47歳が挑む、大学受験と母校の就職試験 #2|第21話
母校の就職試験を受ける一方で、大学受験の当日を迎えた私(第20話)
午前中の小論文は、事前準備が功を奏して、手応えを感じながら終えることができた。午後はいよいよ面接である。
名前が呼ばれるまで、指定の教室で受験番号順に待つ。中に入ると、私よりも年配の方が多い。
隣の席には、定年退職後といった風情の男性が座っていた。熱心に祝詞本を読んでいる。
その様子を見て、自分が神道や神社のことを何も知らないで受験したと実感した。
山伏の方との出会いをきっかけに八海山尊神社に行くことは増えたが、他は行っていない。もともと神社にそれほど興味があった訳でもないのだ。
なのに、神道の大学を受験するとは、我ながらどうかしている。しかも、失業して就職活動中。直感としか言いようがない。
不安を感じながらも、事前に作成した面接の想定問答集を読み返しつつ、順番を待つ。
思ったよりも長い時間が過ぎた後、ついに私の名前が呼ばれた。
***
会場に入ると、面接官が二人いた。いずれも神道文化学部の教員の方である。
あらかじめ神道学の入門書を一通り読んではいたが、読み飛ばした箇所もあった。一方の先生はその分野が専門だ。
細かい質問をされたら、どうしよう。即座にそう思ったが、今さらどうすることもできない。
冷静を装って、案内された椅子に座る。いよいよ面接が始まった。
「はじめに、志望動機を教えてください」と言われた。
八海山尊神社の山伏の方に出会い、月に一度、護摩祈祷に参加するようになったこと。新潟での祭事にも参加し、神職の方との交流も増えたこと。
そのことをきっかけに、自分も神道のことをもっと深く知り、広める役割を担いたいと考えるようになったこと。
神道のことだけでなく、国内外の宗教文化も含めて全体的に学んだ上で、神道のことを正しく情報発信できる力を身につけたいと思っていること。
私は懸命に説明した。
だが、二人の面接官はどこか腑に落ちない様子で聞いている。
「この大学で学ぶのは主に神社神道のことだ」「あなたが感銘を受けているのは、神道というよりも修験道なのではないか」
そのような主旨のことを口々に言われた。確かにそう思われても仕方がない。
だが、私はなぜか急に熱い気持ちになり、こう伝えた。
「修験道を極めたいなら、修行した方が早い。そうではなく、もっと広い視野で全体を知りたいから、入学を希望しているんです」
その怒気を含んだ様子に面接官は驚いたのか、
「あなたが『思っていたのと違う』と幻滅しないか心配になって、念のため言いました」
と補足してくれた。それでも私は治まらず、
「それは当然わかった上で受験しています」
と追い打ちをかける。
受験前は「すぐには受からないだろう」「一度受けてみて様子を見る」と思っていたはずだった。
だが、この時、そんな自分は完全に消え去っていたのだ。
その後、幸い専門的なことを聞かれることなく、面接は終わった。だが「失敗した」という感触が強く残った。
時は11月中旬。落ち込む私に、次の日、思いがけない連絡があった。
つづく
写真(1枚目):本田織恵
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