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電波戦隊スイハンジャー

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神も仏も小人も天使も異星人も暴れるヒーロー戦隊もの
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2023年2月の記事一覧

電波戦隊スイハンジャー#122

第七章・東京、笑って!きららホワイトグリマルティ3

「まったくもってカヤちゃんと私は同じ所に行きついた訳ね」

そう言ってツクヨミはジーンズのポケットから名刺ほどの大きさの絵入りのカードを取り出して店に居る全員に見せた。

「西洋の卦、タロットカードの『塔』ですね。この札は最凶の意味を持ちます。大叔父上お久しゅうございます」

カヤ・ナルミはスサノオの8代先の子孫、大国主命の長男の事代主の娘にあ

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電波戦隊スイハンジャー#123

第七章 東京、笑って!きららホワイト

グリマルティ終

もう2世紀ちかくも昔の話である。

ある医師のもとをひとりの患者が訪れた。患者の男は重度の鬱症状と医師は診断した。

「鬱の改善にはね、なにより笑うことが一番」

と医師がアドバイスした。

「そうだ、道化師のグリマルティを見るのをお勧めします。彼の演技は最高ですよ。私も大ファンなんですが…
何度か彼の芝居見に行けば症状は軽くなりますって」

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電波戦隊スイハンジャー#124

第七章 東京、笑って!きららホワイト

隠の末裔たち1

闇の中に潜んでいた一人が音を立てずに天井裏の板をずらす。

小さな扇形の光がさっと彼の頭巾を照らした。

標的は白い道着に黒袴を付けた灰色の髪の青年。4.21尺の赤樫の杖を両肩に掛けて左右に体を傾けストレッチをしている。

夕稽古を終えて門下生たちは帰って行った。師範役の銀髪の女性も入口から外に出て行こうとしている。

(標的は油断している

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電波戦隊スイハンジャー#125

第七章 東京、笑って!きららホワイト隠の末裔たち2

「どうだ似合うか?」

と銀髪を腰まで垂らした男がにかっと笑った。

男は狩衣姿。衣装の白地全体に朱色の八雲柄の刺繍を施している。

両袖をふわりと広げて自分の衣装をどう?どう?と見せびらかして、こちらの反応を待っている。

ここは青々とした竹林。自分は笹の葉のじゅうたんに腰を下ろしている。

夢なのだな。

と自覚しながらこうやってスサノオと

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電波戦隊スイハンジャー#126

第七章 東京、笑って!きららホワイト隠の末裔たち3

位置的には部屋の奥の、エアコンの真下で突っ立っている戦隊たちのすぐ前の机に小角は背を向けて座っている。

戦隊とはいっても今時を生きる平成の若者たちは

黒装束集団が突然現れたというイリュージョンを見せつけられて呆然としている。一名以外は。

「種も仕掛けもねえよ。みんながきららちゃんに注目している一瞬の隙に扉から入って来ただけだ」

野上聡介

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電波戦隊スイハンジャー#127

第七章 東京、笑って!きららホワイト隠の末裔たち4

足指の裏にぐっ、と圧をかけられただけでに鋭い痛みが足先から鼻の奥を通って脳天まで突き抜け、瞼の裏に雷光が走った。

「あっ…がっ!!」

あまりの痛みに勝沼悟はつい施術者を蹴たぐりそーになるが、太腿に乗られ下半身をがっちりホールドされてるのとツボを押されて次々来る激痛とで抵抗する余裕が無く、されるがままになっていた。

