見出し画像

「介護時間」の光景⑳ 「暑さ」 8.7.

 この『「介護時間」の光景』を読んでいただいている方には、何度も同じようなことを繰り返しお伝えすることになり、申し訳ないのですが、私は、臨床心理士/公認心理師の越智誠(おちまこと)と申します。

 今回は、前回に引き続き、2002年、今から18年前の8月7日のことです。ずいぶんと、昔になりますが、母が入院する病院へ通っていた頃です。「通い介護」といっていいような時間が続いていました。



暑さ

 行きのバスを降りると、もあああっと熱い空気の固まりが体にぶつかってきた。
 何かの嫌がらせのように、変なしつこさがある。
 その一方で、あついなー、と思うのは、こういう時くらいしかないと同時に思ったのは、他の時はほとんど冷房の効いている場所にいるせいだった。

                     (2002年8月7日)


 この日のことも、メモしていました。
 ここまで2年ほど病院に通う日々が続いていました。4日病院に行ってないだけで、それだけの間隔をあけたことがなかったせいで、やたらと不安で心配でした。
 今、振り返ると、それは家族介護者の独特の感覚だと思います。


 「4日あけて、病院に行く。急にのどが痛くなり、風邪をひいて、家で休んでいた。
 
 午後4時15分頃、母の病室に着くと、自分が送った、伝言のファックスが置いてあった。いつも、明日来るから、と行って、ここから帰るのだけど、急に来れなくなったので、なんだか心配になって、病院あてに送ったものだった。
 自分は風邪をひいて、急に病院に行けなくなったけど、心配しないでほしい。また治ったら行くので。
 そんな内容だった。

 このファックスは、看護婦長さんが置いていってくれたそうだった。
 この病院で頻繁に会うようになった患者の家族の方に、風邪治った?と聞かれる。
 気にかけてもらいありがたいが、ちょっと恥ずかしい。

 病室の花も、かえた。
 母と一緒に、買って行った水大福を食べた。

 何か、なつかしいような気分になる。
 ここは、ゆったりした空気が流れている。

 夕食は、45分かかった。
 看護婦長さんに、挨拶とお礼を伝えにいき、大丈夫ですか?と言われる。
 やはり、恥ずかしい。

 母は、ペットボトルを並べて、ボールをあてて倒す「ボーリング」を毎日やっている、と嬉しそうに話している。

 作業療法士の方がやってくれているレクリエーションが、けっこういつも楽しいらしく、それは、ありがたく思う。

 看護師さんの中の一人が、今、私が住んでいる町にいたことがある、という話を聞いて、ちょっと驚く。

 午後7時に面会時間が終了になり、病室を出る時に、バナナがあるうちはこなくていいから、と母に言われる。

 医師にカリウム不足にならないように、と勧められているのが、バナナだった。

 いろいろと気遣いがあって、この病院はありがたかった。

 それにしても、バスに乗って、最寄りの駅まで20分くらいで降りると、暑い空気のかたまりが、まだ体にぶつかってくる感じがする。

 もう夜になっているのに、気温があまり下がっていないようだった。」


それから、18年がたった、2020年8月7日。

 ラジオでは、今週が、今年で一番暑いので、という言葉が聞こえてくる。

 今年は、コロナ禍で、みんながマスクをしているので、よけいに、熱中症に気をつけましょう、ということも何度も繰り返し言われている

 熱中症警戒アラート。
 不要不急の外出を控えて。

 これまでの何ヶ月かで、感染拡大防止のために言われていたような言葉が、熱中症対策でも、また使われていて、そんなにあれもこれも警戒し続けるのは難しいのに、と思う。

 これから、命令と抑制と自粛の言葉ばかりが増えていくのだろうか、と不安になる。

 とてもいい天気だけど、暑さにおびえて、気持ちも縮こまっている。

 昼寝から起きた妻は、窓を閉めているのに、背中を暑さでたたかれた感じがして、ハッと思った。今日は筋トレをしようと考えていたのを、それで、だめだ、やめた、という。

 午後1時半くらい。洗濯物を干していた。

 一番気温も高そうな時間帯だった。今日は都内でも今年初めて、気温が35度を超えたといわれている道路を、6〜7人の女子高校生が、楽しそうな大きな声で話しながら、歩いていく。マスクをしていたり、あごまで下げたり、かたまりのように移動して、笑っていた。ここのところ、ほとんど聞いたことがないような明るい響きだった。

 子供や、若い人達の力のある声は、空気をかえる強さがある、と思った。



(他にもいろいろと介護のことを書いています↓。クリックして読んでいただければ、うれしいです)。

介護に関するリクエスト②「サービスを利用するようになってから、不安感が増えました。どうしてでしょうか?」。

「介護時間」の光景

家族介護者の気持ち

介護離職して、介護をしながら、臨床心理士になった理由

介護の大変さを、少しでも、やわらげる方法

「介護books」 ① 介護未経験でも、介護者の気持ちを分かりたい人へ、おすすめの2冊

「介護相談」のボランティアをしています。次回は、2020年 8月26日(水)です。

介護の言葉



#自己紹介   #介護    #家族介護者への心理的支援    #介護相談
#心理学      #家族介護者   #日記
#臨床心理士    #公認心理師   #臨床心理学   #コロナ禍
#緊急事態宣言    #緊急事態宣言解除    #通い介護
#介護時間の光景   #マスク
#新しい日常   #新しい生活   #感染拡大防止

#コロナ感染拡大   #東京都内感染者増加

#熱中症警戒アラート   #不要不急








この記事が参加している募集

#自己紹介

230,057件

 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。