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記事シリーズ『あのマンガ、世界史でいうとどのへん?』について

 「あのマンガ、世界史でいうとどのへんの時代の話なんだろう?」

 以前マンガ好きの集まりでマンガの話をしていたとき、そんな言葉がふと誰かから出てきました。私はマンガ好きであるとともに世界史好きでもあり、特に歴史もののマンガは好んで読んでいます。それもあって、人が挙げた歴史マンガについて「それは○○の地域のだいたい○○世紀の話です」「この作品の時代はこんな出来事があって、それが別のあの作品の舞台につながっています」みたいなお話を、乏しい知識を絞りだしてお話してみたのですが、これがとても楽しかったのです。また、その場にいた人もふ~んおもしろいね、みたいな受け取り方をしてくださいまして、「世界史とマンガ」というテーマって、掘り下げてみるとなかなか面白い取り組みなのでは?なんてことを考えるようになりました。

 その後、読んだことのある、あるいは今後読みたいと思っていた歴史もののマンガを並べてみたり、それぞれどんな時代の話だったかなあ、なんてことを考えたりしているうちに、これらのマンガを一作ずつ時代順に取りあげて、それぞれの魅力を「世界史上の時代背景」という観点から紹介する記事を書けないか、という思いに至りました。それが形になったのが、この不定期連載記事シリーズ、「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」です。

 本記事シリーズの趣旨は主に2つです。

 一つ目は、やはり歴史ものマンガの魅力を伝えることです。歴史ものマンガと一口に言っても、史実に忠実なものから、主要な部分がフィクションであるものまで様々ですが、少なくともその物語のベースは、この現実世界にかつて確かに存在していた世界なのです。その事実は否応なく、その物語の存在感、より分かりやすく言うならば「その物語が私たちに差し迫ってくる感覚」を強化します。またその存在感は、ベースとなった歴史を知れば知るほど、さらに強いものになると思います。そのため本書では、様々な歴史ものマンガを順にあげながら、そのマンガ内容と歴史の話を行ったり来たりして、その連関を明らかにしていきたいです。そうすることで、「歴史もの」というジャンルの楽しさが再発見されることを信じて。

 二つ目は、世界史そのものの魅力を伝えることです。世界史は基本的に高校で学ぶ科目ですが、全てを履修しないまま高校を卒業することも可能ですので、小学校や中学校でも学ぶ日本史よりも、馴染みのない方が多いのではないでしょうか。
 しかし、日本史には日本史の面白いところがある一方で、世界史にも世界史の面白いところがあります。それは一言で言うと「スケールの大きさ」です。ある国のある事件がこういう結果を招き、それが別の国のこういう事件につながっていく・・・といった出来事の連関が世界規模で起こるさまは、上手く俯瞰できると圧巻の一言です。ですので本記事シリーズでは、細かい人名だとか事件名だとかは極力排して、各マンガの紹介を順に読んでいくと、自然と歴史の大きな流れが頭に入ってくるように記述し、またそのようにマンガの紹介順を決めていこうと思っています。本記事シリーズで「あれ、世界史って結構面白かったのかも?」と思っていただける方がいるなら、それは本当にうれしいことです。

 ・・・と大上段に構えましたものの、走破できるのか、できるとすればいつごろになるのか、なんとも言えません。今のところ頭の中では30作品くらいは本記事シリーズのネタとして浮かんでいまして、2024年後半にはこいつらを全て記事にして吐き出せていたらとてもえらいな、くらいの感覚でやっていこうと思います。
 
 前置きが長くなりました。では、マンガと世界史を巡る旅へと出発しましょう。

順次記事追加中!!↓
マガジン:
あのマンガ、世界史でいうとどのへん?|いさお|note

目次:
第1章 先史
【先史】『創世のタイガ』~人類の「歴史以前」の物語~
第2章 古代
【古代①】『天は赤い河のほとり』~古代オリエント世界の興亡、そのハイライト~
【古代②】『ヒストリエ』~アレクサンドロスの大帝国と古代ギリシャ奴隷制の示すもの~
【古代③】『アド・アストラ -スキピオとハンニバル-』~偉大なるローマの苦い記憶~
【古代④】『キングダム』~中華二千年の歴史、その始まりにあった願い~
第3章 中世
【中世①】『レッドムーダン』~史上唯一の中国女帝の誕生と中世中国の転換点~
【中世②】『ヴィンランド・サガ』~退廃と戦乱の下に剣なき強さは成るか~
【中世③】『ブルターニュ花嫁異聞』~中世ヨーロッパにおけるイギリスとフランスのビミョウな関係~
【中世④】『アンナ・コムネナ』~ゲームのルールを書き換えるということ、歴史を振り返るということ~
【番外編①】『図書館の大魔術師』~先進地域としてのイスラームと架空の「歴史もの」~
【中世⑤】『シュトヘル』~モンゴル帝国の勃興と「文字」のもたらすもの~
【中世⑥】『レベレーション-啓示-』~中世英仏の破局と「人間」ジャンヌ=ダルクのすがた~
【中世⑦】『狼の口 ヴォルフスムント』~十字軍と西ヨーロッパ世界の分岐点~
【中世⑧】『チ。-地球の運動について-』~人間は「宗教から科学へと進歩している」のか?~
第4章 近代・前半
【近代・前①】『アルテ』~「近世」の始まりとしてのルネサンス~
【近代・前②】『ダンピアのおいしい冒険』~「現代」の始まりとしての大航海時代~
【近代・前③】『海帝』~中国による大航海時代というイフ~
【番外編②】『将国のアルタイル』~オスマン帝国の出現と近世ヨーロッパにおける「国際政治」の幕開け~
【近代・前④】『イサック』~近世前半ヨーロッパの山場、三十年戦争~
【近代・前⑤】『セシルの女王』~「覇権国家」英国、その始まりとしてのエリザベス1世のルーツ~
【近代・前⑥】『第3のギデオン』~「父殺し」としての市民革命~
第5章 近代・後半
【近代・後①】『片喰と黄金』~アメリカ合衆国の幼年期、その光と影~
【近代・後②】『エマ』~産業革命がもたらした新たな英国社会と、「身分差」の意味~
【近代・後③】『河畔の街のセリーヌ』~革命後のフランスの混迷と成熟~
【番外編③】『ハイパーインフレーション』~ナショナリズム、帝国主義、経済戦争~
【近代・後④】『守娘』~中国最後の帝国の繁栄と、そこにあった社会不安~
【近代・後⑤】『ふしぎの国のバード』~日本が「世界史」の舞台へ上がるとき~
第6章 現代
【現代①】『白い艦隊』~黒船の来航、そして「白船」の来航~ 
【番外編④】『軍靴のバルツァー』~反復する「戦争」の世界史~
【現代②】『満州アヘンスクワッド』~「眠れる獅子」中国の受難~ 
【現代③】『戦争は女の顔をしていない』~「世界史」が掬ってこなかったもの~
【現代④】『月と金のシャングリラ』~「中華」の復権とその影~
【現代⑤】『東独にいた』~冷戦末期、斜陽の国家と行き止まりの恋~
終章 エピローグ
【エピローグ】『Pumpkin Scissors』~歴史は終わらない、正義は見えない~


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