マガジンのカバー画像

ファンタジー

13
ずいぶん昔に書きかけたファンタジーに手を加えて完成させました。 3人の子供が不思議なタクシーに乗って時空を超えて旅をする物語です。 読んでいただけたら嬉しいです。
運営しているクリエイター

#夢

チカムリオ 誕生秘話

チカムリオ 誕生秘話

「チカムリオ」について、少しお話ししたいと思います。

「チカムリオ」は、僕が学生時代から、少しずつ書き溜めてきたファンタジーです。ストーリーは、ジュンとキヨシとユミという3人の小学生が、謎の紳士が運転するタクシーに乗って、時空を超え、めくるめく不思議の世界を旅するというものです。

その後、3人は成長してそれぞれの道を歩みますが、30年後のある日、よれよれの四十男になったジュンはふたたびそのタク

もっとみる
「チカムリオ」詩編

「チカムリオ」詩編

     
チカムリオ

ひとり
酔いどれてさ迷い歩き たどり着く真夜中の公園
ふと目覚めれば深い霧 人の姿もなく
(アア、ワタシニハナニモナイ)
音もなく
(アア、モハヤナニモナイ)
あるのはただあまりに深い後悔の念

とその時

霧の中より浮かびあがる漆黒のTaxi
驚き、よろめき、歩み寄り、
音もなくひらくDoor

「どちらまで?」

「いったい何処へ?」
私は途方に暮れて立ちすくむ
「で

もっとみる
チカムリオ(その⑩最終回)

チカムリオ(その⑩最終回)



「さてどうするかね。このままチカムリオまで行くかね」

「いえ、すみませんが、あの公園に戻って下さい。できるならもう一度、始めからやり直したいんです」

「ふむ。私もそれに賛成だ。人生はいつでも、何処からでもやり直しがきくものだ。あのときは言わなかったが、一人一人の人生は不確定要素が多くてね。実に変化に富んでいるのだ。まあ、このへんのことになると理論的には少し難しいんだが。不確定性原理という

もっとみる
チカムリオ(その⑧)

チカムリオ(その⑧)

過去回りの旅

私は車窓に顔を押し付けるようにして、外の景色が見え始めるのを待った。今はまだ深い霧のため何も見えないが、やがてそこに自分の過去の光景が映り始めることを知っていた。

私は紳士に尋ねた。これから残された時間がどのくらあるのかわからないが、この人物には、いろいろと聞いておきたいことがあるのだった。

「そういえば、僕たちのほかにも、これに乗った人々がいるんでしたね」

紳士は私の質問に

もっとみる
チカムリオ(その3)

チカムリオ(その3)

「さてそれでは、過去回りでいくかね、それとも未来回りにするかね」

(前回のつづき・・・)

この運転手はいったい何を言っているんだろう。
 僕はこの車に乗ったことを次第に後悔し始めていた。

『この人は誘拐犯人かもしれないぞ。きれいな目立つ切符をあちこちに落としておいて冒険好きな子供達をおびき寄せ、誘拐して外国に売り飛ばすつもりなのかも。もしかしたら、あの幽霊屋敷の住人なのだろうか?ああ、やっぱ

もっとみる
チカムリオ(その1)

チカムリオ(その1)


まだ夜明け前なので、辺りに人の気配は感じられない。

車の音も時折遠方からかすかに聞こえてくる程度だ。

公園の中は濃い霧に包まれ、街灯の光が淡く漂っている。

私はベンチに腰掛けたまま何度かくしゃみをした。こめかみのあたりが鈍く痛む。
 昨夜はずいぶん酒を飲んだ。つい今しがたまで、ここに腰掛けたまま、しばらく寝込んでしまったようだ。

どうやってここにたどり着いたのだろう?まるで記憶がない。

もっとみる