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47歳、大学に入学する|第29話

【早期退職の理由は、神様が教えてくれた】
毎週日曜日の18:30に公開していた連載。40代独身女性が先を決めずに早期退職したら、不思議な体験をして、自分の使命に気づく話です。書くことになった経緯はこちら

大学の入学式前日に、ようやく仕事を見つけた私(第28話

翌日の朝。穏やかな気持ちで、ひとり入学式に向かう。会場は都内の大きなホテルだ。

高校を卒業したばかりの若者と、私と同世代の両親が大勢いる。写真を撮り合うなど、お祝いの空気に満ちている。

その間を縫って、私は式場の方へ進む。

「誰かを連れて来れば良かっただろうか」

そう思いながらも、この2週間で、両親への報告と仕事探しを何とか済ませたところだと思い直す。

合格発表から4ヶ月余り。今、安心してこの場にいるのが不思議なぐらいの状況だったのだ。

すると「こちらで記念撮影ができます!」と呼ぶ、元気な声が聞こえた。

目を向けると、応援団の方々である。大きな団旗。袴を履いた団長。チアリーダー。皆に囲まれて写真が撮れるようだ。

私は迷うことなく「お願いします!」と駆け出して行った。

そこには、47歳でも晴れやかな気持ちは若者と全く変わらない、新入生の私がいた。

***

式が終わり、大学へ向かう。午後から、新入生の親睦会に参加するのである。

大学生活にスムーズに溶け込めるようにと開催される、学部独自の行事。200名近くの新入生が一堂に集まる。司会は若手の先生だ。

自己紹介のカードを書き、お互いの共通点を探しながらコミュニケーションを図る。2組に分かれて、共同作業のゲームを行う。

現役の頃なら苦手な行事だが、社会人学生となった今は、気楽なものである。

年の差はあっても、同じ学生という立場で若者と過ごす。そのことがとても新鮮で、2年間、このような学生生活を送るのだと、高揚感に包まれた。

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その日の夜。私は、入学式の余韻に浸る間もなく、同じ学士入学者の方と連絡を取り合った。履修登録の情報交換をするためである。

翌週の月曜日から、いよいよ授業が始まる。そのため、2日後には抽選科目、3日後には全科目の履修登録が締め切りなのだ。

私は、次の日に履修登録の計画を作成した上で、大学へ向かった。足りない単位はないか、その他にも不備がないか、相談に行く。

私の場合、仕事があるため、受講できる時間が限られているが、どうしても神職課程は取りたい。

但し、そうすると必要な単位が4割近く増える。学士入学者で通学期間が2年の私は、全ての単位を取るのは相当難しい。面接でもそう言われていた。

2年で卒業して神職の資格も取るには、失敗は許されないのである。

***

私は学部の研究室が並ぶフロアに向かった。入口に相談室がある。履修登録の時期は、研究員の方が交代で質問に答えてくださるのだ。

予約を入れて、部屋の外で順番を待つ。すると、研究室の方から人影が近づいてきた。

視線を感じて目を向けると、懐かしい顔が立ち止まって私を見ている。

入学試験で面接官だった先生である。

だが「こんにちは」とだけ言うと、エレベーターの方へ行ってしまった。それでも、大学時代、この先生には一番面倒を見ていただくこととなる。

そして、翌週の授業。彼は私にとって印象的な言葉を残すのである。

つづく

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