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電波戦隊スイハンジャー

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神も仏も小人も天使も異星人も暴れるヒーロー戦隊もの
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2023年4月の記事一覧

電波戦隊スイハンジャー#155 龍神様と私2

電波戦隊スイハンジャー#155 龍神様と私2

第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律龍神様と私2

「ねえ、今度の日曜清水さん行かへん?勲兄ちゃんのガイド付きで」

と榎本葉子が級友の野上菜緒から誘いを受けたのは、龍神カヤ・ナルミに訪問された次の日の放課後だった。

教科書とノートを学生鞄に詰めながら「うーん、孝子さんからOKもらったら行くわ」と返事して、じゃあね、と教室の入口で別れた。

数日前、菜緒ちゃんは名門輝耀女子校の問題部活、映

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電波戦隊スイハンジャー#156 龍神様と私3

電波戦隊スイハンジャー#156 龍神様と私3


第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律龍神様と私3

「ええ、小一時間ほど葉子ちゃんと話してみたいと思いますんで」

と聡介が電話でミュラー夫人、上條孝子に許可を取ると早速キッチンの調理台にグラスを2つ用意し、

姉が作り置きしていたレモンシロップを炭酸水で割ったレモネードを作って氷を3個入れて、

縁側に腰掛けているというよりうずくまっているセーラー服姿の榎本葉子に「これ飲んでみて」

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電波戦隊スイハンジャー#157 龍神様と私4

電波戦隊スイハンジャー#157 龍神様と私4

第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律龍神様と私4

「女王天照さまは御自ら天壌無窮の運命を選ばれた!転生の時期も自ら選ばれよう。よって『卵』を探す必要なし!」

と白銀の長髪を振り乱し珍しく強い口調でコトシロヌシに反論するのは、高天原族元老長、アメノコヤネであった。

「何をう!?」と犬歯を剥き出しにして紅い瞳を輝かせるコトシロが、今にも殴りかからん勢いでコヤネに詰め寄る。

「今のこの国の

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電波戦隊スイハンジャー#158 龍神様と私5

電波戦隊スイハンジャー#158 龍神様と私5

第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律

龍神様と私5

藤崎家の一階の居間のテレビの上の壁には、お兄ちゃんが「水平線」と題名を付けて掛けた、青い横線を引いただけの白いカンバスがある。

「ただの一本線じゃないの!」

と「水平線」をお兄ちゃんが掛けた時に素直な感想を言ったのは夏休みの終わり直前。

その数時間後にお兄ちゃんは、「下宿先」である菊池のお寺に、お母さんの運転する車に乗って行ってし

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電波戦隊スイハンジャー#159 プライム•リリー1

電波戦隊スイハンジャー#159 プライム•リリー1

第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律プライム•リリー1

人間、誰にしも「運命の日」は突然やってくる。
 
榎本葉子が清水寺奥の院で消失した7時間前。
 
10月13日の朝9時、昨日新婚旅行から帰った赤垣沙智が湯布院みやげを紙袋に下げて実家の野上家を訪ねると、叔母も弟もこの時間キッチンで朝食を摂っている筈なのに両者とも不在なのに当惑した。
 
しょうがないな、と沙智はキッチンのテーブルに紙袋

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電波戦隊スイハンジャー#160 プライム•リリー2

電波戦隊スイハンジャー#160 プライム•リリー2

第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律プライム•リリー2

「次元転送を開始します」

と聞いた直後のことは、葉子は覚えていない。

奥の院の床だと思って立っていたところが実は水面であって、45キロジャストの自分の重みでざぶん、と垂直落下したというか…

青い光に満ちた水の中を、葉子は仰向けになってどんどん沈んでいく。

自分の遥か頭上にある丸い光が「さっきいたところ」なのだろう。葉子はそこに

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電波戦隊スイハンジャー#161 プライム•リリー3

電波戦隊スイハンジャー#161 プライム•リリー3

第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律プライム•リリー3

太陽系第二惑星、金星の須弥山の上空では銀河の渦のごとき「輪廻の輪」が、目を凝らせば動いていると分かるくらいゆっくりと回転しております。
 
私の名はアナンダ。わが師で従兄弟のブッダ様に生前25年お仕えしておりました。
 
そして死後も2500年以上お仕えしています…
 
え?よく続いているなって?
 