「おお、ここは脳のツボな

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電波戦隊スイハンジャー#128

第七章 東京、笑って!きららホワイト隠の末裔たち4

軒猿

忍者の一種で、戦国期には、上杉謙信を中心に『けんえん』とも呼ばれていた。

他の忍者を狩るのを得意としており、武田方の透破、北条方の風魔などを幾度も殺害したといわれる。

それは、市場価格より1~2割は安いブランドもののスニーカーを手にしている時だった。

「お客さん、左足にボルト入れてます?」

眼鏡をかけた若い店員がいきなり隆文の手

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電波戦隊スイハンジャー#129

第七章 東京、笑って!きららホワイト

隠の末裔たち6

戸隠

3400年前、長野県の山中に隕石が落ちた。

それは高天原族の最強の戦士タヂカラオがはるか2億年先の銀河からぶん投げた天岩戸であった。

後に地球に降下した異星人、高天原族はその地を「戸隠」と名付け、タヂカラオは現地の娘と結ばれ戸隠に定住した。

その宇宙最強の男の直系子孫が…

「うわ。ここの焼き鳥美味しいですねー」

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電波戦隊スイハンジャー#130

第七章 東京、笑って!きららホワイト花言葉は復讐1

身分と階級を言われても哲治は唇を引き結んだまま悟を見つめている。

不意に背後からぽん、と両肩を叩かれて哲治は振り向いた。そこには店の制服のポロシャツに胸当てカフェエプロン姿の小角がいた。

(サルタヒコ…!)
(お前に見せたいものがある)

忍びにしか理解できない言葉で二人は唇だけ動かした。

とは言ってもコードネーム『サルタヒコ』を名乗るこ

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電波戦隊スイハンジャー#131

第七章 東京、笑って!きららホワイト花言葉は復讐2

皆が帰った後のエンゼルクリニック診察室の机にのビビンバ用の石鍋がある。その中に摂氏41度の適温のお湯を張って

「草津良いとーこ~、一度ーはおいで~ちょいなちょいな~♪」

と呑気な鼻歌を歌って湯に浸かっているのは、小人の松五郎である。

ラベンダーの精油を一滴垂らしたアロマバスの中でうぃ~と頭だけ出して額の角を天井に向けている。

「うはは、

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電波戦隊スイハンジャー#133

第七章 東京、笑って!きららホワイト花言葉は復讐5

墨田区両国にある百目整形外科クリニックの屋上には古びた鳥箱がある。

日の入りを過ぎると院長の百目修か娘の桃香が屋上に登り、鳥箱の中身を確認するのが日課となっている。

そこに何もなければ本日の業務は終わり。結び文があれば「からす」からの依頼書である。

神楽坂で芸者小はるがドラッグ所持の外国人を見つけた事件から2日遡った日曜の夕方、桃香

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電波戦隊スイハンジャー#132

第七章 東京、笑って!きららホワイト花言葉は復讐4

神楽坂上にある毘沙門天善国寺、通称「神楽坂の毘沙門さん」の神殿の両脇には狛犬ならぬ狛虎がにらみを利かせている。

9月24日夜11時過ぎ。一組の男女が毘沙門天の前を通り過ぎた。

女は秋草文様の黒留袖の裾を左手でつまんで吾妻下駄をからんころん、と鳴らして歩く粋な神楽坂芸者。

男は割烹着姿の板前見習い風の若者である。

女の名は小はる。30才の

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電波戦隊スイハンジャー#134

第七章 東京、笑って!きららホワイト花言葉は復讐5

しこたま酒飲んで寝ているツクヨミはてんで役に立たないので、薬物解析は松五郎と大天使ラファエルが行うこととなった。

「まあ一時間足らずで結果出せましから…」と緑色の髪と目をした青年天使はちら、と聡介を見た。

「俺が手伝うことないから寝ろ。ってこと?」

ラファエルはこくんとうなずくと、聡介に背中を向けて作業を開始した。

こいつがこうなったら

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電波戦隊スイハンジャー#135

電波戦隊スイハンジャー#135

第七章 東京、笑って!きららホワイト劇薬1

「百目桃香が麻薬所持者から採取したサンプル、No3、No6、No12から、
従来出回っている合成麻薬とは明らかに異なる成分が検出されましたでし」

とラファエルが蜂の巣のような複雑な化学式をモニターに映し出したが、理系出身の聡介や悟以外には到底ちんぷんかんぷんである。

「いわゆる大麻や覚醒剤の化学式をいじって
いくらでも種類を変えられる脱法ドラッグや

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