほどではない、といった感想を聞きました。もちろん、直接見たわけではないので、どういったサービスなのかは、はっきりとは分かりませんでしたが、当然ですが、日本の介護環境以外にも、介護のシステムが存在するのは知りました。


 そのことで、自分自身が在宅介護をしているときに、どういった介護サービスがあれば、もう少し負担が減るのだろうか、といったことは考えたりもしました。

現金給付

 まず、日本でも、介護保険導入の時に、現金給付を選択できる方法が検討されたこともあったようです。それは、ドイツでは実施されていることですので、可能性はあったと思います。

 もし、そのことが実現されていれば、十分な金額とは言えないでしょうが、自分が介護をしていることに「価値」はあるのでは、と思えたでしょうし、もしも、少しでも介護後のために「貯蓄」ができれば、絶望感は減ったのではないか、と想像できます。

 それに、現状でも、介護保険によるサービスが利用できない。もしくは、様々な状況で利用できずに、在宅介護を継続されている家族介護者は存在するわけですから、そういう方々にとっては、介護者への現金給付は、今よりも、もっと意味が大きいものになるのではないか、と思います。

24時間サービス

 在宅で介護をしていて、妻と二人で「ほぼ24時間体制」で介護をしていて、私は「夜間担当」として、要介護者の義母の都合に合わせていったら、だんだんと就寝時刻は遅くなり、最終的には午前5時半頃になりました。

 2人で介護にほぼ専念していたから可能だった方法だと思いますから、ある意味では恵まれていたと思います。

 それでも、午前4時過ぎくらいに、夏だと明るくなりつつある中で、義母の介護をしているときは、フワッと、しんどさに襲われて、この生活を続けたら、やっぱり自分自身が、過労で死んでしまうかもしれないと思うこともありました。

 私だけではなく、家族介護者にとって、夜に普通に眠れることができれば、負担や負担感は相当減るはずです。

 それも、何時間かごとに、プロの介護者が訪れる、ということだと、そのすき間の時間は、やはり、家族が気になって、あまり眠れないのではないか、と思ってしまいます。

 だから、できたら、もちろん、家に「他人」がいる不都合があるかもしれませんが、夜間(例:午後11時から午前7時まで)、安心できるプロの介護者が、要介護者に何かあったら、すぐに介護できる距離に居てくれれば、夜は、緊張を解いて眠れると思います。

 そうであれば、在宅介護の19年間も、ずいぶんと楽になったのではないか、と思います。

施設入所

 一人暮らしだったり、家族の介護が難しい場合には、施設入所などの選択肢が一般的ですし、これについては、これからもそれほどの変化がないかもしれません。

 ただ、歳をとって、いろいろな部分に衰えが来たからといって、そして、収入や貯金が少ないからといって、その人自身の責任でない場合がかなり多く、いくつかの不運に見舞われれば、どれだけ才能があったり、努力をしても、そのような困窮状態になることも少なくないと考えられます。

 ですので、そうした人たちを、(決して他人事ではないですが)、社会で、もう少し丁寧に扱うことも考えていいのでは、とも思います。

 そうであれば、現在のような施設だけではなく、たとえば、和室に住んでいる人であれば、その住居とほぼ同じようにするなど、それまでの住環境と、あまり変化がないようにできないでしょうか。

 もっと言えば、これまでの住居に住んでいるよりも、その人自身も満足できるような環境の施設を作ることも、これから考えてもいいような気がします。

 例えれば、施設に入所した人の方が、うらやましがれるような環境を作ることができれば、その本人も、もし介護をしている家族がいれば、そういう方の後悔や自責の念も、少なくて済むように思います。


 さらには、単純に比較はできないと思いますが、難病の子どもと家族のために「ドナルド・マクドナルド・ハウス」があるように、「通い介護」をする介護者にとっては、特に遠距離介護でもある場合、その施設のそばに、家族介護者専用の宿泊施設のようなものがあれば、その負担が少しでも減少する可能性もあります。

 場合によっては、その施設のそばで、介護をしている間は生活したほうが、介護者にとっての負担感は減ることも、考えられるのではないでしょうか。


理想の介護環境

 今回、ここまで述べてきたことは、今の日本の介護環境とは、かけ離れた話だと思います。予算面を考えたら、不可能にも思えるかもしれません。

 ただ、こうした介護環境に近い国もあるので、高齢社会では「先進国」でもある日本なので、今のままではなく、介護される側にも、介護する側にとっても、もっと快適な生活を考えて、介護環境を考え直してもいいのでは、と思うこともあります。


 もしかしたら、同じようなことを考えている方も、いらっしゃるかもしれないと思って、今回、このような話を書こうと思いました。今回の記事を読んで、否定的な思いになるかもしれませんが、よろしかったら、ご意見をいただければ、とてもありがたく思います。




(他にも、介護のことをいろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)。



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