私のブッダ様への尊敬の念は、海よ

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電波戦隊スイハンジャー#162 翠玉1

電波戦隊スイハンジャー#162 翠玉1

第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律翠玉1

思惟がうっ…とのけ反って足元のスクリーンから一歩下がった。
 
「どうしたの?」ツクヨミが思惟の前に出るとスクリーンには異形の男の顔が大写しになっている。
 
(悪いがここから先は構わないでくれるかな?)
 
蕩けるようなバリトンボイスが、奥の院の結界内にいた全員の脳内に響いた。
 
端正な顔は白い産毛で覆われていて、昆虫のような複眼をした紅い瞳

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電波戦隊スイハンジャー#163 翠玉2

電波戦隊スイハンジャー#163 翠玉2

第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律翠玉2

「あなた方が暮らす星は、ここです」

とシッダールタが池の水面に映し出した惑星は…なんと深い青色の美しい星だったことか!

「地球(ちだま)、アース、テラとも呼ばれる星です。見た目は美しいが、あそこに住まう人間の有り様は、醜悪なのです。

私が生前弟子たちに伝えた仏法によって少しでも調律出来たらいいが、それでも限界があるでしょう」

醜悪?

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電波戦隊スイハンジャー#164 翠玉3

電波戦隊スイハンジャー#164 翠玉3

第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律翠玉3

「よーこねたん、痛いにゃ!」

とひこが声を上げたので葉子ははっと気を取り戻して「ごめんな」と傍らの幼児を慌てて抱きしめた。

ひこの黒髪からはお日さまの匂いがする。その匂いを胸一杯吸い込んで葉子は心を鎮めた。

この子が傍にいてくれへんかったら、今言われたことにうちは打ちのめされていただろう…

「さて葉子よ」と千手観音は葉子たちの手を取ってツ

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電波戦隊スイハンジャー#165 優しい旋律

電波戦隊スイハンジャー#165 優しい旋律

第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律優しい旋律

夜の東寺五重塔のてっぺんの屋根には、目に見えない3人が座っている。

座っているのは中学生くらいの少女二人と坊さん。榎本葉子と、カヤ・ナルミと、法光大師真雅。

「少しは気持ちが落ち着きましたか?」

と真雅が優しく葉子に声を掛けると、葉子はバイオリンと弓を持ったまま屋根の上にすっくと立ち「うん」とうなずいた。

でもな、とうつむく葉子は

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電波戦隊スイハンジャー#166 渦女、岩戸を開ける

電波戦隊スイハンジャー#166 渦女、岩戸を開ける

第九章 魔性
渦女、岩戸を開ける

山梨県甲州市勝沼町の㈱勝沼酒造本社敷地内にある小さな神社、
蔓草弁財天は大正10年、創業者の勝沼徳之助によって造営された。

da.dadada.dadadada.da.dadada.dadadada…

吉祥天女の衣装を身に纏った銀髪銀目の女がスネアドラムの細かい旋律に合わせてゆっくりと右腕を振り上げると、羽衣の端が空中に舞い上がる。

天女が裸足で跳躍し、右

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電波戦隊スイハンジャー#167 パンドラ1

電波戦隊スイハンジャー#167 パンドラ1

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウルパンドラ1

「あれは私が医学部2年の頃だった」

と、百目桃香31才整形外科医は、

でっかい三角渦巻きホイップクリームを盛った二枚重ねのパンケーキをフォークで崩しながら、

休日の朝早くからの純喫茶の隅のテーブルから見える本棚にとある時代劇小説を見つけたために学生時代の苦い思い出を「後輩」である双子の兄弟に語り出した。

「当時親しくしていた歯学部の彼が

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電波戦隊スイハンジャー#168 パンドラ2

電波戦隊スイハンジャー#168 パンドラ2

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウルパンドラ2

放送部アナウンス班所属の榎本葉子はひとつ深呼吸してからマイクのスイッチをONにし、

「ただいまより輝耀女学院創立110周年記念文化祭の開会致します。オープニングセレモニー前半は中等部高等部合合唱部によります『大地讃頌です」

あーあーあーあー…
ははなーるーだいちーのーふーとーこーろにー

と本来なら男女混声の曲がここは女子校なのでソプラノと

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