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電波戦隊スイハンジャー#168 パンドラ2

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル

パンドラ2

放送部アナウンス班所属の榎本葉子はひとつ深呼吸してからマイクのスイッチをONにし、

「ただいまより輝耀女学院創立110周年記念文化祭の開会致します。オープニングセレモニー前半は中等部高等部合合唱部によります『大地讃頌だいちさんしょうです」

あーあーあーあー…
ははなーるーだいちーのーふーとーこーろにー

と本来なら男女混声の曲がここは女子校なのでソプラノとアルトで構成された女生徒たちによる合唱、

正式名は「混声合唱とオーケストラのためのカンタータ『土の歌』の終曲」

である有名な合宿曲「大地讃頌」によってここ西日本有数の名門お嬢様女子校、輝耀女学院きようじょがくいんの文化祭が開幕した。

中等部一年で開幕アナウンスの大役を果たした榎本葉子はマイクをOFFにしてから「緊張したあ…」と大きく吐息をついた。

「グッドでしたわよ榎本さん」

と背後から葉子の肩を揉んで労うのは葉子の担任教師で放送部顧問の立花仁美先生、43才。

先生から差し出されたペットボトルの冷たい緑茶を葉子は蓋を開けるなりごくごくと一気飲みした。

あらら、余程緊張してたのね。

この間の音楽コンクール勝沼杯では「とても中学生とは思えぬ情感溢れる演奏」と審査員たちに絶賛されてたのに、

ソリストの卵もやっぱり学校では普通の女の子なのね。
とアナウンス席に突っ伏す葉子に「榎本さん、合唱終わったらすぐプログラム2の紹介だからね」と耳元で囁いた。

たたえよだいちをああ  ははなるだいちをああ…

と澄んだ歌声が講堂じゅうに響き渡り、ピアノの演奏が止むと呼吸を置いて葉子はマイクのスイッチをONにした。

「混合合唱部の皆さま、有難うございました。
続いては高等部映画研究会によりますショートムービー
『輝耀ヒストリーいけません五カ条』、
創立当時の女生徒が現代にタイムスリップするというユニークな内容の15分映像をお楽しみください」

直後に講堂は暗転すると葉子は足元のバイオリンケースを持って急いで舞台のスクリーンの横でバイオリンを取り出して顎に付け、弓を構えた。

あーもう、アナウンスやるわ、女学生役として出演してるわ、映画の効果音担当で演奏するわ、

今日は人生でいちばん忙しい日やわ!

と内心毒づきながらもオープニング曲、モーツァルトのバイオリンソナタ28番ホ短調を奏で始めた。

かたかたかた…と8ミリ映画のフィルムが巻かれる効果音と共に、セピア色の映像がぱっとスクリーンに大写しになる。

洋館の全景は、明治時代に建てられた旧校舎。教室の窓が強風で開いて、机の上のアルバムが乱暴にめくられる。

「いけなゐわ」
と慌ててアルバムを閉じて抱える西洋人の容貌の女学生、葛城ヨハンナの役は葉子の親友で中等部一年の野上菜緒。
矢絣の着物に行燈袴という創立当時の制服姿である。
「まあヨハンナ、どうなすったの?」と背の高い凛々しい顔立ちをした上級生役は高等部二年の妹背霞いもせかすみ。彼女の登場に講堂の女生徒たちは「お姉さまー!」と沸いた。

普段の彼女はボーイッシュな短髪で放課後に拳法部で汗を流す校内のアイドルなのである。その彼女が長髪をリボンで束ねたかつらを付けて「怖い、お姉さま!」と抱き付く菜緒の髪を撫でて、
「大丈夫だよ、僕が付いているからね」と抱きしめるに、女生徒たちは悶えた。

