犬の遠吠え
世の中には「一言居士」と言われて敬遠されがちなタイプの人がいるものだ。これは「一言抉る」を人名になぞらえたもので、「抉る」は鉄棒などで扉を抉って開けるといったときに使う言葉で、透き間などに物を入れて捩るという意味で用いる。即ち、他人の意見に対して、何なりといちゃもんをつけて自分の意見を強引に主張して、その場をひっかき回しては悦に入るタイプである。
このような人はとかく批判精神が旺盛で、他人の揚げ足を取ることに喜びを覚えるあまり、意見にしてもその場での思いつきが多いために説得力も弱く、それだけに信頼性に欠ける。したがって名誉や富とは縁遠くなりがちなため、名誉や富を手にした者を目の敵のごとく罵倒し、ますます高慢で頑なになり、いよいよ疎んじられる羽目に陥るのである。
名誉や富に執着する者は、手段の善し悪しは別として、それなりの努力をするものだが、一言居士の場合は所詮犬の遠吠えとして世間から問題にされなくなるため、結局「名利深き者」に劣るつまらない役立たずの存在となってしまうのである。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?