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童貞について―三島由紀夫の場合
今では彼が自尊心から拒んでいたものすべてが、逆に彼の自尊心を傷つけていた。南国の健康な王子たちの、浅黒い肌、鋭く突き刺すような官能の刃をひらめかすその瞳、それでいて、少年ながらいかにも愛撫に長けたようなその長い繊細な琥珀いろの指、それらのものが、こぞって清顕に、こう言っているように思われた。
『へえ? 君はその年で、一人も恋人がいないのかい?』
―『春の雪』(三島由紀夫)
(覚書・Gun
あまりに薄い日めくりの紙
祖父母の家と聞けば、薄紙の日めくりカレンダーを思い出す。
幼い頃、遊びに行くと必ず「昨日」の紙が残されていた。私がそれを剥がすのが好きだということを、祖父母は知っていたらしい。
大人になった今、この僅かな記憶を再現している内に、懐かしさではなく、漠然とした不安が押し寄せてきた。
***
祖父母の家は、ふたりで住むには広すぎる戸建てで、老人が上がるには急すぎる階段が続いている。私の親の部屋は、
友人の文章について―かえれない平日の成立
私には友人がほとんどいないのだが、数少ないそれと呼べるふたりと、このnoteを続けている。
私を含む三人とも、映画や音楽などが好きで、そしてまた、ほどほどに趣味が分かれている。
飲み交わす度に、評論家じみた態度でくだを巻く。好みは違えど、互いの物言いを信用しているはずだし、私にとってはささやかなサロンだとも思っていて、居心地の良さを感じる。
馴れ合いだとは言わないが、ただそれが勿体ないことは知っ
「かえれない平日」について
このnoteが複数人で運営していることが分かるようにと、某映画会社勤務の"GunCrazyLarry"と名乗る男の一声で、プロフィールが明確になった。そして同時に「カルチャー&ライフスタイルマガジン」のテイなのだということも、某出版社勤務の"スウィートメモリー"と名乗る男が、意識的か無意識的かは別として、文字に起こし、方向性を定めてくれた。自分の関与しない所で形作られていくのは、疎外感というよりむ
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