続いて「御連中」と呼ばれる取り巻き女学生たちが3人寄って来て「ああら、ヨハンナはお姉さまの『お目さん』(お気に入りの生徒)だったのね!」

と華族の令嬢役の葉子が二人の関係を咎め、そしてからかい、那須広江と監督兼上級生役の四宮蓬莱しのみやほうらいがはやし立てる。

「君達、いい加減におしよ。彼女はただ嵐に怯えているだけだよ」とお姉さまの厳しい目つきと叱咤ではあい、と不承不承女生徒たちは黙った。

…開け放たれた窓の向こうから雷光が輝き、女生徒たちは「怖い!」とお姉さまにちゃっかり抱き付いた。
「おゐおゐ、たかがカミナリぐらいでなんだい。僕たち輝耀女子は清く、美しく、淑やかに。の校訓のもと学び、世界に羽ばたく女性たちを目指すんじゃなかったのかい?」
とお姉さまが蓬莱の顎をくい、と持ち上げて蓬莱が恥じらう。

「そうでしたわね、わたくしたち輝耀女子は雷ぐらいでへこたれないわ!そうでせう?」

と葉子が強がりを言って窓を全開にし、
「かかってきなさい、雷!」と空に向かって指を指すと、雷光が教室目がけて飛び込み、画面全体が白い光に包まれた。

煙の中気が付いて起き上がる女生徒たち。
「んもう、法連寺桜子!(葉子の役名)あなたが調子に乗るから天神様の怒りに触れちゃったじゃない!このヲッペケペ娘っ!」

と創立者の娘、姉小路眞弓役の広江が葉子を指さしで責め、
「本当に雷が落ちるなんて思わないってば!」
と言い争いが始まる。「君たち」とお姉さまこと古川響子が前髪をかき上げて辺りを見回して、
「どうやら僕たちは、とんでもない所に来てしまったやうだね」と深刻な顔つきをいた。辺りは大丸デパート前の通り。「皆、洋装をしてゐるわ!ここは、京都?」

と孔雀のレリーフの下で困惑する女生徒たち。「あの小父さんはどうやら生粋の京都人らしい、尋ねてみよう」と道路の柵を飛び越えてバス乗り場で観光客をさばく初老の男に響子は尋ねた。

「あのう、今日は何月何日ですか?」
「へえ、平成25年11月3日ですが」
平成、という言葉に女生徒たちはどよめき、
「私たちは、未来に来てしまったの!?」

♪~間奏、パガニーニの24のカプリース、演奏・榎本葉子。

「…一通り京の街を巡ってみたが、風紀が乱れきっているようだね。けしからん」

と響子の怒りの顔のアップ。画面下には
注・彼女たちは明治生まれですとテロップが流れる。

「そうよそうよ!婦女子たちの肌は露出しまくっているし、あんなに殿方とくっついて…嗚呼見ていられませんわっ!」

「それに、許可なしで敷地内に踏み入ってる不届きもの多し、ですわ。何処の出歯亀!?」

「やれやれ…これは仏教でいう末法の世、というところだね」と響子は肩をすくめ、

「ここはひとつ、得意の技でとっちめなきゃ、だね」と不敵な笑みを浮かべた。

ここでBGM、マイケルジャクソンの「スリラー」のサビの部分が流れ、画面は公園のベンチの上で抱き付き合っているカップル(映研の部員、共に女子が演じている)に、
背後の茂みからアイスホッケーのお面を被った袴姿の女生徒がいきなり出てきて
「不純異性交遊は、いけません!」と持っていたスティックを振り下ろしてカップルを引き離した。

姉小路眞弓「いけません五カ条其の一、不純異性交遊は、いけません!」

つづいて知恩院境内、タンクトップにショートパンツと肌も露わな観光客の女性(演劇部部員)が「Oh,これはFacebookにアップしなきゃのコトよ!」
とスマートフォンでばしばし写真を撮りまくっていると、木の陰からリーダー格の古川響子がリボンを解いて長い髪をかき上げる。

「Hey,そこの観光客さん、お寺さんの許可なしで撮影かい?それに、君の装束は、布が少なすぎる。それじゃあ冷え性招くだろうが~!!!」と帯と着物を取り出し、「あ~れ~」と叫ぶ観光客の女性に半ば強引に着付ける「逆回転帯くる」を行った。

