余裕の差
刀を抜いて決着をつけるのではなく、抜かずして相手の闘争心を削ぎ、円満に事を収めることを「鞘の内の勝負」という。
未熟な者に限って、少しばかりの力量を頼み、大見栄を切ったりするものだが、極力争いを避けようとする心と、相手を受け入れるだけの度量の大きさがあって、はじめて相手を制することができるのである。
「胸中にゆるりとしたる所」を備えた人というのは、常に他を受け入れるだけの度量の大きさを持っているために、無理のない雰囲気を醸し出し、相対する人から不必要な緊張感を巧まずして取り去るのかもしれない。
北風がさんざん吹きつけても脱がせることのできなかった旅人の外套も、太陽の暖かい陽光に旅人自らが脱ぎ捨てたという話と同様に、あまりにも「がたつき廻」られれば、かえって煩わしくなって意固地になるのが人情である。
人間関係の疎遠が憂慮される今日だけに、お互いに「ゆるりをした」気持ちを持ち合わせ、相手の気持ちを汲みとるように努めたいものである。
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