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「アジアンジャパニーズ」を読んで旅人になりたかった話。

お世話になっております。
写真事務所プリズムライン代表の植田です。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。
我々はバタバタと準備していた確定申告を先日提出し、無事済んでほっとしております。
(今年はインボイスも始まるし、会社の経営ってほんと大変ですね。。)

確定申告が終わり時間もできたので、休みの日に本棚の整理をしていたら、上京する前に読んで面白かった本を見つけました。

それは

「アジアンジャパニーズ① 小林紀晴・著 新潮文庫」

という本でカメラマンとして新聞社に勤めていたが筆者が退社後、アジアの国々をめぐる旅に出てそこで出会った日本人の長期旅行者たちをポートレイト写真とルポルタージュで記録した本です。

以前、専従者のmoeが「写真事務所の本棚」という記事で「センチメンタルな旅・冬の旅」を紹介させていただきました。


その記事の派生で今回は私がこの「アジアンジャパニーズ①」を皆さんにご紹介させていただきます。
興味があれば読んでいただければと思います。
それでは。


小林紀晴「アジアンジャパニーズ①」


1995年初版発行で、こちらは2000年までに全3巻発表されているシリーズの第一作目。
1968年生まれの写真家・小林紀晴さんがカメラマンとして新聞会社に勤めていた23歳の頃、自分の仕事に疑問を抱き会社を辞めて、約100日のアジアの旅へ出ました。

その旅で出会ったのは様々な日本人の長期旅行者。
大学を休学して自分探しの旅に出た者。日本での生活が単調だったから旅に出たと話す者。日本でアジアの民藝店を出すために会社を辞めてを旅に出た夫婦。何度目の旅かも思い出せない若者。

筆者は旅をしながら偶然に身を任せ、旅を続ける日本人に出会う度、カメラに収めていきました。

ジャーナリスト目線で作られたものではなく、出会う人たちは仕事を辞めた筆者同様で何者でもなくなった人たち。同じ境遇だからこそ同じような目線で綴られた文章にはすごくリアリティのある印象を受けます。

そして旅行者を写したフレームの中で表現したかったのは「危うさ」でした。

「一人で外国にいるということ。そこにいることが日常ではないということ。そして先がみえていない、どこまでも途中であるということ。」
その儚さに似た危うさ、刹那的なものを筆者は撮りたかった。それは壊れてしまいそうな風に揺れる美しさでもありました。


景色や旅情よりも旅人の人生にフォーカスしてて、まだ携帯も普及していない時代なので旅で出会った様々な人のポートレイトからは社会から解放され何者でもなくなった刺すようなヒリヒリとした空気感が伝わってきます。。

旅が人生を豊かにする最高!といった雰囲気は人々にはなく、何か答え探し求めているような重たい印象を受けます。

この本はその旅の記録のみでは終わらず、3年後に旅で出会った人たちと再び日本で出会い、旅を終えたその後が写真と供に記録されています。


TAIPEI 2012 photo by sho ueda

これを読んだのが2012年くらいで、私は当時地元にあるフリーペーパーを作っている出版会社を1年で辞めて、その後いろんな仕事を転々としてました。
ただどれも続かず、出版会社で培った写真の知識を活かしたいと思い、地元の先輩カメラマンさんのお手伝いをしながら夜はコンビニの夜勤で働くといった生活を2年くらいしてました。
そんなコンビニの夜勤の休憩中にこの本を読んでいて、当時はそっと背中を押してもらえたような気がします。


当時はぼんやりと生きてて、私も何かやりたいことや未来に対して明確な答えを持っていたわけではないのですが、「場所や出会う人が変わることで人生が変わる。」と考え東京でカメラマンになる決意をし上京できたのも、この本を読んで少しだけ旅人を疑似体験できたからなのでは?と今は思います。

ちなみに上京する前に本に影響されて2012年に台湾へ行きました。
写真はその時のものです。


今はSNSで全世界どこでも繋がれて、著書のような単身バックパッカーたちは絶滅危惧種なのでしょうか。。
旅人にはなれなかった人生ですが、来世ではこんな旅をしてみたいなと憧れます。

それでは今回はこのあたりで。
次回も引き続きよろしくお願いいたします。

写真事務所プリズムライン

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