古川響子「いけません五カ条其の弐、身なりは美しく、体を冷やす格好は、いけません!」
観光客
「Oh,Japanese KIMONO…」と呟いて目を輝かせている。

続いて市バスの中、携帯音楽プレーヤーのイヤホンが外れ、ちゃかちゃか音が漏れているのに気にしない若者(大学生、椿勲の友情出演)。周りの乗客ははらわた煮えくり返りながらもじっと耐えている。

「ちょっと」とバイオリンの弓で若者の顎を持ち上げるのは法連寺桜子。

「公共の場で騒音かき鳴らすとはいい度胸してらっしゃるわね、あなたはこのバスの乗客21人を不快にさせた。許しません」
とすかさず弓で若者の両頬をひっぱたく。

あう!あう!と叫び声を上げる若者の表情はなぜか嬉しそうである。

「私が唯一作曲の天才と認めているシューベルトの調べでも、聞きたくない者にとってはそれは騒音なのよ!」

法連寺桜子「いけません五カ条、其の参、公共の場での騒音はいけません!」

市バスの運転手「次は、帷子ノ辻、帷子の辻ぃ~、お兄ちゃんここで降りたってや」

法連寺桜子「せいぜい野ざらしになるがいいわ」と、若者を乗降口から文字通り蹴って捨てた。

続いて図書館内、皆が静かに読書をしている中で「なんかやばくね?やばくね?」と喋りまくる学ラン姿の男子高校生(立花先生の息子、克之かつゆきさんとその友達、友情出演)舌打ちしたそうな顔で向かいの中年男性。
とそこに女生徒葛城ヨハンナが

「小父さん、祟りたい気持ちとてもよく解るわ。わたくしに任せて頂戴」

と席を立ち、男子たちに向かって「ここは静寂をルールとする智の楽園、お前たちはおサルさんなの?ヤバいしかお言葉を知らないの?聴いてて不快だわ」

何おう!と男子たちが立ち上がり「何ならお嬢様に俺たちのルールを仕込んでやろうか?」とヨハンナの制服の衿を掴む。

「掛かったわね」と嗤うヨハンナ。合気道の技で男子の肘関節を極めて「痛い痛い痛い!」とひざまずかせる。もう一人の学生がこのアマ!と叫んでヨハンナに飛びかかろうとするのを背後の青年が膝カックンを喰らわせてあっけなく捕らえられた。

「あんたたちはおサルさんなの?汚い言葉に暴力…これは〆なきゃだわね」と言った青年役は日舞家で俳優の紺野蓮太郎。(蓬莱の従兄)

葛城ヨハンナ「いけません五カ条、其の四、みだりな暴力は、いけません!」

背後では狼藉者たちをひざまずかせて両手を上げさせてその上に「サルトル!ニーチェ!キルケゴール!」と名を挙げた哲学者の分厚い著書を次々に乗せていく。
重い重い重い!と叫ぶ男子たち。

「実存主義の刑、喰らいやがれ」と微笑む青年のアップで図書館のシーンは終わり、最後のシーン、現在の輝耀女学院校舎の前に立つ四宮蓬莱。

「わたくし達がタイムスリップしたのはここから…ここでここでまた雷に撃たれれば、元の時代に戻れるかも」と祈るように胸の前で手を合わせる。

と、その肩にぽん、と手を置く古川響子「やれやれ、お祈りで雷を落とせると思ってかい?一人で何もかもしようとしちゃいけないよ」つづいて他3人の学友たちがそーよそーよ!と蓬莱の周りにわっ!と集まり、

「いけません五カ条、其の伍を忘れたの?」と蓬莱に迫った。蓬莱、皆の前にすっくと立ち、
「覚えているわ、いけません五カ条、其の伍、

和を以て貴しとなす。

故に独断で行動してはいけません…みんな、一緒に帰りましょう」

みんなああっ…と泣きだして女生徒たちは抱き合った。その願いと不埒者どもをとっちめた活躍が天に通じたのか、突如、空に稲光が走り、再び画面は真っ白になった。

画面はセピア色に戻り、旧校舎の教室で我に帰る生徒たち。
「元の教室ね…」「うん、我らが輝耀女学院の校舎だよ」と口々に呟き、「あれは夢だったのでしょうか?」と葛城ヨハンナが首をかしげる。

