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インドネシアを知る➂ジャカルタ首都移転の背景と計画



はじめに

今日は、インドネシアの首都移転に関する候補地の選定やその背後にある経緯について、見ていきたいと思います。


1.インドネシアの首都移転の背景

(1)首都としてのジャカルタ自体の問題

インドネシアの首都ジャカルタは多くの都市問題に直面しています。交通渋滞、高い大気汚染、土地沈下、そして温暖化に伴う海面上昇など、これらの問題はジャカルタの持続可能性を大きく脅かしています。

(2)地理的な分散

インドネシアは世界で最も多い島々から成る国家であり、ジャカルタはジャワ島に位置しています。ジャワ島は国の人口の大部分が集中しており、経済活動も同様です。この集中を緩和し、国全体の発展を均等にするための方策として首都の移転が提案されました。

(3)地下水汲み取りによる土地沈下

ジャカルタは、海面下に位置する部分が多く、その沈下速度は、年間数センチにも上ると報告されています。その原因の一つとして、地下水の過度な取水が挙げられます。

(4)気候変動の予測

温暖化による影響も、実際にはインドネシアの首都移転の背景に大きく影響しています。具体的には、以下のような点が挙げられます。

①海面上昇

地球の温暖化により、極地の氷が融け、海面が上昇しています。ジャカルタは、既に多くの部分が海面下にあるため、この海面上昇は都市の浸水リスクを増大させています。インドネシア国内では、地下水の汲み上げによる土地沈下と相まって、この問題は、さらに深刻化していると考えられてきました。

②極端な気象

温暖化による気候変動は、極端な気象イベントの頻度と強度を増加させる可能性があります。

ジャカルタは、豪雨や洪水のリスクが高まるとともに、それによるインフラの損傷や生活の中断が、頻繁に発生する可能性があると考えれて来ました。

➂生態系の変動

温暖化による気候変動は、インドネシアの生態系にも影響を及ぼしているといいます。

これは、農業や水源供給など、人々の生計や生活の基盤となる多くの要素に影響を及ぼす可能性があります。

これらの温暖化による影響は、首都ジャカルタの持続可能性と安全性に関する懸念を増大させています。これは、首都移転の背景としての要因の一つとなっています。




2.新しい移転候補地

このような問題に対処するため、政府は首都の移転を検討し始めました。インドネシアの首都移転に関する候補地の選定を見ていきたいと思います。

(1)移転候補地の選定

①カリマンタン島の選定理由

カリマンタン島は、ジャワ島、スマトラ島、スラウェシ島などの他の大きな島々と比べて、地震や火山のリスクが低い。これは、インドネシアの多くの地域が環太平洋火山帯に位置するため、自然災害のリスクが一つの大きな選定基準となっていました。

世界協力銀行資料より編集

②東カリマンタン州の選定

カリマンタン島の中でも、特に東カリマンタン州が選ばれた理由の一つは、既存のインフラと経済的活動が比較的発展していることです。また、森林破壊の進行が懸念されるカリマンタンにおいて、持続可能な都市開発を進めることで、環境保護のモデルケースとする意図もあるとされています。

➂その他の候補地

東カリマンタン州が最終的に選定される前に、パプア州、中部カリマンタン州、南スラウェシ州など、他の場所も候補地として検討されました。

最終的に、政府はカリマンタン島の東カリマンタン州を新しい首都の地として選定しました。これは、自然災害のリスクの低さ、既存の経済的基盤、そして戦略的な位置を考慮しての決定でした。

(2)新しい首都の位置

2019年にジョコ・ウィドド大統領は、新しい首都をカリマンタン島の東カリマンタン州に建設する計画を発表しました。この地域は自然災害のリスクが低く、経済的にも戦略的にも意味があるとされています。

(3)移転の目的

新しい首都の建設は、インドネシアの経済成長をサポートし、国のバランスを取るためのものです。ジャカルタの人口過密を緩和し、経済活動を分散させることで、国全体の発展を促進することが期待されています。

(4)開発計画

2019年8月26日、ジョコウィは新しい首都を東カリマンタン州のクタイ・カルタネガラ県と北ブナジャムパスール県にまたがる地域とすることを発表しました。

国家開発計画省による移転費用の見積もりは、日本円で4兆4千億円に上ると報道されています。その19%を政府が負担し、残りは主に官民パートナーシップや国営企業の投資を計画しているそうです。

移転先のカリマンタン島東部は、複数のジャングルやオランウータンの生息地、豊富な鉱物資源で、知られています。

新首都建設と移転は、段階的に進められ、2045年の完成を予定しています。

新首都を「ヌサンタラ」と命名することを発表した新しい首都の都市計画には、緑豊かな公園や湖、持続可能なインフラストラクチャー、そしてエコフレンドリーな建築が、盛り込まれる予定です。これにより、新しい首都は、グリーンシティとしてのイメージを持つことが、期待されています。

また、首都の移転により、様々な課題が起きてきていて、これらを克服する対処策を、世界中から、注目されています。


明日以降も、インドネシアを知ることを書いていきたいと思います。

お読みいただき、みなさま本当にありがとうございます。

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