「まああなたたち、まだ帰ってなかったの?」と袴姿で教室に入って来たのは舎監の立花先生。

「先生、わたくしたち夢を見ていたみたいです」と声を揃えて生徒たちが言うと、

先生は「先人のお言葉に『人生は一夜の夢』というのがありますわ、それほど短い人生、大事にしなければね…さあ人力を呼びましょう」

と言って生徒たちを連れて教室を出て行く。はあい、と言って女生徒たちは風呂敷包みを小脇に抱えて教室から去った。

机の上に残されてたアルバムが風でめくれ、五人の女生徒たちが写る写真。全員灰色の生地に黒いスカーフと現在の制服姿になっていた。写真の画のままエンドロール。
 
音楽、G線上のアリア。榎本葉子の生演奏。

ショートムービーが終わり、講堂に再び明かりがついた時、講堂にいた生徒、教師、生徒の家族たちは一斉に拍手した。

「よっ、蓬莱、日本一!」と叫ぶのは蓬莱の祖父で歌舞伎役者の三代目・龍村藤四郎(人間国宝)であった。

「ほな、おじいちゃん南座に直行するから」と三代目は可愛い孫たちに差し入れを渡してから付き人たちに急かされて教室から去った。

「演目の前に孫の作った映画見に来るなんて、蓬莱先輩可愛がられてますね」と葉子が差し入れの仕出し弁当をパクつきながら言うと蓬莱もすかさず

「あんたもマエストロに『葉子、ええ演奏やったで!お前は生まれながらに板(舞台)の上に立つべき子や!』とべた褒められてたくせにベッタベタの甘々やなあ」
と差し入れの紅白饅頭にかぶりつきながら言い返した。

それにしても、と蓬莱は教室の椅子に座って他クラスの生徒が焼いた焼きそばをがっつく野上菜緒に向き直り「菜緒ちゃんにあんなキレッキレのお話作る才能あったなんてなあ」と心底感心して菜緒の灰色の髪をくしゃくしゃになるまで撫でまくった。

「校則いけません五カ条と、創立110周年記念と輝耀の伝統、を入れて15分の映画に入れるって、本書く側からしたら無茶ぶりや。

吐く程構成に苦労したで…生活指導の立花先生に『ここはこう直しなさい』と指導入ると思ってたら、
『オッケーです。キレッキレだけれどオッケーです』と本そのままに撮る許可くれて、こっちがビックリや!」

「菜緒ちゃんのご両親も見に来てたやろ、何て言ってた?」

「お父ちゃん手ぇ叩いて笑ってたわ。元々芸術家肌で反骨精神野郎なんで、『面白ければそれでええ』って」

と言って菜緒は焼きそばの最後の一口を咀嚼し、ペットボトルのお茶で飲み下した。

「そういや葉子ちゃんのおじいちゃんどこ行った?」

「次の公演のリハーサルがあるから帰るって。これから孝子さん連れて文化祭案内するからうち、これで去ぬるわ」

と葉子も食事を終えて慌ただしく立ち上がり、教室の外で待つミュラーの妻で義理の祖母にあたる孝子の傍に走り寄った。

「あーあ、うちら映研出し物終わったし、屋台巡りでもする?」と蓬莱が誘うと

「そやねー」と菜緒も同意した。

文化祭の時には決して使われることの無い部屋、体育館倉庫には二人の若者と一人の老人がマットの上に腰掛けていた。

若者二人は戦隊スイハンジャーのヒノヒカリイエローこと都城琢磨と、ピンクバタフライ紺野蓮太郎。そして老人は世界的指揮者のクラウス・フォン・ミュラーである。

「却ってこういう場所ほど重要な話をするのに最適なんです」
と琢磨がミュラーに小型ボイスレコーダーを手渡してから言うと、

「だからって女子校の体育館倉庫を選ぶって…琢磨くんはやっぱりアブノーマル(お変態)の要素あるわね」
とキレの良いツッコミを蓮太郎は入れた。

「わしも、蓮太郎君の意見に激しく同意や。まあ時間はかなり後やけど本当にリハーサルあるから必要な情報だけ伝えるで。あれは盆終わってすぐ、ヨーロッパ公演に行った時やった…」

とミュラーはBBCプロムスでベートーベン7番を振り終えた後に、控室を訪れた人物と握手をして…

「直感的にこいつが『マスター』や!思うたんや。わしの芸術家としての勘と耳がそう言ってるんだから間違いない、8月8日のあの夜葉子に憑りついてた奴の声と全く同じやったんや!」

「それは、誰ですか?」と問われてミュラーがその人物の名を言うと琢磨は「あまりにも大物過ぎる…!」と口を手で覆ってしばらく黙り込んだ。

「アタシはその名前聞いたことないんだけど、そんなに大物なの?」
「うん、この人物はアジア経済の黒幕だよ。用心深く、いつも表立って行動しないから蓮太郎さんが知らないのも当然だ…接触は難しい」

「なんなら蛇の道は蛇、であいつ行かせたらええねん」とミュラーがある戦隊メンバーの名前を出して提案すると、
「一番適任です!」と琢磨と蓮太郎は揃って大きく肯いた。

上海。異国情緒漂う建物がライトアップされた黄浦江を瀟洒なクルーズ船が航行している。船内の客室では次々にシャンパンのコルクが抜ける音がぽんぽん弾け、グラスタワーの頂点のグラスにはドンペリニョンが注がれる。

「蔡福明、ハッピーバースディ!!!」

と招待客と設立当時の仲間たちとパートナーの明倫に急かされてバースディケーキに刺さった28本の蝋燭の灯を吹き消したのはたった5年でITネット金融企業シンドバッドを立ち上げ、年商4兆を達成した経済界の風雲児、

蔡福明。

ジャズバンドの演奏と満漢全席の御馳走と高価な美酒と乱痴気騒ぎ。

僕が本当に欲しかったものは、こんなものなのか?僕が生まれた28年目の記念日が即物的な欲望の充足まみれになっちまった。

と欲まみれの現場から一人立ち去り、蝶ネクタイを緩めて福明は船から夜景を眺めた…

「やっぱり一人の方が落ち着く?」 

と旧知の友の一人が流暢な北京語で話しかけてきて、ワイングラスを薦めた。その青年の顔を見て福明は思わず顔をほころばせる。

「まったく、君程美しく北京語を話せる男はいない、中国人よりもね」
「それは誉め言葉?それともチャイナのスタンダップコメディ?」

「スタンダップコメディ、あれは差別をネタにして笑う『下種げす』なものだ。東洋のパーティーでそれをやらかしたら、次の招待は無い。と西洋のセレブリティたちは心得ておくべきだ」

「そうだね、中国でも、日本でもそれは同じだ」

と言って勝沼悟は自社ワイン「えびかずら汁」の白を友人に勧めて「うまい!」と感嘆の声を上げる福明の横顔を見て夜景を背後に感じの良い笑顔をひらめかせた。

「当社のワインをお気に入っていただけて、幸いです。僕が、世界を呑む男だよ」
「そういうウィットの利いたものを本当のジョークと言うんだ!」

と福明は手を叩いて笑った。

酒類、清涼飲料水国内トップメーカー「勝沼酒造」社長の次男、勝沼悟。

世界の経済界では「世界を呑もうとする男」と呼ばれ、
世を忍ぶ別の役目は、

戦隊スイハンジャーのササニシキブルーである。

(こちらブルー、『プラトンの嘆き』の金庫番の疑いがある『タオ』に接触中)
(りょーかいだべ!タイミング見計らって福明の唾液の付いたワイングラスとナプキンを回収してけれ)
と耳の奥に装着した通信機の向こうからちび小人、きなこが指示した…

後記
女学生たちの寸劇は別作品「桜の花咲く頃」の登場人物たちです。

船上のギャツビー、蔡福明にロックオン。






 
























































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